179-1 六本木

2015年2月16日 at 11:41 AM

R4 BUILDING  撮影:ナカサアンドパートナーズ

写真はこのたび六本木に建ち上がった、小さなオフィスビルです。設計は、来日されて11年目となるドイツ人のフロリアン・ブッシュさんです。地下1階、地上3階の屋上には、デッキをほどこしたルーフガーデンが用意され、昼休みや休憩時間を過ごす人々の憩の場となりそうです。
ブッシュさんに竣工した建物についてお話を聞いた際に「日本に来て改めて自分の国の文化に気づかされたこともありました。外国には行ってみるものですね」という話も伺いました。
確かに海外に出ると、改めて日本の良さに気が付くことがあります。もちろん、反対に私たちがいかに日本の「常識」と呼ばれるものに縛られているかもわかります。4、50年前までは、そんなに便利なものに囲まれていなかったのに、今では世界でも類を見ないほど、清潔で快適な暮らしをすることができる日本。海外に行くと、その国の不便さにちょっとがっかりしたり、文句を言ったりする人もいます。でも、便利さに乗っかって、毎日効率よく仕事をこなしていくと、心も身体も疲れ果て、そのうち、休息や癒しを必要としていることに気が付きます。

日本には、自然と一体になった、環境にもいい穏やかな暮らし方がありました。木の床や畳、土間や軒など、自然を活かした温熱環境の家で、四季折々のその土地ならではの食物を食す文化です。現代の都市生活者には、それは難しいかもしれませんが、その心地よさの記憶を継承していくことはできます。

先日、テレビで田舎の山の中にたった3室だけというリゾートが紹介されていました。1泊20万円のその宿は、宿泊者が互いに見えないような距離に、開放的な寝室とリビングがそれぞれ1棟ずつ用意され、富裕層の予約が後を絶たたないそうです。何も見えない、聞こえない、露天風呂に入って、星空を眺める。贅沢な景色が一番の魅力です。
経営者は、「これまでの観光はコピー文化」と言いました。どこの旅館に行っても、刺身が出てきて、カラオケ、卓球などの娯楽施設。そんな、よそと同じものをやっていては、ダメだということでした。先見の明があったのでしょう。単なる娯楽ではなく、誰が何を要求しているかを的確に見極めて、山づくりに取り掛かったのは、17、8年前から。自然を資源としたビジネスは、スパンも長いのですね。

スパンの長さで言えば、高層ビルの立ち並ぶこの六本木の再開発も負けていないかもしれません。もともと外国人の居住者が多く、クリエーターなど感性の鋭い人たちが遊んでいた街でしたが、2,30年前から街のあちらこちらが汚く、マンションやビルに不法侵入する人が後を絶たないため、物騒だというのが地元の方たちの悩みでした。所有者の権利が複雑なビルも少なくないでしょう。大きな敷地でとらえて、街を再編成し、新たな公共空間も用意して、また訪れる人を呼び込む計画が作られ、文化、アートの街として美術館も建ちました。

でもすべてが高層ビルになってしまうわけではありません。表通りから入った住宅街には、外国の大使館やしゃれたレストランがあり、ゆとりのある高級マンションも多いのです。それも街の味わいの一つです。小さくても一つ一つの建物が魅力あるものになれば、それもまた、街に暮らす人々の活力につながることでしょう。高層ビルの機能的なオフィスではなく、地面の近くで自然を感じながら、仕事に取り組むのも悪くありません。