46-2 川崎の家Y邸

撮影:編集部

昨年10月にお引渡しした、川崎市のY邸は、東側に公園のある緑豊かな環境の住宅です。母屋の地下室はRC造、離れは木造、1、2階は鉄骨造という混構造。オーナーY様の弟である、八木幸二氏(東京工業大学八木幸二研究室)の設計のため、オーナーも行き届いた配慮にすっかり満足されていました。お二人にお話をうかがいました。

Y様「実家の家財を引き取ることになり、大きな収納室が必要になりました。また高齢の母との同居を視野に、以前からの住宅を建て替えることにしました。この敷地以外にも広めの土地を探しましたが、高台の南端という日当たりの良さや公園の隣という緑豊かな環境は、ほかにはなかなか見つからなかったので、この場所で建て替えることにしたのです。」 八木「容積率、建蔽率を最大限に利用し、地下室を設けて収納スペースをいっぱいにとりました。」

Y様「実家は、祖父までは15代続いた医者の家。父は日展の画家で、蔵にはかなりの家財がありました。長持ちなんか10個以上あった。それでも美術館に寄付したりしてだいぶ処分はしましたが」

―祖先から引き継いでいる貴重な品々を廃棄することはやはりためらわれたようで、地下室はほぼ埋め尽くされました。八木氏は地上への排水を独自に考えた除湿システムを実験中です。
母屋の1階はワンルームのリビング・ダイニング。オープンに見える階段室とはガラス引き戸で仕切っています。
八木「玄関口にカーテンを設け、熱が上階に逃げるのを防いでいます。ガラス引き戸には小さなフックも表面に張ってあるので、壁面としても利用できます。」
1階離れは、6畳の和室で施主の母君の部屋として設けられました。残念ながら入居直前に他界されてしまいましたが、お子様たちの家族が泊まっていくのに便利だそうです。母屋との間の廊下に洗面所・トイレ・バススペースを設け、気兼ねなく出入りできるよう、外への出入り口もつけました。部屋に入ると、窓越しに母屋のダイニングを見ることができ、和室にいるときも家族の様子が窺えて安心です。
離れの屋上部分はファイバーグレーチングのブリッジで母屋2階とつながっています。約1mの高さの壁で囲まれたデッキスペースで各面にあいている窓のため通風がよく、物干場となっています。緑化パネル(セダム)が置かれていて、中庭の植栽とともにこちらの成長も楽しみです。

母屋の2階は、寝室としての2つの和室と書斎コーナー、バスルームを含むユーティリティコーナーがあります。片流れの屋根と壁の間にスリットが入っているので、屋根が浮いたように見え、空が建物全体を回りこんでいるイメージです。内部も天井が仕切られていないので(上部にガラスが入っていますが)フロア全体が開放感のあるスペースになっています。

八木:「『離れ』について、思い出すのは、鎌倉で15,6年前に作った住宅のことです。打合せをするうちに、お姑さんをあまりわずらわせないで友人との団欒を持ちたいというお嫁さんの気持ちが見えてきました。そこで居間・食堂などを母屋の1階にして、子供5人を含む若い世帯は上階へ個室を作り、お姑さんには離れを用意して別の入口も設けました。もちろん母屋の1階で食事や風呂、トイレなどを一緒に利用できるようにしました。つまり上の世代と下の世代では、生活動線が異なる方向に向くようにしたのですね。今回も兄夫婦のどちらかが次の世代と暮らす時に、ある程度の距離感を維持できるように『離れ』がいいと考えました。庭も公園の借景も、南側の景色も開放感があり、別荘のような感があるこの土地をうまく利用できたと思います。」
―世代を超えて使いこなしていく家を考え、広さだけでは決められない現在の敷地の恵まれた点を生かした、2世代、3世代住宅となりました。

 

 

2004年1月10日 at 4:22 PM