68-1 SCALETTA

用途: 竣工年月: 場所: 設計: 構造: 規模:

街の未来を見つめる小さなマンション

敷地は発展性のある都心の立地にありながら、戦後の古い木造住宅が今なお残り、区画整理がなかなか進まない下町の密集地である。今回の計画地も前面道路4mの狭小地であり、建て替えられた5層の建築物は、集合住宅とすれば極めて小規模にもかかわらず、軒が重なるほどに小さく立ち並んだ周辺の街並みからすれば突出して高く、相対的に異質なボリュームに見える。私たちはどんな場所でも既存の街並みの良さを見いだそうとするが、このケースでは現存への尊重よりも未来の街並みへの足掛かりを考えて、周辺に対してむしろ明確なコントラストを与える事にした。つまり、依頼主の事業性も考慮して最大限のボリュームを確保する方向である。しかし、それが無作為で乱暴な形態ではなく、小さな敷地でも丁寧に計画すれば、端正かつ容量のある資産が形成できる具体例として成立しなければ、私たちの存在する意味がない。そんな中で、新たな魅力を派生させることで、現在は高齢者が多いこの街の未来に新たな住民層が加わり、少なからず発展的な住環境が形成されることを期待している。

天空率計算によって前面道路の斜線規制を回避した結果、4層までを同じ基準階とし、型枠をギリギリまで転用しながら厳しいコストの制約をクリアしている。前面道路との緩衝地が設けられないので、賃貸部分を前面道路の視線より高く設定するために、4層の各床は、すべて室内で階段状になっているが、その床下の有効を配管スペースとし、縦配管はすべて建物の外部に露出させている。各階はシンメトリーに2戸の住戸を配しているが、その中央の間仕切りを乾式として躯体に参入しないかわりに、柱を袖壁としてリブ状に室内に突出させることで構造的に成立させている。この躯体自体が持つ構造的な特徴を、小さな空間の有効性に加担させるために、室内の使用目的が限定される浴室やトイレ等の場所を、すべて躯体が創り出した際の部分に押し込んで、たとえば浴槽は床下、トイレは袖壁の中から引き出して使用するといったように、利用するとき以外は空間に突出しないように工夫した。

(内海智行)

所在地:品川区
構造:RC造
規模:地上5階
用途:共同住宅
設計:内海智行/ミリグラムスタジオ
撮影:平 剛

2013年1月21日 at 8:57 PM