248-3 井原正揮・井原佳代/ihmrk一級建築士事務所

2020年11月13日 at 11:42 AM

「選択肢があることが豊かさにつながる」

今月は、「はつせ三田」の設計者、井原正揮氏、佳代氏ご夫妻に登壇いただきます。
—お二人はご出身がともに「シーラカンス(※)」ということでしたね。
※シーラカンスアンドアソシエイツ=CAt(C+A tokyo)とCAn(C+A nagoya)の2つの事務所を拠点に、国内外で建築を発表している設計事務所。小嶋一浩・赤松佳珠子(CAt)、伊藤恭行・宇野享(CAn)の4人によって設立された。

正揮:私は、東工大の大学院を出た後、CAnに入っていました。出身も愛知でしたから。当時、辰が施工していた「田園調布の家」の模型など作っていましたよ。
—そうでした、田園調布はCAnさんでしたね。有名な美容家のご自宅の跡地に建った大きな物件でした。名古屋と東京の事務所で、スタッフの往来は結構あったのですね。
正揮:4人のパートナーの下でやるプロジェクトもあり、私はそのスタッフとして結構仕事をしましたね。7年くらい在籍し、その後東京へ移って独立しました。

佳代:私はキングストンを出て、別の仕事もしていましたが、CAtに入ってプレスを担当しました。入社当時、東アジアの大学のプロジェクトなど、CAtでは海外の仕事も多く、英語でのコミュニケーションの必要性がありましたので。その後結婚して名古屋に移り、子供の生まれるタイミングで、私の実家のある東京に移ってきました。

—独立されてからは、住宅も多く手掛けていらして、全国展開されていますね。
正揮:海外からの依頼もありますね。アメリカに住むインドの方の住宅設計の依頼をいただいたり、日本で集合住宅を建てたいというフランス在住の方の仕事をしていますが、このコロナ禍でEUと日本の間の行き来が制限され、仕事が止まることがあります。何が問題かというと「押印」ができないことです。銀行の融資や住民登録。「実印登録が整っていないと先に進めない。押印が必要」というこの習慣は何とかならないものかと実感しています。

—政権が変わって、押印に対する考え方が変わる兆しは出てきましたが、当分続くのでしょう。このコロナ禍で、会社に行くのは「ハンコを押しに行くときだけ」という話も聞きます。
取材前、この近くで子連れのお母さんをたくさん見かけました。保育園もたくさんあるようですね。
佳代:そうですね。私たちも2歳と5歳の子供がいます。この建物の計画のスタート時には、コロナのことを意識しないで周辺環境になじませつつ、開放的な空間を目指したのですが、リモートワークが普通に認知された今、住宅の在り方に対する社会の見方は大きく変わってきたと感じます。「はつせ三田」は、セキュリティもプライベートも最初から開いていることで、安心であり、外からは中につながっていく感じ。以前手掛けた「ひな壇基礎の家」でも同じように光や風を取り込んでいます。
正揮:「鉤の手の立体交差」という建物では、見通せる面と見通せない面を平面的、立体的に混ぜた「鉤の手」のような構成で居場所によって裏表が入れ替わる路地のようなものを提案しました。
「〇DK」と表現される住居より、数字に入ってこない場所がいっぱいあること、居場所の選択ができる余裕が豊かさにつながると思います。その「シロ」が空間を豊かにすると思いますね。

―本日はありがとうございました。

 

井原 正揮(いはら まさき)

1980年 福岡県生まれ 愛知県育ち
2002年 名古屋大学工学部社会環境工学科卒業
2003-2006年 東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻
2007-2014年 シーラカンスアンドアソシエイツ
2015年 ihrmk 開設
2016年 株式会社ihrmk設立
2020年- 駒沢女子大学非常勤講師

井原 佳代(いはら かよ)

1979年 東京都生まれ
2002年 神奈川大学工学部建築学科卒業
2003-2004年 キングストン大学大学院美術・デザイン・建築学部
2006-2009年 シーラカンスアンドアソシエイツ
2016年 ihrmk 参加
2017年- 神奈川大学非常勤講師

 

受賞歴

2015年「風景を通す家」 Bronze A’Design Award 2015
2018年「ひな壇基礎の家」 リネアタラーラ オーダーキッチングランプリSHOW 2018 グランプリ
2020年「はつせ三田」 グッドデザイン賞