225-3  ジョワレ恵比寿

用途: 竣工年月: 場所: 構造: 規模:

レンガ積みの味を活かしたテナントビル

 

恵比寿のテナントビルの建設計画である。事業主である吉田商事㈱の吉田社長とは、もともと隈研吾建築都市設計事務所にいた時代からのお付き合いがあり、隈さんとも親交が深い方である。

1987年、4人でスタートした隈さんの事務所は、退社する頃はスタッフも30人を超えていたが、当初は私もすべての物件に関わっていた。かなり勉強させてもらったが、自分では画一したスタイルを持たないようにとやってきたつもりである。そんな中「素材」には興味は持っており、独立後も人工素材であれ、自然素材であれ、適材適所で使うことを常に意識している。

今回のビルにレンガを用いているのは、吉田社長からの提案である。「隈さんもあまり使っていないし、面白いんじゃないか」とテーマを投げかけてくれた。実は、この物件の1年前に、吉田商事㈱の企画する吉祥寺の鉄骨造3階建てのテナントビルの計画があり、そちらで先に中空レンガを使ったビルが完成している。吉祥寺では、中空レンガを積み上げ、600mmピッチのステンレスバーで水平に補強していて、それを受けるために四隅で内側に支柱をたてている。そこでは外壁レンガはシングル積みのまま内側を現しとしているので、外側に撥水剤を塗る等の漏水対策を施してから1年様子を見る必要があった。結果は台風などの時でも漏水も無く良好だったので、本来は恵比寿でもこの手法でファサードを構成出来れば良かったのだが、吉祥寺の結果を見る前の着工となったことで漏水に対する安全性が高い「レンガタイル貼りカーニバル工法」を採用することにした。レンガの味を活かしながらも軽いイメージを出したいと考え、レンガの面積よりガラスの面積をやや多くして、レンガが宙に浮いているかのようなファサードを創り出している。

一方、一般の人が見て、手作業が感じられるレンガ積みを見せたいという吉田社長のこだわりもあって、バルコニーの手摺壁は積み上げる形で、しかも通常のように笠木という金属を乗せずに、目透かしで仕上げている。吉田社長も二つの併用工法に満足いただけたようである。

恵比寿は、古くはサッポロビール、駅舎にもレンガが使われ、よく見ると街のそこかしこに、使われている。「積む」という工法は鉄骨造の建物に不向きだが、レンガは富岡製糸場の木骨レンガ造や、隈さんが山口県の海辺のレストランでガラスの壁の外側に穴あきレンガをフィルターのような塀に用いたように、利用方法にはまだまだ可能性を感じる素材なのである。

(細村研一氏 談)

所在地:渋谷区
構造:S造
規模:地下1階、地上7階
用途:店舗・事務所
事業主:吉田商事㈱
設計・監理:studio h+
元請負:片岡工業㈱
施工担当:竹原
竣工:2018年11月
撮影:アック東京

細村 研一(ほそむら けんいち)
1956年 埼玉県生まれ
1979年 工学院大学建築学科卒業   天野建築設計事務所入社
1987年 隈研吾建築都市設計事務所入社
取締役設計室長として設立から17年在籍
2004年 studio h+ 設立
主な作品
武南中学校、ARTE OTEMACHI、mosta、遊茶「茶意館」、pop-eye house

2018年12月12日 at 2:20 PM