243-1 快適工場

「㈱洋菓子舗ウエスト日野工場/配送センター」 撮影:齋部功

写真は、3月にオープンした、㈱洋菓子舗ウエストの新しい工場です。
弊社は、2008年にウエストの「青山ガーデン」の施工をさせていただきました。(ShinClub104 )豊かな緑の庭を持つレトロな雰囲気の喫茶店では、上階の工場で作ったばかりの温かいデザートもお客様にご提供できるということでいつ訪れてもたくさんのお客様でにぎわっています。

もともと日野には木造で築55年の工場がありましたが、社長の依田龍一様によると、事業とともに手狭になり、近隣の一般の住宅をさらに2件買い取って、そこを従業員の食堂にしたり更衣室にしたりしてこれまで凌いでいらしたとのこと。大きな地震が来たらということもあり、耐震性に優れた建物に建替えたいというお気持ちが以前からあったそうです。

「うちの場合、工場といってもほとんど職人さんによる手作りの仕事です。大きな機械でつくっているものだったら、どこに移動してもかまわないでしょうが、新しく開発しているものも手作り。大事なのは職人さんです。職人さんが通える範囲の中で新しい土地が必要でした。でもそんな都合のいい場所はないだろうと言っていたのです」と依田様。
創業以来、「人工の香料・色素等をできるかぎり使用せず、材料本来の風味を生かすべく、ひとつひとつ職人の手作業による成形」をモットーとしてこられたウエストさん。職人さんの手仕事が、あのおいしいリーフパイやクッキー、ドライケーキを生み出していたのです。

ところが、日野市が行っている土地区画整理事業で、たまたま良い広さの土地が出て、建物の移転が可能となりました。これまで山梨の工場と日野工場の二つの工場で作ったものは、国立の配送センターに集積することになっていましたが、今回の土地は、その国立の配送センターとも近い場所です。
「ここだったら両方の人たちが通える。まさに運命的な出会い。ここ以外ないという土地でした。迷わず手に入れました」と依田様。
2,165㎡、工場としての広さはもちろん、配送センターも合併することになり、あちこちばらばらに借り上げていたスタッフの駐車場も敷地の向かい側に確保、さらに2台しかなかった直売店の駐車場も今度は目の前にある程度の台数が停められるようになりました。

オープンの日を迎えました。しかし予定されていたパーティなどは残念なことにコロナ感染症流行の気配が出て、依田社長は2月早々には中止を決定されました。食べ物を扱う会社が万一の事態を起こしてはとのことです。ゲストの方々を工場見学にご案内することにとどまりました。

その後、東京都が3月25日に外出自粛要請をし、4月7日、国は緊急事態宣言を発令。人々は外出を控え、会社も極力テレワークを行い、経済の流れは途絶えました。しかし5月25日、直近1週間の10万人当たりの新規感染者数が0.5人程度以下という目安を受けて、緊急事態宣言はやっと全域解除へと動き出しました。

感染症流行が言われ始めてほぼ4か月、まだ安全と手放しでは喜ぶことはできませんが、もはや、私たちは新しい暮らし方に進まないといけないフェーズに入っています。工場は働く人のために作業しやすい動線などいろいろな工夫が施されています。新たな環境での皆様のスタ-トを心よりお祝い申し上げます。

242-1 NY

「1511ビル」 Photo:Kazuki Watanave

写真は、昨年11月にお引渡しした法律事務所を併設した住宅です。神宮外苑の銀杏並木のすぐ近く、静かな小道に面しています。
建て主の桝實秀幸様は、このご自宅兼事務所を建築する際、30年来の友人である大塚彰宏氏と、アメリカで知り合った西本尚子氏のお二人に設計を依頼したいと考え、この度のコラボレーションが実現しました。
桝實様からの数少ないご要望に「とにかく頑丈なもの」とあったたため、大塚氏はRC造を選択、施工は江尻建築構造設計事務所の紹介で辰に依頼されました。
デザインについては、基本的にお任せ。ただし、ニューヨーク(以下 NY)に住まれたこともあり、NYという街が大好きな桝實様が、「NYを感じられるものを」というお題を出されました。そして最後に「雑誌に載るような素敵なデザインのものを」と一言付け加えられました。

さて、NYを感じられるとはどういう感じなのでしょうか?
古いビルを一棟丸ごと買ってリニューアルするのが、ニューヨーカーのスタイルと聞いたことはありますが、留学したことのある西本氏はどんなイメージを持っていたのでしょうか。
「留学で最初にヨーロッパに行きましたが、古い建物がとにかく多いという印象でした。一方で NY は特徴的なデザインを取り入れた新築の建物が年々数多く建築されているのですが、築50年を超える古い建物も多く、 古い建物はリノベーションしてかっこよく使っていて、ロフトという一つのスタイルになっています。最先端の国・都市に行きたいと思いNYを留学先に選びましたが、NYで街歩きをするうちに、新しいものと古いものが混ざりあっている街並みがとても気に入りました。桝實様の話をお伺いしていると、建築に限らず重厚感があり、落ち着いた趣の物がお好みのように感じました。」
大塚氏も、「新しいものではなく、すごく古いものでもなく、少し前の彫りが深くて味のあるいぶし銀のような建物。 それらが街並みを作っていて、それが NYらしさなんじゃないかな」と 振り返ります。
「1511ビル」もシンプルな縦長の開口部に外苑の緑の木々が映り込み、上品な雰囲気の落ち着いた色の外壁が法律事務所の信頼感、安定感を表しています。
ちなみにこれまでリノベーション物件を多く手掛けてきた大塚氏は当初、竣工写真をカメラマンに依頼したとき、新築ではなくリノベーション物件と勘違いされたといいます。
「でもそれは設計者としての狙い通りのイメージを持ってもらえたわけで、『シメた!』と思いました」と大塚氏。
新築の建物でありながら、あたかも元から建っていたかのように違和感がなく、確かに建物が自然な街並みを形作っています。
「単純なコピーではない、『東京でのNYらしさ』を実現したかった」と口を揃えられる大塚氏と西本氏。桝實様もその出来栄えにはご満足のようです。

そんなNYですが、この新型コロナウイルス感染症の世界的流行の中、都市封鎖という事態に見舞われ、人っ子一人いない風景がTVに映し出されていました。人口などの規模がNYとよく比較される東京も他人事ではありません。政府は4月7日、「緊急事態宣言」を出しました。全現場停止措置をとった会社もあり、弊社も、現場の衛生管理の徹底はもとより、建築資材の入荷など影響が出始めることは否めませんが、できるだけ皆様にご迷惑をかけることがないよう、一致団結して対応してまいります。

241-1 自粛の中で

「育てるタオル showroom―善光ビル」 撮影:尾形和美

写真は、今月ご紹介する表参道の「善光ビル」に事務所を移転された、株式会社英瑞のブランド、「育てるタオル」の「showroom」です。
2月8日にオープンされましたが、新型コロナウィルスの感染症流行に伴い、政府は大型イベントの自粛を求め、百貨店なども営業時間を切り上げるなど、各地で経済への影響が出始めています。
「せっかくのオープンでしたのに」とその後の様子が心配で、設計の佐藤尚巳先生に恐る恐る様子を伺ったところ、「それが大変な忙しさなんです」とおっしゃるのでびっくり。改めて英瑞の佐藤昌子社長に3月半ば過ぎにお話を伺いました。

これまでも全国の百貨店などに出店されている「育てるタオル」ですが、通常はオンラインでの注文が主な販売ルート。発端は3月6日にTBSテレビで放映された「ぴったんこカンカン」というバラエティ番組でした。同局の人気ドラマに出演する4人の俳優さんをゲストに迎え、「共演者が本気で選んだ一品プレゼント」というコーナーで、俳優さん自身が選んだプレゼント交換が行われ、若い女優さんが選んだのが「育てるタオル」だったのです。事前に「番組で使ってもいいですか」というTVスタッフからの連絡があり、ただOKを出しただけだったという佐藤社長。
「こちらからお願いしたというものではなかったんですよ」とのこと。

しかし、番組が終わると同時に問い合わせが殺到。オンラインからの注文への発送も追い付かず、翌日から百貨店にも、新しい「showroom」にもたくさんのお客様が訪れているそうです。
「番組で一緒にいらした出演者の中にも『私も知ってる』と言ってくださった方がいたみたいで・・・・」とテレビの効果に改めて驚かれたようです。
ほかにも昨年のXmas前に、有名な美容系ユーチューバーがオススメのギフトとして「育てるタオル」を選んでくれたことも影響しているとのこと。最近の若い人たち、特にSNSネイティブと言われる世代になると、テレビCMはおろか、動画サイトにしても、その発信に企業タイアップか、純粋に消費者サイドの発信かを見分けることができるようです。信頼できるユーチューバーの情報となると、即購入に結びつくのだそうです。「オンラインで1週間待ちだと待ちきれない、とお越しになられるお客様が多くなっています」と佐藤社長。

そして、もともと3月は送別会シーズン。タオルなどのギフトは1年で一番売れる時期。ですがもう一つ、感染予防のためのマスクの品薄も影響しています。手に入れられない人のために、インターネットでハンカチなどから自作のマスクの作り方をアップする人もおり、マスクの代替品としてのハンカチの需要が増えています。さらに手洗い対策でもニーズが生まれています。「空港やデパート、レストランなどのトイレに設置されているハンドドライヤー(ジェットタオル)は便利な器具ですが、使用停止にしているところも少なくないようで、そのこともハンカチの使用が増えている要因になっているようです」とのこと。
欧米人に比べると、日本人は子供の頃から外出時にはハンカチを持っていくように躾けられています。トイレでもハンカチを利用する人は多いですね。
「ハンカチは薄い布帛(ふはく、布)ハンカチというものと、タオルのハンカチがあります。以前は布帛のハンカチが多かったものですが、タオル地の扱いが多くなっています。今回は新型コロナウィルス感染症予防の影響で、さらに日本人の清潔志向が進んだのではないでしょうか」
3月末には、有名コメディアンが亡くなり、小池都知事が夜間の外出自粛を呼びかけるなど、都市封鎖の危機も噂されている新型コロナウィルスですが、1日も早く終息することを願ってやみません。

 

240-1 北青山、そして

「Arrows aoyama」 撮影:Kozo Takayama

港区北青山、そして隣接する渋谷区神宮前、いずれも弊社が施工させていただいたビルが数多く点在する地域です。
最近、いくつかの北青山の竣工物件の現場を確認するために訪れる機会がありました。歩いてみると同じ番地なのにかなり入り組んでいて、一方通行もあり、車が容易に通り抜けられる地域ではありません。しかしそのために街にはいつも多くの若い人たちが歩いています。総じておしゃれな男性が多い印象です。

先日も上の写真の「Arrows aoyama」のビルの前に来たところ、ちょうど3人組の男性がスマホで建物の写真をパチリ、と目の前で撮るではないですか。思わず「なんで撮影されたんですか」と声を掛けたら、「いや、かっこよかったから」とおっしゃるものですから、「うちが施工したんです。設計は表参道の『BOSS』が入っている『表参道けやきビル』と同じ設計者、團紀彦さんです」とうれしくなって話し込んでしまいました。

この区画には、R246沿いの「ao」ビルをプロデュースした浜野安弘さんのオフィス兼住宅「Omni Quarter」やエステティックの「YON-KA」ビル、ワイヤーシステムの荒川技研のショールーム「TIERS」や、アイスクリームのアントルメグラッセ「GLACIEL」などがあり、少し下ったところには「FRED PERRY SHOP TOKYO」や「小池精米店」、キャットストリートに連なるいくつかのビルがあります。表参道の反対側を合わせると、先月号でお伝えした「エスセナーリオ表参道」など原宿駅周辺まで、50件は下りません。弊社の会社案内「BROCHURE」では巻末に原宿・青山の建築散歩マップと建築紹介が付いています。

しかし、先月号で人と人の直のコミュニケ―ションの大切さに触れて、街歩きをお勧めしながらも、なんと今月は日本、いや世界中で人が集まるところには行かないように、という事態が起きています。

1月下旬からの新型コロナウィルス感染症の流行に伴い、ついに2月26日、政府は2週間のイベント開催自粛要請を発表しました。プロ野球やJリーグ、バスケット、バレー、ラグビーなどのスポーツイベントやタレントのコンサートはもとより、学校など教育現場にも及んでいます。

厄介なのは、ほとんどの人では症状が軽く、風邪を引いた程度なのに、高齢者や病気がある人が重篤になる危険性があるということです。今も何にも異常がないけれども保菌者が歩き回っていることが考えられるわけですから。
目に見えない恐怖には、「可視化が大事」と、検査体制や治療の新しい情報開示が求められて、なんとか流行を乗り切ろう、患者を救おうという機運が盛り上がっています。
建設現場でも、中国の武漢市を始めとした街の封鎖、春節以後の各工場の再稼働の遅れにより、生産現場の停止という事態が住設機器メーカーの製品出荷に影響を与えています。
情報をお伝えしようと、今月のフロントラインでは、住設機器の代理店の営業の方から直近のお話を伺いました。各メーカーとも「納期は未定」としか言いようがない状況です。

「清潔」という観念も改めて問われていると感じます。手を洗う、うがいをする、マスクは必要ということですが、以前「日本人は歯や口のケアが欧米人ほど徹底していない」と聞いたことがあります。ハグやキスが当たり前の習慣の彼らは自分の口の匂いなどには予想以上に気を使っているようです。日々の習慣を思い返してみるのもいい機会かもしれません。