204-3 腰越耕太/腰越耕太建築設計事務所

2017年3月16日 at 10:35 PM

高密化を避け、街並にゆとりを与える

今月は「lani ebisu」の設計者、腰越耕太氏をお迎えしました。
―新潟県のお生まれですね。
腰越:「コシヒカリ」で有名な米どころです。
―建築には子供時代から興味がおありでしたか。
腰越:なんとなく影響があったと思うのは、叔父が美術の仕事をしていて、盆正月には家に来て作品を作ってくれたり、絵も描いてくれたりしてくれたことですかね。僕も絵を描いたり、何か作ることは好きでした。親に買ってもらった大量のレゴで、家ではなく飛行機を作って一日中遊んでいましたね。
―HPを拝見すると、個人住宅を多く手掛けられていますね。
腰越:店舗や老人福祉施設の経験もありますが、数が多いのは個人住宅です。木造がほとんどです。コンクリート系の工事はあまり経験がなかったのですが、これまでは良しとしていたところを、今回、辰の現場の方に「将来こうなるので危ないですよ」と指摘してもらったのはよかったですね。
―恵比寿の、この事務所兼ご自宅は、コンクリート打ち放しですね。
腰越:2015年完成しました。建蔽率60%、容積率200%の土地ですが、小さく作って、本当によかったと思っています。通常もしこの敷地に自分が設計を頼まれれば、最大限の建蔽率を利用して敷地ぎりぎりに建てるところです。でも土地取得時、隣の土地も空いていて、建つことを想定すると、家が隣の外壁に囲まれてしまうのが予想できました。僕は息苦しい家がとにかく嫌なんです。それで建蔽率を30%しか使わないで、建物自体は小さくなりますが、7割地面を残しました。そうすることで3か所の三角形の庭に植樹ができて、緑に囲まれた明るい空間ができました。とても心地よいですね。開口部が四方にあり、光と風が入ります。お隣と真正面に向き合うこともなく、道路からも引きを確保しています。ワンルームが3層重なるようなプランで、移動は大変ですが、見える景色も階ごとに変わって楽しいです。
恵比寿周辺は小さな土地も多いです。建蔽率を絞り、その代わり高さ制限を緩和することで、密集して息苦しい街並みを避けることができるんじゃないかと感じます。都心の多くの住宅密集地では普通ですが、敷地いっぱいに建てると、結局、死に地が生まれます。猫の通り道とか、室外機を置くだけの路地くらいで、開口部も結局機能しない。
―高さを緩和するのと規制としてはどちらが先だと効果的でしょう。
腰越:建蔽率を絞る方が効果が出てきやすいでしょう。それから、土を触るという癒し効果は意外にあるものですね。地植えは楽しいですよ。「lani ebisu」でも、作りたかったのは抜け感。光と風をいっぱいに感じたかったですね。
―大倉山プロジェクトという作品は、素材が面白そうですね。
腰越:海辺のファクトリーがテーマです。海が好きなオーナーさんは高齢のご両親と同居されていて、今後車いすも想定されるので、段差なく外からそのまま入ってこられるような床を採用しました。主に店舗で使われる、スプーンカットのパイン材ですが、足ざわりもよく、まだら模様が削れてくるのが面白いです。他にも海の家のような、簡素なイメージを盛り込んだ素材にこだわっています。天井に一部ガルバリウムを貼ってみたり、ベニヤを壁に貼って仕上げたり。反対側の棟はアパートとして、2人の息子さんの相続対策としています。
―旅行が趣味とのことで、ブラジルがお好きとありましたが…。
腰越:新婚旅行で行ったんです。僕も妻も秘境みたいなところが好きでして、普通の旅よりは冒険がしたいんですね。
―それはすごいですね。
腰越:せっかく長い時間をかけるなら、めったに行けないところへ行こうと、南米、アルゼンチンのベリトモレノの氷河から、ブラジルへ。ブラジル人はヨーロッパにないアットホームな雰囲気がいいですね。それにアルゼンチンで肉ばかり食べていましたが、ブラジルに入ってからは料理がおいしかった。だんだん北上して、レンソイス・マラニャンセス国立公園まで行き、ペルー経由で帰国しました。それ以降、行きにくい国ばかり。特に妻は独身時代から旅行が趣味で、結婚が遅かったし、ヨーロッパなど行き尽くしていて、誰も行かないようなところに行きたがります。インド、モスクワ、エルサレム、死海、今はもう行けなくなったところも多いですね。僕はたまには、建築旅行もしたいと思っています。フランスとか。イタリアは1回行きましたが、また行きたいですね。普段休みを取れないので、年に1度はまとまって休むようにしています。
―外国に行くと、どんな面がいいと思いますか。
腰越:作る建築に直結はしませんが、新しいものに触れるというのは、着想の源になったり、良い効果があると思います。
―福島の方でもお仕事をされています。都心でのお仕事の一方で、やはり地方で建築コストをかけられる仕事はいいですね。
腰越:都心は土地が高すぎますからね。ご相談を受けている中には、広大な土地でどこに建物を配置しようというような案件もあります。今は都心と地方と半々ですね。僕は新潟の出身で、地方ののんびりとした雰囲気が合うのかもしれません。妻が長野県出身なので、ゆくゆくはどちらかの実家の方に帰るかもしれません。
―地方にも拠点をお持ちの方を羨ましく思います。本日はどうもありがとうございました。
腰越耕太
1976年 新潟県南魚沼市生まれ
2006年 神奈川大学大学院修了
2009年 設計事務所勤務を経て独立
2010年 株式会社腰越耕太建築設計事務所 設立
趣味・旅行、特に気に入っている国はブラジルとイスラエル。アフリカ、中米を旅するのが夢。