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40-2 m-house(レントハウス茂手木)

「m-house(レントハウス茂手木)」は、基準法上は「共同住宅」ですが、「長屋」の形式で共用スペースを排除し、収益性を高める設計を行いました。「m-house」の設計者、鈴木孝紀氏(ハル建築研究所)にお話をうかがいました。
鈴木「まず40㎡以上の住戸が8戸必要というオーナーの要望がありました。また第1種低層住居専用地域のため、日影規制に掛からないよう建物の高さを7m以下で計画し、また北側斜線もクリアしなくてはならないという制限がありました。そこで容積の地下緩和を利用して必要床面積を確保し、共用部分を最小にして、賃貸面積を最大限に確保しました。」
―中に8戸もの部屋が納まっているとは思えない、ごく普通の建物なのですが、傾斜地を利用した重層構造の部屋は、それぞれいろいろな表情を見せています。
鈴木「南に3mほど下がっているでしょう。地下1階、地上2階のRC造でいけると思いましたね。費用も工期も無いので擁壁を作ると大変です。それよりも建築そのものをコンクリートの塊と考えれば十分対応できます。地形を生かし、快適でのんびりした空間を考えました。いかにも共同住宅という顔つきの住宅よりも、一軒家のように見えて、各戸の住人がそれぞれのアクセス方法で部屋に入っていく感じがほしかった。」
設計段階で開口部の組み合わせをパズルのように楽しみました。敷地が高台なので、各方角のいろいろな景色をどう取り込むか工夫し、更に外から見たときは、奇抜なデザインはこの閑静な住宅街には適切ではないと配慮しました。
このような四角い箱に重層で部屋を入れていくには、構造的な制約はあります。しかし、内部から外がどう見えるのか、変化がある方が住宅として面白いですから、そのあたりをだいぶ意識しました。

(鈴木孝紀氏談  2物件のトークより、再構成しました)

構造:RC造
規模:地上2階、地下1階
用途:共同住宅
設計・監理:鈴木孝紀
竣工:2003年6月
撮影:斎部功

 

m-house(レントハウス茂手木)」Plan。①北面全景。隣地の豊富な緑が大きめな開口部を通して室内から楽しめる。②東面全景。通行人の視線を遮るため、目線の合う2階の窓は小さめに。1階中央に全ての住戸のメーターボックスを集めた。ガルバリウム鋼板の外断熱を施している。③西側夜景④G-1F。左の階段を下りると、個室とバスルーム。地階から裏庭に出られる。⑤地階F-typeへの階段。植栽の雰囲気と打ち放しの開放感が面白い。⑥地階B-typeのエントランス。1階の半分を吹き抜けのようにダイナミックに利用している。
(撮影:斎部功)

39-2 二軒家アパートメント

RC 造5階建ての建物は11戸のうち10戸が13坪前後の賃貸住宅です。 全体は、バルコニーが付いているA棟、バルコニーがないB棟、別の 入口より階段からアクセスするC棟と、3つのユニットからなっていま す。それぞれデッキテラスやバルコニーなどを経由して中に入る と、そこに玄関はなく、いきなり白いタイルの領域。それは昔の日本 でいえば、「濡れ縁」(雨戸の外に張り出した縁側)のようなあいまい な領域です。そこに、キッチンや、バスルームなど水廻りの施設を配 し、奥のフローリング部分とガラスの引戸で仕切ることにより、狭い 空間を広く見せています。

このあいまいな領域をどのように利用するかは、住まう人 の気分次第。バスルームもキッチンも透明だと広く感じる一方、同 居人の視線を遮れないので心理的に不安かもしれません。でもあ えて、賃貸で個人、あるいはカップルで住むのなら、この機能にわ ざわざスペースを広く取る必要はないでしょう。外部からの視線に 対しては、黒に近い暗褐色の木製ルーバーを目隠しにしました。タ イルを白にしたのも成功したと思います。テラコッタだと違った感じ だったでしょうが、新しい居住者がどのように使うのか、自分の実験 に付き合っていただく感じで楽しみです。「二軒家アパートメント」という名前にも、こだわりました。都心は今、どんどん住居表示が変わっています。二 軒家とは、昔この周辺に、地主さんが二軒しかなかったという名残 だそうです。今でも町内会の名前として、その名が残されています。
日本人は、元来生活空間の使 い方がうまいはずです。自然と うまく付き合って、風通しの良い 空間に住んでいました。それ が、都市化、近代化の波をうけ て、否応なしに西洋化させら れ、妙にセキュリティを意識し た空間ばかりになってしまっ た。でも欧米人は靴をはいて室内に入るけれど、その点は受け入 れられていないでしょう。ダイニング、リビングなどの機能的な空間 を増やすばかりだったけれど、追随するばかりではないですね。 日本のアパートメントと西洋のアパートメントはそもそも広さが違い ます。空間の知恵を取り戻す工夫を、建築家側から手助けしてい きたいですね。

木下道郎氏 談

場所:渋谷区
構造:RC造、地上5階
用途:共同住宅
設計:木下道郎/ワークショップ
構造:構造計画プラスワン
竣工:2003年5月
撮影:斎部功(木下氏は編集部)

37-2 Villa Porta Bella

2世帯住宅です。1階を2世帯にわけ、南庭を通して外から行き来することにしました。内壁に穴を開けることまではしたくなかったそうです。庭に面した、ダイニング・キッチンには、有名メーカーのシステムキッチンも検討しましたが、作り付けのものを家具屋さんに注文し、出来栄えにも満足されています。

特に、床は掃除がしやすいように、ビニール製のクッションフロアにしました。絵の制作作業もあり、お孫さんもまだ小さいため、神経質になることがないような素材に決めました。
「大勢の人が集まる場所にしたい」という社交的な奥様は、ここに長いテーブルを据える予定です。
ダイニングの脇の和室は、少し高くなっており、掘りごたつが設けられています。床は畳ではなく、スモークコルクを貼り、しまいこんでいた和ダンスがここには納められます。この和室の障子も、本物ではありません。和紙ではなく、メンテナンス不要のアクリル製にし、押入れにも同じものを使いました。和室の脇の階段を下りると、絵の収納室とは別にもうひとつ地下室があります。
ここは、大勢の来客を迎えたときの、多目的ルームとなります。オーディオ・テレビが備えられることになるそうです。
こうして、価格の高い本物と普及品を上手に選ぶ足し算と引き算を繰り返しながら、趣味やスタイルを重視した、楽しい家作りが出来ました。

 

29-3 岡本の家

竣工当時は、設計者であり建て主でもある、中村晃氏に取材をしていなかったため、SHINCLUB105号p4(メンテ魂第13回)で改めて建物について伺いました。

105号メンテ魂より

世田谷区の閑静な住宅街の斜面に建つ「岡本の家」は、自然に囲まれ、シンプルで真っ白な外観が美しい住宅です。建て主の中村氏 がご自身で設計を手がけられています。

竣工当初は外構工事を残されていましたが、少しずつ手を加えられて、1 年半ほど前にほぼ完成しました。同じ斜面の隣地にも家が 建ち、落ち着いた環境が確保されています。

中村氏と奥様にお話を伺いました。

中村 : 話はこの家を建てるときに遡りますが、 実はほかの土地にほぼ建 設を決めていたのです。
が、 この場所を見つけてほとんど一目ぼれ。 遠くに富士山を望める景色の良さ、 緑に囲まれた静かな環境で、 斜面 ということにもかえって設計のやりがいを感じました。
いったんは挫折しか けたのですが、 辰さんに調整いただき、 実際に建てることができました。
奥様 : これまで手を入れたのは、 応接間の床のカーペットを自分たちで 張り替えたこと、 1 階のリビングから、 庭にデッキを設け、 入口にゲート をつけてもらったことでしょうか。

中村 : 今回わかったのは、 「建物は竣工時に全部できてなくてもいい。 逆に、 少しずつ見直しながら、 アイディアをひねって作りこんでいくこと でいいものができる」 ということでした。
完成したら、 夢が終わってしまう でしょう。 未完成だった外構は、 少しずつ手を入れることで次々に新た なアイディアが沸くという感じで、 ほぼ 1 年半前に完成しました。
それを 機会に独立し、 自宅で設計事務所を始めることにしました。

この家にクライアントに来てもらって打ち合わせをすると、 100% 皆さん 納得してくださって成約してもらえます。 特に「斜面に家を建てるお客様」 は、 土地が安く手に入った分、 どうすれば建つのか、 工事にどのくら いかかるのかと不安ですから、 実際にプロセスをわかっていただくため に、 モデルルームとして非常に役に立っています。
ただ、その後法改 正があって、 この建物のような同じフロアに混構造のある建物が確認申 請を通すには、 昔より審査に手間取ることになるでしょう。
ここ数年で鉄 骨も値上がりしましたからね。 あの頃、 施工に踏み切ってラッキーだったと思いますね。

―ガラスの開口部側が鉄骨造で、 斜面の壁側が RC 造ということで、 開放的な空間を生み出しているのですね。
中村 : 隣接する南側の公園の斜面は、 うっそうとしていましたが、 竹 以外の雑木を区に伐採してもらったら、 予想以上に見通しがよくなっ て、新たな景色を楽しんでいます。
それから、近隣にお住まいの方々 には非常に評判がいいです。
高い建物にならないように、斜面に沿っ て建物の 3 階をエントランスにすることで、 周辺の既存の建物の景観 を損ねないように気を使いました。

一方で自然に囲まれているので、この 6 年間のメンテナンスというと、 なんといっても、 設備の故障が大きかったですね。

もうこれはしょうが ないことなんですが、 給湯器が不調なので調べてもらうと、 ガス管に アリの死骸がびっしり詰まっていたり、 エアコンの室外機は鳥が食べ 物を取っておく場所になったり。 鳥には自分の食べ残しを溜める習 性があるそうです。設備業者は「こんなことは都内ではめったにない」 とあきれていました。

奥様:隣の家が建つまでは、 毎日タヌキの親子が通っていましたね。 上のエントランスに池を作って、 水を張ったらカルガモが入ってきた んですよ (笑)

―鳥の鳴き声が聞えて、 ほんとに別荘に来たようです。

中村 : 下の庭はこれからの楽しみにとってあります。

―本日は、 どうもありがとうございました。

 

所在地:世田谷区
構造:RC造
規模:地上3階
用途:専用住宅
設計・監理:中村晃/アーキプラス
施工担当:夏井・内海
竣工2002年8月
撮影:編集部