92-1 al domino

用途: 竣工年月: 場所: 設計: 構造: 規模:

武蔵野の閑静な住宅街にローコストでデザイナーズマンション誕生

オーナー邸建替えを主目的とした賃貸集合住宅である。
敷地は、 吉祥寺の駅前商業地区と、 北側に広がる武蔵野の閑静な住宅地との境界に位置し、 ビジネスと生活の混在した地域である。 そのため街の成長につれ事務所としても住宅としても利用できる、フレキシブルな入れ物を用意することで安定した資産運用を視野に入れた。

建物は 3 ブロックから成り、道路に面した 2 つのブロックは4層で並立しているものの、レベルが異なっている。さらに西側奥に4層の1ブロックが配置されている。こちらの半地下1階と1階がオーナー邸で、この建物の中ではかなりのボリュームを占める部分となる。 奥まっているため、 非常に厳しいスペースだが、 採光や通気に配慮して吹き抜けのパブリックなバッファゾーンを作り、 思った以上にしっかりとした空間を創出することができた。
道路斜線、 北側斜線もあり、 空間的な遊びはほとんどない。 しかし 8 つの賃貸部分はすべてプランが異なり、 それぞれに特色を持たせている。 東側のブロックの 1 階、 北側 A タイプと南側 B タイプの2 戸は、 道路に面した部分に 2 段階の引き戸で緩衝帯をつくり、 そこから直接室内に入る。 脇から玄関ドアを介して入ることも可能である。 店舗 ・ 事務所のショーウィンドウのように使ってもらってもいい。
賃貸部分は天井高がそれぞれ異なり、 B タイプはロフトが設けられている。 2 階より上の部分へは、北側外部階段からのアプローチとなり、 さらにスキップフロアで個別の入口へと向かう。 建物前面のスクリーンを 「ファインフロア」 という足場板に使う商品にしたり、モルタルの土間的な部分を作ったりして、全体的にローコストで建物側でサービスをしすぎないこととした。 建物奥の部分、 西側ブロックへは、南側の通路から階段を下り、 地下のオーナー邸へと向かう。 入口を入ると目の前に大きな吹き抜け空間と階段が現れる。 以前、 建て主が使っていたテーブルの天板のイタヤカエデという銘木を踏み板に再利用し、 廊下にはたくさんの木の棚が製作され、 打ち放しの内装に和らぎを与えた。

建物の名前 「al domino」 は建て主と自分との接点を表している。 al は Al Jolson(アル・ジョルスン。 名曲「スワニー」 を歌い、 映画界初のトーキー映画 「ジャズシンガー」 に出演したエンターテイナー) から。 Domino は、Fats Domino (ファッツ ・ ドミノ。 ニューオルリンズ出身のR&B シンガー、 ピアニスト) から。 共通のファンである。
犬を飼っていることや井の頭公園を散歩コースとしていることも、 気持ちが通じる要因であった。 建て主にとって、決してゆとりがある事業ではなかったが、 街で見かけた私の建物に惹かれ、 私の設計で建物を建てることを夢にしてくれた。 お互いにがんばって、 その夢を実現できたことを存外の喜びとしている。

 (木下道郎氏談)

所在地:武蔵野市
用途:共同住宅
構造:RC造
規模:地上3階、一部地下1階
設計:木下道郎/WORKSHOP
竣工:2007年11月
撮影:アック東京

2013年2月14日 at 4:00 PM