258-1 外界を緩やかに感じられる音楽ホール

2021年9月13日 at 10:12 AM

写真は、昨年11 月に竣工した「空のある音楽ホール」です。

建て主様ご夫妻は音楽を趣味とされており、特に奥様はヴァイオリンでプロの演奏家と共演されるほど。ご主人もピアノを演奏されます。そんなご夫妻が生活の一部として使用するための音楽ホールを、やはり音楽が趣味という山本卓郎氏が設計されました。

場所は世田谷区の活気ある住宅街。建物の前面道路はバス通りで交通量も多く、周囲はマンションに囲まれています。一見すると演奏会を行える音楽ホールがあるとは想像がつかないような敷地で、今回の計画がスタートしました。
「クラシックの演奏に適した静謐な環境とは言い難いロケーションです。だからと言って周囲の環境を遮断し閉塞感のある建物を設計して『どうぞ楽しんで下さい』というのも違和感がある。『音響的には一旦クローズして音をシャットアウトするが、それでいて外の広がりある世界と繋がっていることが感じられるようなホールを作りたい』という想いがありました」と山本氏。

ホールに入ってみるとまず目を引くのは足元に位置している青空。
天を仰いで見るのが当たり前の風景なだけに一瞬何が起こっているのかわからなくなります。しかしその青空が空間に眩しいほど光を反射させ室内に差し込むことで、外部から想像される空間とは全く異なった世界がホール内に作り上げられています。

「周囲が建物に囲まれていることを感じさせないため、室内から空だけが見える場所を選んで窓を設置しました。その結果高い位置に窓が集まっていますが、上の方向に空があるのはある意味当たり前。そこでピアノの背後の低い位置にも窓をつくり、そちらでも空が見えるようにしています。窓の内側に鏡を設置し、それが上空の空を映し出しているのですが、いきなり『鏡に映っています』と説明してしまうのもつまらない。皆さんにはまず、予備知識なしでただその景色を感じてほしい」

こけら落としには10 人ほどのお客様をお招きして演奏会を行ったそうですが、当日は適度な雲がずっと流れている空の様子を眺めることができ、それが皆さんに非常に好評だったとか。

「今はまだたくさんの方をお招きできる状況ではないのが残念ですが、いつかもっと多くの方々にホールの雰囲気を含めて音楽を楽しんでもらいたいですね」と手ごたえを感じられた山本氏でした。