185-1 見積もり

2015年8月15日 at 3:40 PM

 7月17日、皆様ご存知の通り、新国立競技場の建設計画が「白紙」に戻ることになりました。当初のコンペで1位となったザハ・ハディト氏の案は、建設費用が屋根を除いても2520億円に膨らんで、各方面からの反発や提言があったからです。改めて建設工事の難しさを物語りました。斬新なデザインの初めての施工方法に即座に見積もりを出すことは難しいことでしょう。デザインの特殊性、資材高騰などいろんな条件があり、当初の倍近くになってしまったわけですが、走り出す前で良かったのではないでしょうか。

写真は、このたび麻布に建ち上がった「コーポラティブ・ビルディング」です。いわゆる「コーポラティブハウス」ではないのは、店舗や事務所も入り、分譲や賃貸という異なったプログラムの住宅が入っているからです。いわば「積層型コーポラティブ」とでもいうのでしょうか。
コーディネートした「トライクコンサルティング」の企画に参加されたオーナー達が建設組合を作り、それぞれが基本プログラムの部屋を個別に設計依頼されて、賃貸住宅やSOHOとして利用したり、もちろん自分でお住まいになったり、とカスタメイドされているからです。

2本の並行する道路に接道する建物は、それぞれのファサードが少し違う顔を持っています。外壁はモノトーンのシックな色調でまとめられていますが、共通のイメージを持たせるために、1,2階に店舗のある北側は、外壁に赤い枠を一部設け、南側の居住スペースのエントランスは、彩度の低い赤色の壁を配した「レッドウォール」でおもてなしの心を表現しています。
変形の細長い、特に北側の塔状比1:7の建物を構造的に成立させることはかなり工夫が必要だったとのことです。
「梁幅と天井が通常より太い特殊なラーメン構造をつくり、各階で高さを変えています。さらに北側と南側の建物の真ん中のEVシャフトの部分が『バットレス(控え壁=Buttress)』な作りになっているのです。構造設計を担当してくれた『KAP』の仕事ですね」と振り返るのは総合設計監理のインターデザインアソシエイツの小林恵太郎氏。基礎では、支持層を超えてかなり深く掘って転倒防止杭を設置し、南側の1:5の塔状比で持たせる一方で、倒れ防止という重要な役割をこの「バットレス」に持たせています。
「我々の事務所では、建築設計だけでなく、構造的な提案、設備的な提案、そういった総合的な提案を行っているのです。もちろん実際の構造、設備の工事については、それぞれの設計者と組んでやっていくわけですが、我々の事務所としても、企画段階で最初に相当突っ込んで考えています。一般的な、意匠だけのチームとは違いますね。構造的な提案もしていきます。せっかくの土地、なるべく最大限に利用していただきたいし、同じものなら差別化し、特に都心ではそのような工夫が、今後もっと必要になってくると思います」と同じく代表の鴨ツトム氏は言います。
「コーポラティブということは、オーナーそれぞれのライフスタイルに合わせるのが主軸で、オーナーは賃貸で貸したり、売却したり、とまた違う軸があります。難しいのはその基本システムと自由度のルールづくりです。企画・コーディネートのチームとはかなりの時間をかけました」と鴨氏。内部の設計はかつての事務所仲間を中心としたメンバーとの共同作業。チームワークの良さがプロジェクトの完成に繋がりました。

 

 

 

「麻布メゾン(麻布コーポラティブ・ビルディング)」

①建物南側外観(1階エントランス、2階店舗、3-10階住宅)
②建物北側外観(1,2階店舗、3-8階住宅)
③B1F 長屋
総合設計:インターデザインアソシエイツ
撮影:アック東京