148-3 M Project

「3 代続いた地域の医院の建替え」

築 40 年になる診療所と住宅の建て替え工事である。既存の建物は、通りから 20m 程入った狭い路地の右手奥の<木造 2 階建て +RC 造半地下>建物と、さらに奥に連なる木造平屋の住宅 2 棟。診療所の入口は前面道路から 1m50cm 程度の階段を上がらねばならず、高齢を迎えた先代からの患者さんにとっては厳しいものとなっていた。

旧診療所部分:階段を上がった 1 階が診療所。半地下部分は RC だが、上物は木造だった

 

北側の木造平屋部分。換気が悪く、匂いがこもりやすかった

老朽化した建物は日も当たらず換気も悪く、住環境としては決して良い条件ではなかった。3 代目として診療所を引き継ぐことになった建て主は、お年寄りの患者さんも利用し易く風通しも良い明るい建物に建て直したいと希望された。 敷地の状況は、工事車両の搬入など厳しい道路付けだけでなく、周囲に1m 程度の高低差もあり擁壁工事が必要 となった。 建物が竣工するまで既存診療所の営業を続けながらの工事となるだけに、近隣や患者さんへの安全面には充分な配慮が必要で、既存建物も搬入路を確保する為に一部解体後も使用するという非常に難易度の高い現場であった。   擁壁工事では、狭小敷地で効果を発揮する「フーチングレスパネル工法」という基礎の底版部がほとんど無いパネル工法を採用。騒音や振動も少ない工法なので近隣に対して充分に配慮することが出来、工期短縮にも役立った。 新築建物の 1 階は「診療所」と「住居部分」になっているが、気持ちの切り替えが出来るように表と裏の色が違う内部ドアで区分けした。2 階は広く明るいリビングを中心として構成し、書斎コーナーなど趣味色を強調した作りとなっている。ダイニングにはペットのワンちゃんが退屈しないように外を覗ける窓を付け、3 階にはドッグランを広く取りペットと共に楽しく暮らせる家となっている。 北側に開いた既存の作りとは違い、建て替え後では南側のスペースが広く開け、これまでより採光・通風も改善された。建て主が愛犬と共に快適に暮らせる住まいが出来、また診療室・待合室も以前より広くなったことで、今後も快適な医院として、地域の患者さんに愛されることを願っている。

 (設計:石毛 満氏 談)

  最初の医院は空襲で焼けてしまったので、祖父の代の頃のことはよくわからない が、今でも祖父に診てもらったという 80 代の患者さんが見える。耳鼻咽喉科という言葉もまだない頃、珍しい有床診療所だったようだ。その頃からこの場所で開業していたことは間違いない。今回大学病院勤務からこの医院を引き継ぎ、さらに患者さんに来て頂きやすい診療所となり、良かったと思う。愛犬もドッグランが大好きで、床もペット専用のものを選んだので元気に走り回っている。

   (建て主 M 様 談)

所在地:中野区
構造:RC 造
規模:地上3階
用途:診療所・住宅
設計:石毛 満/m.ISHIGE 都市デザイン研究所
施工担当:岩本、田所
竣工:2012 年6月
撮影:①石毛満 ②-⑦アック東京

2013年4月11日 at 12:00 PM