199-3 「魅力的な集合住宅をつくるには」 創立記念月間社内勉強会

2016年10月17日 at 2:48 PM

「タカギプランニングオフィス 髙木 栄一氏をお招きして」

今月は、創立記念月間の社内勉強会として、「タカギプランニングオフィス」の髙木栄一社長を講師にお迎えしました。発足当時からご用命いただいている髙木社長に、デザイナーズマンションの草分け的存在としての歩み、事例紹介など、スライドを上映いただきながら、お話しいただきました。

会社の創業は、今から約20年前の1997年。原宿の明治通りの交差点にあるビルの一室で、3人でスタートしました。それまで、私は不動産会社で10年間、サラリーマンをしていました。1990年代の集合住宅、特に賃貸は、郊外の大規模ニュータウンのファミリー向け住宅とか、企業の社宅、公営住宅などでほんとにかっこ悪く、ワンルームはというと、非常に狭小で、建築家が設計するということはあり得なかった時代でした。私はもっと美しく、機能的な集合住宅が求められていると感じ、「建築家の設計でかっこいい集合住宅を建てよう」と起業したわけです。すると、マスコミがどんどん取り上げてくれて、一般の方にもそのスタイルが認知されるようになっていきました。
我々は、作るだけでなく、管理や賃借人の斡旋まで行います。特色として、企画から管理、運営までやらせていただく。そして、基本的に建築家の設計によるものを建てるということです。人気が出始めると方々から問い合わせが来ました。そんな中、私はデベロッパーの投機的な事業やリート物件は嫌いでずっと断ってきました。施工会社は、辰さんや他に規模等に応じて2、3社の会社にお願いしています。
お客さんはと言えば、地主の方が相続対策でやることが多く、金融機関からの借り入れを行うことがほとんどです。金融関係の知識も欠かせません。そして工事するとなると、近隣対応等のため法律関係も詳しくないといけません。入居後の管理では、最近は、ご存知の通り「民泊」というのが流行っていて、住居使用とウソをついてうちの会社の物件を勝手に民泊に利用する人たちがいるんです。狙われていますね、かっこいい部屋が多いから。でも民泊用HPにアップして宿泊者を募集するものだから、調べるとすぐにうちの物件だとわかっちゃう。何人もの外国人が昼夜問わず出入りし、泊まって大騒ぎすれば、それは他の入居者や近隣の方にとっては迷惑ですよ。

事例を少しずつご紹介します。辰の施工物件の中で、「TPOレコメンデーション」という建築家の指名コンペで設計者を選定したのが王子の「blocco」(2006年竣工・写真⑤)です。設計は長田直之さん。第5回目だったでしょうか。(1999年から6回行われた)プレゼンテーションを「リビングデザインセンターOZONE」に展示して、審査員には、編集者の鈴木紀慶氏やブルータス編集長の西田善太氏などにお願いして、建築関係の先生にはあえて依頼しませんでした。レコメには、今ではプリツカー賞や、建築学会賞を受賞されている先生方が、快く参加してくれました。施工費は今の半分くらい(笑)。「blocco」は十字プランが魅力的で、横方向、縦方向のレイアウトの仕方や、風の通りが良くて面白かったですね。ただ外壁量が多いので、施工的には大変でした。視界を楽しめるのもポイントでした。長田さんは造形がすごく上手ですね。
1990年、創業よりも前に池尻大橋で作った最初のマンション、「RADIAN」(1990年・写真①)は、地形に合わせた放射型の建物で、北山恒さん、谷内田章夫さん、木下道郎さんの3人の共同事務所「WORKSHOP」の設計です。今でも入居者はコンスタンスに入っています。ここからコンクリートの打ち放しにこだわって建てるようになりました。メンテナンスフリーという点がいい。お客さんであるオーナーの経費をなるべくかけないようにした仕様です。この形式がデザイナーズマンションの発祥だと考えています。
「clover house」(2010年・写真②)は北山恒さん設計で、三軒茶屋の「明薬通り」という電柱が埋設された通りに建てられました。きれいなファサードで、オーナーは大変喜んでいます。内装は北山さんらしいハードな魅力の建物です。他にも北山さんの設計では辰さんの施工でいくつか建てていますね。
高円寺で連続して5棟建てさせていただいた地主さんの物件がありました。借地が借地人さんから戻るたびに集合住宅を建てていき、「魅力的な町を作っていこう」というテーマで行った開発です。最初、「ALVA」を谷内田章夫さんに担当していただき、第2弾もオーナーの希望で谷内田さんに設計をお願いして「HUTCH」(2011年・写真⑥)という集合住宅をつくりました。細長い敷地で、入口に集会室を作って、乾燥機や自動販売機、本を置いてライブラリーにしました。長屋的な住宅になっています。第3弾は設計が小川晋一さん、施工会社はこれだけ辰以外の会社でした。第4弾は荒木毅さん設計の「LOP」(2013年・写真③)で4戸しかない建物でしたが、板間がテーマ。大和重工の「五右衛門風呂」という鋳物の風呂を入れました。(写真④)以前、京都の有名な旅館に行った時、中庭に面した内風呂が狭いのにとても良くて、寸法を測って今度うちのマンションでやってやろうと思っていたので。第5弾は「LINO」(2014年・写真⑦)、設計は先ほど「blocco」でも担当された長田さんです。かっこいいですね。(以下、略)
私は昔から建物を企画するときに、計画のヒントを洋風の建物ではなく、実は日本の古き良き建物に求めています。日本の昔の家屋には、風や光の入り方など参考になるものがたくさんあります。マンションの室内に土間的空間を入れたくなるのもその影響。今後とも、良い建物を作っていきたいですね。