84-1 Oクリニック

用途: 竣工年月: 場所: 設計: 構造: 規模:

周囲に威圧感を与えないクリニック

建て主のO氏は、地域医療を担ってきた医院の3代目である。
事務所が近い関係で私が患者としてお世話になったのがご縁で、老朽化した建物の建替えをお引き受けすることになった。
建替え以前の建物はRC造の2階建てであったが、自由度がないプランに不満を持たれていた建て主は、フレキシビリティのある空間を希望された。
また、「住宅地内にあることから、周囲に対し圧迫感のない建物になるように」というご希望があり、加えて大事にしておられる植栽をできるだけ切らずに生かすことを求められた。そのため、伐採した桐については製材を行い、ゆくゆくは家具など内部に使用できるようにしたり、藤棚も場所を変えて植え替える予定で移植して近くの植木職に預けてある。
ほかに、建て主は先代・先々代が使っていた計量器や体重計、ドアノブなど、古くても愛着のあるものなどをとても大事にされており、それらのコレクションも保管しておけるスペースも用意することになった。
RC造打ち放しだが少し柔らかい表情にするため、外壁に本来床材として使用するデッキプレートを用い、500ミリ単位のモジュールで周囲を囲うことにした。構造的には外力をコンクリートで受けて、軸力をそのデッキプレートで受けている。工事中必要なところはサポートを設けたが、施工的には精度が求められ、設定に余分な工期も取られることになって、現場にはこちらのストーリーによく対応していただいたと思う。

内壁は打ち放しだが、ランデックスコートを2度塗りして、少し柔らかい表情を出した。さらに開口部にも柔らかい表情を出したかったので、フラットなブラインドより、陰影が出るカーテンを用いた。こちらの提案をもとに「株式会社NUNO」の安東陽子さんにオリジナルデザインを依頼した。光による微妙な変化が期待できる素材となっている。
床材は、当初テラゾーにしたかったが、設備、その他の理由により浮き床にする必要があり、エクセルジョイントを塗った後、ドイツのアーデックスビショットを流し込んでいる。
以前手がけたRC造の住宅で利用したガラスタイルの表情が、タイルとは思えない不思議な表情を持つことを発見し、今回はさらに透明な50ミリ角のものを利用してみたところ、デッキプレートの500ミリというユニットにもあい、角のRもきれいに収まった。タイル割りの施工をしっかりやっていただいたので、より建物として厳密で洗練された印象になった。
ガラスは経年変化がほとんどない素材で100年経っても変わらない。季節、1日の時間、天候によってその表情を変え、また周囲の緑も映しこんで、スクリーンのような外壁を作りたいというこちらのイメージに応えてくれるものだ。メンテナンスも楽で、診療所という清潔感が求められる建物にはマッチしている。
フレキシブルなプランということが一番表れているのは2階である。エレベーターをコアとして、周りが全部フリーで、ほとんど仕切りのないスペースを提案した。1階も同様だが、働くスタッフの動線を意識して、回遊性のある空間になっている。

(石田敏明氏談)

所在地:板橋区
用途:診療所
構造:RC造+S造
規模:地下1階 地上3階
設計:石田敏明/石田敏明建築設計事務所
構造設計:アラン・バーデン/ストラクチャード・エンヴァイロンメント
担当:岩本
竣工:2006年12月
撮影:鈴木研一

2013年2月6日 at 2:00 PM