143-1 ライフスタイルと器

2013年4月6日 at 4:00 PM

写真の建物は、昨年末竣工した住宅です。設計は、森山善之さん率いる「バケラッタ」。ユニークな名前でしょう。森山さんが独立した 1997 年当時、設計事務所の名前は硬いところが多く、仕事を始めた頃からお客様が電話をかけてきやすい名前にしたかったそうです。設立当初は、年 5~ 6件だった受注も、今では年 12~ 13件と、お仕事は順調に伸びています。

「広告などは、エンドユーザー向けのものに限っています。コンセプトや図面をホームページに掲載しても、エンドユーザーにはわからないし、興味がないと思うんですね。だから実作につながらないコンペや、エンドユーザーがあまり読まない専門誌なども、結局事務所の労力ばかりが多くなるのでやる気がありません。逆にエンドユーザー向けのラジオやテレビ、ファッション誌や会報誌などには積極的に出るようにしています」と森山さん。エンドユーザーが自分のライフスタイルをイメージできるように、バケラッタの HP では、実際に家具や雑貨が入っている写真をふんだんにアップしています。「すべては施主のために」という事務所のスタンスを徹底させているそうです。

確かに建築の専門誌は一般の方にはなかなか難しく、業界関係者向けであることは間違いありません。が、専門誌の方でも、より一般の読者に読んでもらおうと編集努力をされていることでしょう。改めて、「建築」を知ってもらうのは難しいことと感じました。

施工会社である弊社が、竣工した建築を記録するには、なるべくお客様の入居後の生活にご迷惑をおかけしないようにお引渡しの前、お引越しの前に、家具など何も入っていない写真を撮影することがほとんどです。家具、雑貨に囲まれた生活が感じられる写真、通行人や町の雰囲気が伺える写真、お客様ご自身が写っている写真の方が効果的ですが、辛いところです。

一方で、完成した建物に生活感が出る説明写真を嫌う設計の先生もいらっしゃいます。お客様の中にも個人情報が晒されることに抵抗がある方が少なくありません。限られた日程や周囲の環境を鑑み、デジタル化が進む昨今ではなるべく建物の形や設計主旨がよくわかるようにと、建物の周囲の電線を消したり、近隣の不要なものを消し、画像の加工を行なうこともあります。

しかし、「お客様が選んでくださる」という点では、「良い建築」ははっきりしています。すなわち、耐震性に優れ、長寿命であり、質の良い素材を用い、適切な温熱環境が保たれ、お客様の好みの家具や設備を生かした内部空間が実現されていることです。
デザインは千差万別、なにより適正な金額で行なわれるミスのない施工が、普通の人にとって「良い建築」だと思い至ります。
「信頼」をいただくことが、すなわち「良い建築」につながることになります。