187-4 「木を残す」 ー「目黒M邸」現場工事から―

2015年10月12日 at 6:32 PM

今月ご紹介した「目黒M邸」では、敷地に立っていた松の木をそのまま残す形で工事を行うことになりました。自宅を建て替える際に、長年ともに過ごした樹木の保存を望まれる方は少なくありません。このようなとき、現場ではどのような対応を行うのか、M様、設計者様のご協力をいただきましたので、ご紹介させていただきます。

 

1.着工前の事前調査時  (写真①②参照)
着工前より、敷地内の松の木はお客様にとって「命の次に大切なものだ」と聞かされていました。建物の形状は、平面的には松の木を囲うようにコの字に計画されているので、着工前の敷地形状、現状地盤高さの確認の他に、松の木の形状、位置、枝の範囲の確認を行う必要があります。後日行う遣方出し時に建物と松の木との正確な位置の確認となりますが、事前調査時に簡易的に実測した結果は松の木と建物はほぼ干渉しない(外部足場には干渉するおそれあり)ことがわかりました。あとは地業工事業者と現地で打合せをし、実際の敷地の状況を確認しながら資材(鋼管杭、山留杭など)や打ち込み重機の搬入の計画を行います。こちらも松の木に資材、重機が干渉しないように注意して計画しなければなりません。

2.捨コン打設(写真③)
地下室の形状はL型、1階から上がコの字の形状です。2次根伐完了までは松の木をうまく避けるように、残土搬出ルート、重機の設置場所を考える必要がありました。捨コン打設も松の木を痛めないように細心の注意を払いました。
これだけ大きな松の木なので、根の張り具合の範囲もかなりの大きさが予想されます。お客様が依頼されている造園業者様と数回打合せをさせていただき、太い根は根伐の範囲にはないだろうとの確認が取れました。一部、直径30mm程度の根も出てきましたが、きれいに切断し、切断面には薬を塗れば大丈夫との話でした。
ちょうど夏の暑い時期でした。夕方協力業者が帰った後に、現場の進捗状況を確認しながらの松の木への水撒きは、毎日の日課となっておりました。静まり返った現場内で、ジャブジャブ水撒きするのも
思いの外、楽しい作業でした。

3.地下躯体生コン打設(写真④)
地下の鉄筋型枠作業も完了し、いよいよ生コン打設の日を迎えました。地下室のない部分も上階の基礎が必要なので、③の写真のように敷地内に作業車を設置することはもうできません。松の木側の前面道路を使用して打設したかったのですが、松の木と電線にポンプ車のブームが接触してしまうので、やむなく脇の狭い方の道路を通行止めにして生コン打設を行いました。

4.外構塀生コン打設(写真⑤)
躯体工事も無事完了し、最後に外構塀の生コン打設です。躯体工事中は外部足場に干渉する枝を、前述の造園業者様に松の木を痛めないギリギリのところまで曲げて頂き、なんとか無事に躯体作業を終えることが出来ました。塀も化粧打ち放しのコンクリートなのですが、松の木の枝の下にもコンクリートの塀を作るので、これもまた、松の枝を折らないように葉をコンクリートの飛沫で汚さないように、細心の注意を払って打設する必要がありました。
外構工事も完了し、お引き渡しした後、周囲を囲っている無機質のコンクリートと、真夏の猛暑の中、青々と茂る、有機物の塊のように見える松の木との対比を眺めながら、「枯れなくて本当に良かった」とほっとした次第です。

(現場報告:工事部 鈴木拓司)