183-1 地域医療

2015年6月10日 at 2:35 PM

「旭町診療所」 撮影:平賀哲

今月は、写真の千葉県に竣工した新しい診療所をご紹介します。

超高齢化社会に突入している日本。大学病院などの大病院と、地域の開業医との連携が不可欠と言われています。高度な検査や治療を希望する場合は大病院を利用しますが、体調不良という程度の人や、一定の治療を終えて経過観察の段階になった人は自宅近くの開業医で診察を受けましょうということです。また要介護認定を受けた高齢者の方は、すぐに施設に入ることが難しい状況や最期は自宅で過ごしたい、という本人の気持ちを優先して、自宅で近くの医師、看護士、介護士、作業療法士らのチーム医療による訪問看護を受けることもできます。

先日、ある大学病院で経験したのですが、そこでは15もある診察室で午前中だけでも一人の医師が平均15人ずつの外来患者の診察をこなさなくてはならず、ちょっと余分の説明を受けるとあっという間に時間が経ち、結局「3時間待ちの3分治療」という状況が生まれてしまいます。
医師の絶対数が不足しているともいわれていますが、一方で、一人当たりの診察回数がOECD各国と比べて多いというデータもあります。そのときも、ある高齢のご婦人が、診察日でもないのに来てしまったようで、フロアスタッフの女性に「今日は、○○先生の日ではないけど、来てしまったの。お顔だけ見られれば、ほっとするの」と何度も話をしています。どうやら朝からずっと待っていたようです。席を外した後、戻ってきた女性スタッフは「先生は、もう少ししたら病室から下りてきますから待っていてくださいね」と答えました。人道的な対応ですがこれではたまりません。高齢者は治療費も安く、早期発見・早期治療は、重症化しないためには大切なことで、国民皆保険制度の優れている点といえますが、顔を見るだけというのでは、診察を受ける側の在り方としては考えなくてはなりません。壁には、「地域の医院とのネットワークを充実させていきます。治療が一段落した患者さんは、地域の診療所で継続して受診していただくようにお願い申し上げます」との張り紙がありました。

医師の数は、実際には増えているのでしょうか、減っているのでしょうか。一昔前は、医師過剰と言われて、政府も「診療科による医師の不均衡、地域偏在による医師不足、給与レベルでの医師不足などいろんな条件が重なっているが不足はない」という認識でした。しかし実際には対人医師数は他国に比べて決して高くなく(人口1000人当たりの医師数は2.0人でOECD諸国の平均3.3人より少ない/OECD2006年調べ)、2008年からは医師養成数を増加する流れに転じています。

地域での病院経営は本当に大変だと聞きます。訪れる患者さんの来院理由をまず見極め、日ごろから患者さんとの付き合いの中で患者さんとの信頼関係を築き、医療スタッフとの共同作業で、的確な医療を施していく―そんな医師になるために、若い医学生の臨床経験を充実させる仕組みが求められています。
「旭町診療所」の建て主のご一家は、土地のオーナーであるお母様、長年医学教育の現場でお仕事をされてきた息子様、診療所長となられる奥様、建物の設計を担当された娘様の皆様で、この地域の医療の充実を目指しています。地域全体を視野に入れた、その構想に、改めて敬意を抱かずにはいられません。