116-1 マスターアーキテクト HOLONⅡ

用途: 竣工年月: 場所: 設計: 構造: 規模:

HOLONⅡ

 撮影:高山幸三

 写真は、今月 Front Line にお迎えした、團紀彦氏設計による神宮前のテナントビルです。昨年いったん延期された計画でしたが、別のオーナーの物件として、この度弊社が施工させていただきました。この神宮前の一帯では、昨年来、施工開始前に計画が流れ、工事が中断したと思われる空き地があちこちに見られます。が、このように建物が本来の役目を果たすときが訪れるのは、喜ばしい光景です。

 團紀彦氏は、2005 年の愛知万博において、2 人の別の建築家とともに初期の会場構想作りに関わることになりましたが、会場である海上の森(かいしょのもり)の保全を主張し、旧来の国の事業のあり方を厳しく批判しました。ご存知の方も多いことでしょう。
「最初の計画の要請が、山を造成した上に計画を立てるというものだったので、『それは第一歩から間違っているのではないか』というごく当たり前のことを主張しただけでした。何も考えずに山にメスを入れて白いキャンバスの上に建物をつくる。基本的にそんなやり方がまかり通ってきたわけです。『環境をテーマにする展覧会は、そういう古い考え方を根本的に変えることが必要なのではないか』と提案したのですが、当時の建設省はがんとして動かない。そこで我々は造成をやらなくても同じ効果を得る方法を提案したのです」と團氏。
結局、海上の森造成計画は中止になりましたが、團氏はプロジェクトからははずされることになってしまいました。しかし、その模様を当時ジャーナリストとして双方に取材していた田中康夫氏が、長野県知事に就任した折、長野県の環境を守るために「マスターアーキテクト制度」を導入し、「第 1 号に」と、團氏に依頼してきました。
「マスターアーキテクト」は都市や巨大建造物のデザインを、周辺環境との景観的な調和を図りながら統括的に監修する専門家のことで、欧米では盛んに行われている方式です。(フランス・アルベールビルの都市整備における事例が有名) 長野県で田中知事は大幅に県の赤字を縮小し、團氏も建築設計活動のかたわら、土木と建築の融合や新町屋論など建築と環境の関係性の改善に関する主導的な提言を行いました。
「建てないことも考えるのが建築家。でもそれじゃ設計料はもらえませんが」と笑う團氏。時代は民主党政権に変わり、前原国土交通大臣の、「八ッ場ダム建設工事停止」措置など、公共工事の考え方も大きな転換期を迎えています。今こそ「マスターアーキテクト」が、求められている力を発揮する時期に来ているのではないでしょうか。

HOLONⅡ

ガラスファサードの小さなテナントビル

敷地は、表参道と明治通り、R246の交錯する場所に位置し、昔から商業地域と住居地域が混在する良さが残る地域である。屋根は、北側斜線の影響を受けてねじれているが、シンプルな表現になっている。
住居のスケール感をもった小さな商業スペースであり、周辺の環境に自然に溶け込んだものとなった。

                                        (團紀彦氏談)

構造:S造
規模:地下1階 地上2階
用途:店舗
設計:團紀彦建築設計事務所
施工担当:佐須
竣工:2009年10月
撮影:①團紀彦建築設計事務所②③高山幸三

2013年3月11日 at 4:00 PM