244-03 東急番町ビル屋上リニューアル工事

2020年7月11日 at 5:18 PM

築9年のオフィスビルに新たなスペース

 

JR市ヶ谷駅から徒歩3分、番町の交差点角地に建つ大型オフィスビルの屋上リニューアル工事を施工しました。全面ガラス張り、ワンフロア366坪の大空間を擁し、ハイグレードな設備を持つオフィスには、IT関連の会社が多く入居されています。
リニューアル工事を企画された東急㈱ビル運営事業部運営第一グループ主事の田井栄次郎氏と、実施設計を担当された㈱OSKA & PARTNERS代表の大平貴臣氏にお話を伺いました。

―リニューアル工事というと、古いビルではよく聞きますが、築9年で実施されたきっかけは何でしたか?
田井:屋上に未利用スペースがあることは知っていたので、築10 年を迎えるにあたり、「サードプレイス的な共用スペースを作って新しい付加価値を生み出して、周辺ビルからの差別化を図ろう」という提案をしました。
場所を変えて(Change of place)、気分転換(Change of pace)して、発想の転換(Change of viewpoint)をできるような、創造的でアートな空間をという思いを込めて「PoC TERRACE(実証実験テラス)」と名付けました。ロゴの「→」はトライ&エラーを繰り返して欲しい―といった意味合いです。入居されているテナントの皆様の業種ともマッチすると考えました。

大平:改修エリアは、既存の目隠しスクリーンを中心に3つに区分されています。喫煙スペースや日よけの設置というご要望にお応えしながら壁面の多さを活かし、差別化を図るために全体としてアートギャラリーのようなテラスを提案させて頂きました。設計前の調査で、既存スクリーンは4m以上あり、かつ更に高さのある塔屋によって日影の時間が長く取れることがわかりました。そのため、日影時間やビューポイントなどからEV近くのエリア1に喫煙エリア(電子タバコのみ)、続く日影時間の一番長いエリア2にカウンターとソファセットのラウンジ空間、さらに見晴らしの良いエリア3に階段状のデッキを設けました。屋上の床には既存の配管が巡っていましたがEVホールからのエリア1には元々ダクトが上にしつらえてあったのでゲートに見えるようにしました。

―今回、設置し直したとばかり思っていました。
大平:もう少し低かったらできなかったですね。今回、計画にあたって難しかった点として2つあり、1つ目はバリアフリーの認定を維持するために、改修する屋上もまた段差を解消するなど規定を守らなければいけなかったこと。2つ目は、耐荷重の余力が決まっており、デッキを新たに敷けないエリアなどが混在した点でした。既存の構造については原設計会社にご協力いただき助かりました。

―北側に広がるエリア3からの景色は最高ですね。
大平:エリア3の配管は階段状デッキで隠し、フロア中央が高くなったことで、ビルをめぐる柵を高くすることなく、景色を遠くまで見渡せるという効果も得ることができました。近隣のマンションへのプライバシーや安全への配慮もあり、柵はかなり引いたところに設置しています。

田井:築10 年未満の新しい建物に投資をするという計画は挑戦でした。特に計画時は景気も上向きで空室がない状態でしたから。
一方で、これからのオフィスは、選ばれる要素が必要不可欠です。
入居されているテナントの皆様にとって魅力的でないと。例えば、採用活動においても魅力的な空間は大切です。面接に来た学生が、「このビルで働きたい!」とならないとダメなんです。企業を選ぶ指標は、年収だけでなく、働き方だったり、オフィス環境だったり、多様化しています。その気持ちに響くものを提供しなくてはならない。今回のコロナ騒ぎで「オフィスに来なくても仕事はできる」という考え方は少なからず広がっています。大きな落差を皆で経験し、時代は大転換を迎えています。それだけに魅力的なオフィス環境は益々大切になってくるでしょうね。
―本日はありがとうございました。

 

構造:S造
規模:地上11階 塔屋2階
用途:事務所・店舗
原設計:㈱東急設計コンサルタント
竣工:2011年9月

改修企画:田井栄次郎/東急㈱、舟橋菜々子/東急㈱
改修設計・監理:大平貴臣/㈱OSKA&PARTNERS
造園:吉良宗範/㈱日植ガーデン
設備:松本康宏/SBエンジニアリング㈱、石川龍/ソフトバンク㈱
改修工事引渡:2020年5月
施工担当:朴
撮影:Kenta Hasegawa (beforeはOSKA &PARTNERS 提供)
(田井様と大平様の写真は編集部撮影)