06-2 深沢の家

 

深沢の閑静な住宅街。地上2階、地下1階、2つの縦長の箱を中庭と通路でつないだ建物である。
1階玄関を入ると、右手に大きな窓。その下にアトリエの吹き抜けが広い空間を占めている。
玄関の左手には2階への階段が続き、中央の廊下の奥がバスルームになっている。左側の地下への階段を下ると、先ほどの地下アトリエの入口、そして中庭をはさんだアトリエの反対側に、主寝室と子ども室がある。
2階は、天井を高くとった大空間、白を基調にシンプルな雰囲気をかもし出している。ダイニングから外のテラスにかけて風通しのよさが心地よい。リビングは、ルーバーにより明るさが充分室内に取り入れられており、家具や建具が和のテイストを加えている。
夏の暑い盛りに撮影にお邪魔したが、家全体が涼しいのには意外だった。空調を何もつけなくても、コンクリートの蓄冷効果がこれほどとは思わなかった。寝室や子ども室にも風が中庭から吹きぬけて、思ったより湿気を感じさせなかった。

構造:木造 +一部 RC造
規模:地上2階、地下1階
用途:住宅
建築面積:61.5㎡
延床面積:166.92㎡
竣工:2000年8月
設計・監理:E.P.A環境変換装置建築研究所

 

今月は下の「作品紹介」で取り上げた、松原邸の取材から―。
松原様ご夫妻は、二人とも芸術家ですが、ご自身の私的活動の場として、アトリエにかなりのスペースをとりました。
また家の中にアートを生かした空間を設けることを意識して極力内装はシンプルなものにされています。
「普通のマンションや一軒家を探したんですが、なかなかそのような建物に出会えなかったんです」と奥様。そして「自分も周りも、元々そういうことには重きを置いてきたけれども、最近若い人たちも変わってきたなと感じることが多いんですよ」と付け加えてくださいました。つまり、気にいった絵があれば、ローンを組んででも購入する若い人が増えているらしいのです。それだけ、自分の心の安定にお金をかけてもいいという価値観を持つ人が増えてきているそうです。そんなものはぜいたく品だなどと言うのは古い世代。自分の周りにアートを置いておくことは、大切なことなのです。
フリマ、つまりフリーマーケットでは、最近リサイクル品と並んで、若いアーティストたちの手作り品が目立ち始めたそうです。これまでも骨董品や装飾品はどこでも見かけましたが、青山あたりのフリマでも自作の陶器や凝ったアクセサリーなどを売っている人が増えてきました。青山学院の前のオーバルビル前(毎月第2土、日)、伊藤忠の前の広場(毎月第1・3土)などで、お客さんと軽やかにコミュニケーションをとりながら、商売に励む若者がたくさんいます。
不況のせいでしょうか、普通に学校を卒業して就職するという道を選ばず、自分の納得の行く生き方を模索することに時
間をかける若者も増えています。バブルの後、政治も経済も先行きはお世辞にも明るいものではありません。学校教育が何かしてくれるかというと、結果は出なかった。そんな自分をどう表現して社会に出て行くかと考えたときに、アートは最もはっきりとその答えが出てくる世界です。単に生活の糧だからでしょうか。そうとばかりは思えません。
これから、自分自身の暮らしのスペースにこだわる若い人はますます増えてくるでしょう。アートのある暮らし、自分の心を癒してくれるモノの存在をうけとめてくれる家。
それは「人並み」にという無表情な入れ物ではない、暮らす人の個性を表現した、居場所であるはずです。お金持ちの大空間だろうが、ささやかなアパートの一室だろうが、変わりはありません。
私たちは、そのような空間を提供する魅力ある家作りのお手伝いをこれからも続けていきたいと思っているのです。

2000年9月13日 at 2:21 PM