231-2 上町しぜんの国保育園 (small pond)

子どもの心に寄り添う保育を再構成

 

 

ユニークな保育を行う保育施設の建物である。齋藤紘良理事長と、青山誠園長が掲げた、「small pond」=小さな泉という全体像には、敷地内に元々井戸があり、前面道路には川が流れていたという環境を手掛かりに、「様々な人・もの・ことが、子どもという存在を中心にして湧き上がる」という水と保育のイメージが重ねられている。「土と水があれば何でもできる」という青山園長の保育を具体的に実現するために、次の3つのポイントを押さえている。

1.スケールを意識したA・B棟、全体を立体的につなぐC棟
子どもの受け止め方を考え、隣接する住宅等と同じような大きさとして感じられるように、A・B棟に分けてスケールダウンした。屋根のかけ方や、窓の大きさ、それらが違和感なく周囲に溶け込むようにし、その2棟に連なるC棟を敷地の外周に巡らせて、外階段のデッキ、板塀とともに中庭を形成している。
2.「土と水」をうける混構造
1階がコンクリート造、2階は木造。泥んこ遊び、水遊びをしても子供たちが自由に出入りできる土台として1階はコンクリート造にしている。建物に入ると、中間領域の縁側、ホール、奥の各個室へと連なる。また、中庭に足洗い場があり、山をめぐって水がそこに集まって、それを受ける土手のような抽象的な意味合いを建物に反映させている。園長からはできるだけ木を取り入れたいという希望があり、2階は木造とし、親しみやすい空間となっている。
3.以前の敷地プランを活かす
敷地には以前、セメント建材販売店が建っていたが、東側に建物や倉庫があり、北側前面がオープンになっていてトラックが出入りしていたため、南側・西側に向かって大きく空が広がっていた。この空の広がりを気に入って、建て主は敷地を決定されている。加えて、北側前面道路際から敷地いっぱいに大きいものを建てると、近隣に圧迫感を与えることになる。必然的にもとのプランをなぞるように建物を配置し、それは方角的にも保育園の中が丸見えとなることを避け、騒音、プライバシーに配慮する判断となった。

板張りの塀を巡らせているが、その大半がC棟で、天端が中庭から次第に高くなっていく。この3つ目の建物の存在感はかなり検討した。板塀には世界遺産の厳島神社で使われている「人・環境にやさしい保存処理木材」を使って手触りの良さにこだわり、また外側は横貼りにしているが、内側は縦貼りにして、子どもがよじ登れないようにしている。外からも内からも気配を感じながら見えないようにしている。

窓のサッシの上下の分割、扉の高さにも工夫をし、保育園は子どもの居場所である一方、スタッフの職場でもあるので、目線が行き届く仕掛けをしている。

部屋は、それぞれ0~5歳児室として名前が付けられているが、青山園長は家庭保育を意識した全学年縦割りを試みており、部屋の使い道を4歳児以上の子どもたちにミーティングで決めさせたりしている。一見フレキシブルだとは感じられないかもしれないが、住宅スケールの建物として捉え直せば、その使い道を活動の中から子どもたちと楽しく作っていく、青山園長の考える本当のフレキシブルにつながっていくことだろう。

(中佐昭夫氏 談)
所在地:世田谷区
構造:RC造+W造
規模:地上2階
用途:保育園
設計・監理:中佐昭夫/ナフ・アーキテクト&デザイン
竣工:2019年1月
施工担当:尾内・石井
撮影:矢野紀行

 

2019年6月10日 at 1:36 PM