128-1 コンクリートは本物志向

2013年3月23日 at 4:00 PM

 

ミスターミュージック本社ビル

撮影:編集部

夕闇にぽっかり浮かんだ、ビルの最上階のラウンジ。このたび南青山に新しく建てられた CM 音楽制作会社のオフィス・ビルです。
「これまで離れていたスタジオと制作スタッフの統合が第一の目的でした」と語ってくださったのは、㈱ミスターミュージックの吉江一男社長。 1978 年、パンクロックやテクノサウンドが流行し始めた頃に会社を設立、「ピッカピッカの 1 年生」やデビューしたてのサザンオールスターズの全 CM を手がけ、サントリー「ウーロン茶」シリーズやタケダ「男と女のラブゲーム」、NEC「バザールでござーる」、ペプシコーラ「PEPSI MAN」などの代表作があります。現在も、誰もが知っている会社の数多くの商品の CM 音楽を制作しています。
最近はデジタル化が進み、音作りの環境も大きく変わってきているのではないでしょうか。
「とても便利になったところがいっぱいありますが、音楽を作っているのは人間。そこはどうやっても変わりません。楽器の音はある程度コンピュータで真似できますが、人間の声はその人固有のものです。スタジオでどのくらいの音を作るかが勝負。そのためにはきちんとしたスタジオが必要不可欠です」と吉江社長。いくらインターネットが発達しても、face to face で実際の音を聴きながら、クライアントとスタッフ相互で確認していく必要があります。時には深夜に及ぶ修正作業も、同一の建物内ならば移動もなく、また社長こだわりの癒しの空間が作業する人のリフレッシュに一役買っています。

「とりあえず、現在のところ、新しいスタジオは、何年も使っているのではないかと思えるほど、スムーズでストレスがありませんね」と使い心地には満足されているご様子。 コンクリート打ち放しのビルですが、建物内には緑をふんだんに配置されています。
「音楽制作とは関係のない事務作業は、やはり全てコンピュータで行っています。音楽制作も 50%くらいはパソコン作業。そうするとだんだん心身のバランスが取れなくなります。都会に住んでいると特に自然とのかかわりがどんどん希薄になるでしょう。なるべく緑を周りに置いておきたいですね。コンクリート打ち放しだって、実は素材そのもの、自然のものです。冷たいイメージを持っている人もいるようだけど、僕は違います。冷たく感じたことはない。逆に化学素材で簡単にできているようなものは不自然に感じます。2 度建てた自宅もコンクリート打ち放しですし、一貫して変わらないものが好きですね」と吉江社長。
それだけに、コンクリートは中に使うものも本物でないと負けてしまうと社長は言います。飾っている絵画もそれなりに主張のある強いものがフィットするそうです。住む人も、そこで仕事をする人も、本物でないと負ける。逆にモチベーションは上がるということです。
「広告は映像、音楽、言葉が織り成す一つの芸術表現です。特に音楽は一度作ってみないと最終的にどんなものができるかはわからない。音楽ほど人の感じ方が曖昧なものはないのです。経済活動が厳しいと、リスクがない CM ばかりが作られるようになってきます。日本では決定権を持っている層は圧倒的に高齢者が多いので、リバイバルソングが流行るのもそのためですね。しかし、昔のクライアントは、音楽が映像と一緒になって最後に上がってくるものを楽しみにして待っていてくれました。サントリーのように昔から変わらず、音楽事業に貢献している企業もあります。負のスパイラルに巻き込まれないようにがんばっていきたいですね」と吉江社長。

CM 音楽、改めてじっくり聴いてみませんか。