41-2 六本木FS ビル

用途: 竣工年月: 場所: 設計: 構造: 規模:

(撮影:藤戸充)

6月に竣工した「六本木FSビル」は、六本木の交差点から一本内側の通りに建つ地上3階地下1階の建物です。施主・藤野豊氏は、武蔵村山市に本社のある不動産会社を経営されています。藤野社長にお話をうかがいました。
藤野:「郊外にある会社なのに、都心になぜ賃貸ビルを持ちたいのか」とは、よく訊かれますね。今回の六本木の土地は、国有地の一般競争入札で落札できた故、当社都心第一号のビルとして建設できただけです。都心の立地条件の良い地域に賃貸ビルを保有することは、当社の念願でした。しかし、ただビルを建設して賃貸するだけでは駄目です。私はビルのデザインにこだわりたい。

「六本木ヒルズ」や「丸ビル」等は例外ですが、良い立地にあるほとんどのビルは、そこに入居するテナントの知名度の方が高く、ビルそのものが人をひきつけているのではありません。小規模、中規模のビルであっても、駅に近く、街づくりに貢献できる意匠、さらに明快なコンセプトを主張しているビル、そんなビルを造っていきたい。そして、テナントには、自分で独立して価値観をつくっていく意欲のある方を望んでいます。
―「六本木FSビル」は鉄筋コンクリート造でガラスのリブを用い、特に夜間の景観の美しいビルです。赤坂にもすでにビルを取得し、郊外ですが学園都市国立にもFSビルを建築中です。設計は、武蔵村山の本社ビルに続いて六本木も手がけた白旗定幸氏(マナ建築設計室)です。時にぶつかることもあるけれど、そのセンスには信頼をおいていらっしゃるとのことですね。

藤野:郊外である武蔵村山市周辺地域においても、地域に住む人々の利便性を向上させ、街の景観にも配慮したビル建設を心がけています。武蔵村山市は築30年以上経つマンモス団地を抱えていて、老齢化がどんどん進んでいる現実があるけれど、すでに団地の高層化への建替えも始まり、今後は若い世代の入居が期待できそうです。ビルを建てるとき、そのビルが地域の活性化に役立てば、何よりです。ビル建設にあたっては、単体のビルだけを見ず、周辺もよく調べ、点で考えず面で捉えるようにしています。

―藤野商事本社は、村山団地のすぐ近く。周りの建物に比べ、そのデザインは際立っています(日経AC 2003.04.28号 p.71に掲載)
地域の賃貸ビル名は「藤ビル」とし、地元との関連性を意識した作り方で建てていらっしゃいますね。
藤野:建物は設計が命だと思っています。図面をつくり、仕様を決めれば一応のビルは建ちますが、それは仮免許のレベル。街の周辺を見て、その建物の存在理由や価値、地域の反応など様々な検討を経て、設計にかからねばなりません。そのためには、設計に携わるスタッフに、経験と感性を求めます。施工については、メンテナンスの件もあるので、「長いおつきあいのできるところ」をとの考えから、意識はしていませんが、結局大手より中小の「顔の見える業者の方」に決めることが多いです。

―藤野商事では、賃貸ビル事業のほかにも別の分野への進出を始めています。本社の1階は、DPEショップがあり、国立FSビルには宅配ピザの全国展開のフランチャイズ店「ストロベリーコーンズ」が入ります。スタッフを20名増員する予定です。
藤野:DPEショップは、まず基本的に私が写真好きだということです。スタッフも写真好きが多い。それから、売り場面積も小さくて済み、初期投資も抑えられる。

―本社にはミニチュアカメラのコレクションやオリジナルプリントの作品が飾られており、社長の写真好きが窺えます。

藤野:ピザ宅配事業は、飲食事業の新たな開始の1ページで、両事業とも当社のスタッフのための、言わば「のれん分け」のようなものです。独立できる業態をやることで、目標ができ、目標に向かって努力することができます。給料をもらいながら、技術も知識も身についていく。定年まで漫然といようなんて思う根性では駄目ですよ。スタッフには、常日頃「45歳までいられると思うな」と言っています。また、スタッフには感性を磨いてほしい。やはり郊外勤務ですから情報不足になりがちです。休みには、「都心に行け、遊びに買い物、いろんな経験を通じて感性を養え」とも。そういうことには、時間を惜しまないでほしい。

―郊外での経営の難しさは、人材面では「バイトはいる」、でも「正社員は限られる」というのが現実だと藤野氏は言います。厳しい中にも、社員への愛情が感じられるお話でした。

構造:RC造
規模:地上3階、地下1階
用途:店舗
設計:白旗定幸/マナ建築設計

 

2003年8月10日 at 5:44 PM