240-1 北青山、そして

「Arrows aoyama」 撮影:Kozo Takayama

港区北青山、そして隣接する渋谷区神宮前、いずれも弊社が施工させていただいたビルが数多く点在する地域です。
最近、いくつかの北青山の竣工物件の現場を確認するために訪れる機会がありました。歩いてみると同じ番地なのにかなり入り組んでいて、一方通行もあり、車が容易に通り抜けられる地域ではありません。しかしそのために街にはいつも多くの若い人たちが歩いています。総じておしゃれな男性が多い印象です。

先日も上の写真の「Arrows aoyama」のビルの前に来たところ、ちょうど3人組の男性がスマホで建物の写真をパチリ、と目の前で撮るではないですか。思わず「なんで撮影されたんですか」と声を掛けたら、「いや、かっこよかったから」とおっしゃるものですから、「うちが施工したんです。設計は表参道の『BOSS』が入っている『表参道けやきビル』と同じ設計者、團紀彦さんです」とうれしくなって話し込んでしまいました。

この区画には、R246沿いの「ao」ビルをプロデュースした浜野安弘さんのオフィス兼住宅「Omni Quarter」やエステティックの「YON-KA」ビル、ワイヤーシステムの荒川技研のショールーム「TIERS」や、アイスクリームのアントルメグラッセ「GLACIEL」などがあり、少し下ったところには「FRED PERRY SHOP TOKYO」や「小池精米店」、キャットストリートに連なるいくつかのビルがあります。表参道の反対側を合わせると、先月号でお伝えした「エスセナーリオ表参道」など原宿駅周辺まで、50件は下りません。弊社の会社案内「BROCHURE」では巻末に原宿・青山の建築散歩マップと建築紹介が付いています。

しかし、先月号で人と人の直のコミュニケ―ションの大切さに触れて、街歩きをお勧めしながらも、なんと今月は日本、いや世界中で人が集まるところには行かないように、という事態が起きています。

1月下旬からの新型コロナウィルス感染症の流行に伴い、ついに2月26日、政府は2週間のイベント開催自粛要請を発表しました。プロ野球やJリーグ、バスケット、バレー、ラグビーなどのスポーツイベントやタレントのコンサートはもとより、学校など教育現場にも及んでいます。

厄介なのは、ほとんどの人では症状が軽く、風邪を引いた程度なのに、高齢者や病気がある人が重篤になる危険性があるということです。今も何にも異常がないけれども保菌者が歩き回っていることが考えられるわけですから。
目に見えない恐怖には、「可視化が大事」と、検査体制や治療の新しい情報開示が求められて、なんとか流行を乗り切ろう、患者を救おうという機運が盛り上がっています。
建設現場でも、中国の武漢市を始めとした街の封鎖、春節以後の各工場の再稼働の遅れにより、生産現場の停止という事態が住設機器メーカーの製品出荷に影響を与えています。
情報をお伝えしようと、今月のフロントラインでは、住設機器の代理店の営業の方から直近のお話を伺いました。各メーカーとも「納期は未定」としか言いようがない状況です。

「清潔」という観念も改めて問われていると感じます。手を洗う、うがいをする、マスクは必要ということですが、以前「日本人は歯や口のケアが欧米人ほど徹底していない」と聞いたことがあります。ハグやキスが当たり前の習慣の彼らは自分の口の匂いなどには予想以上に気を使っているようです。日々の習慣を思い返してみるのもいい機会かもしれません。

 

239-1 街の進化

「ESCENARIO OMOTESANDO」 撮影:バウハウスネオ

表参道ヒルズなど大きな商業ビルが立ち並ぶ神宮前。大きな通りの裏手には静かな住宅街が広がり、小粋な店があちこちに建っています。
写真は、その神宮前に昨年、竣工した店舗併用集合住宅です。

「この街は、昔の自由が丘、その前の代官山や吉祥寺に通じる、街の進化を見ることができる面白い場所でもある」と設計の木下道郎氏。
「街は、渋谷、新宿、銀座…など、巨大な商業地域だけではなく、進化で言えば、ほどほどの時期が一番面白くて、魅力的だと僕は思いますね。都市というのは、ものと同じように成長し、衰退していく。ものすごく大きくなって活力にあふれる時期が来る。でもその前に生き生きとした、魅力的な時期があって、僕はこの、ちょうどほどよい時期を迎えている神宮前で、今仕事ができることをとてもラッキーだと感じているんだ」と話してくださいました。

リーマンショックの後、プロジェクトが止まってしまって空き地になっていたところがたくさんあった神宮前。いまや新たな建物が建てられ、戸建住宅から集合住宅や小さな店舗ビルに建て替わるところも少なくありません。
その時にも、これまでのようにプライバシーとセキュリティに配慮した、外へは閉じた形のものよりも、最近ではリニューアル物件同様、地域に開かれた形を組み込んだデザインのものが多く見受けられます。小さなスペースでも、その路地を工夫することで、地域の人の関わり方を効果的に変えることができます。災害・エコロジーに配慮し、耐震・防火性能を持った建物、共用スペースに開放感あるプランで、エコにも配慮した形が求められています。クリエイティブな人々が往来する地域に建つ建物としての、デザイン性の高さも捨てるわけにはいきません。

ファミリーレストラン最大手「すかいらーくホールディングス」が、半世紀にわたって続けてきた24時間営業をすべての店でやめることになりました。24時間営業を廃止する動きが広がった背景に、SNSのおかげで、若い人たちがわざわざ深夜に会ってコミュニケーションをとる必要がなくなったということがあるそうです。
しかし、自宅近くに何となく立ち寄れる場所があるというのもいいものです。人と人との出会いは、やはり生身の人間同士が話をすることから始まります。

今月、P3のフロントラインに登壇いただいた㈱モデリアの郷内秀峰社長は、学生の頃から留学経験が豊富で、特に好きだったのがロンドンとおっしゃいます。「初めて買ったレコードもビートルズ」とのこと。日本と英国は、エンペラーとキングダムの国。しっかりとした、揺るぎのない価値観を持つ、共通のものを感じるということです。その上で、海外に出ると、国内では気が付かない世界の中での日本の位置を実感されるのでしょう。

一時期、減ったといわれている日本の海外への留学生数もアジアなどへの短期留学生の増加で数は増えていますが、このままではますます国際化やグローバル化が進む国際社会の中で発言力や存在感を失うと、いわれています。
若い人には、海外とは言わないまでも、まずは街へ出て、人とコミュニケーションを取る力を養う機会は持ち続けてもらいたいものです。

安全で清潔で素晴らしい自然環境を持つ日本にやってくる外国人を抜きにしては、これからの地域経済も語れません。
春節で訪れる中国の人たちの多さに喜んでいたのも束の間、今年は新型肺炎の流行という恐ろしい事態が引き起こされています。世界はいろんな意味でつながっているのだと、改めて思い知らされています。

238-1 新年のご挨拶 2020

「中目黒テラスハウス」 撮影:アック東京

「中目黒テラスハウス」 撮影:アック東京

 新年、明けましておめでとうございます。
皆様方におかれましては、令和となって初めての新春を健やかにお迎えのことと、お慶び申し上げます。
 さて、昨年を振り返ると、ラグビーW杯が日本で開催され、日本代表の活躍は記憶に新しいところであります。
そして、いよいよ今年は「東京オリンピック・パラリンピック」が開催されます。我が社所在地渋谷をはじめ、東京都、
日本国中が高揚感を維持しています。
一方、日本を取り巻く経済環境は、米中関係の悪化、日韓関係の影響他、世界各地の地政学リスクにより不安定な状況で
あることは否めません。建設業界においても、五輪景気は終わりを告げ、少なからず恩恵を受けた我々建設会社にとっては
試練の年となるでしょう。
そのような時勢下ではありますが、弊社の進むべき道は変わりません。
「こだわり建築」の施工専門店として、施工のやりがい・魅力を発信し続け、建設業の成長発展に寄与していく所存です。
 役職員一同、皆様方に吟味され選んでいただける本物の良い会社を目指してまいりますので、本年も引き続き、今まで
同様のご愛顧賜りますよう、謹んでお願い申し上げます。
                 2020年 元旦
株式会社 辰 代表取締役

  岩 本 健 寿

237-1 社長の邸宅

「O邸」 撮影:ナカサアンドパートナーズ

「O邸」 撮影:ナカサアンドパートナーズ

 

今月ご紹介するのは、都内の閑静な住宅街に竣工したRC造+S造のハイブリット構造の邸宅です。建て主O様に小春日和の土曜日、ご自宅のリビングでお話を伺いました。

O様は、もともと西新宿のマンションにご家族4人でお住まいでしたが、会社経営者でいらっしゃることからご自宅にお客様を迎える機会も多く、ご家族が気兼ねなくくつろげる大きなリビングをご所望でした。ゲストがいらしても、お子様たちや奥様が自分たちのお友達とくつろげるスペースが欲しかったとのことです。

矩形に近い敷地は渋谷に近く、O様の希望に合ったものでした。このあたりでずっと探していたO様が、不動産会社だけでなく銀行にも相談した所、ちょうどいい物件が入ってきたということで、すぐにご連絡をいただきご縁があったものでした。その土地に建築したい建物が建てられるのか、銀行への融資枠も確認するために、偶然インターネットのサイトから、今回の設計を担当した「フリーダムアーキテクツデザイン」を見つけ、訪れました。

年間約400棟の注文住宅の設計を行うフリーダムでは、お客様に住まいを具体的にイメージいただくために、無料で設計プランのご提案をしています。銀行に向けた図面を1週間で描くよう依頼されたO様に対して、フリーダムはスピーディに提案を提出。融資枠が決定し、無事土地を購入されたO様。改めて設計者の検討を重ねられた結果、やはり最初に図面を引いてくれたフリーダムの案が一番ご自身の気持ちを忠実に受け止めてくれた、と正式に設計を契約されました。

「いろいろな事務所から提案いただいた中で、ロの字プランはフリーダムさんだけだったんですね。有名な先生だと個人の感性を押し付けられるかもしれなかったけれど、フリーダムさんはチームで考えてくれて、こちらの意向を組んでくれるところが私にはよかった」とO様。

杉板型枠を使ったコンクリートの閉じた外観でプライバシーを守りながら、中には大きなパティオを作って採光を確保、そのパティオを通して、家族の気配をどこからでも感じられます。
1階にゲストルームを、2階に大きな吹き抜けのリビング、ダイニングと中庭を設け、さらに3階は家族それぞれのプライベートスペースを、と階層を付けたプランになっています。

温熱環境では、知り合いの方に勧められた輻射冷暖房機のPSを導入、夏はクールに、冬はウォームにと体に優しい環境になっています。

マンションではなかなか得られなかった「緑」がほしかったという奥様の希望をかなえ、パティオには大きな木も入りました。さらにリビングとダイニングの壁面緑化がモダンなインテリアに表情を加えます。
1階のゲストルームに隣接するパティオには植栽がガラスを通して鏡に映りこみ、リゾートに来たかのような広がりをみせています。

「PSを入れたので数台入れたエアコンはあまり可動しなくてよさそうです。壁面緑化の管理は業者さんがポットの交換に来てくれますが、特に週に1回、水やりのとき光合成をするようないい匂いがしてとても癒されますね。自分でポットを交換するのも楽しいですよ」とO様。
「土地を買うのに1年間、設計で1年間、建てるのに1年間。時間はかかりましたが作りごたえのある3年間でした。今はタクシーで自宅前に降り立ったときに、建物をゆっくりと眺めているのが最高の気分。留学中の上の子がまだ家を見ていないんです。もうすぐ帰ってくるのですが、どんな表情を見せてくれるか楽しみですね」とお話くださいました。