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237-1 社長の邸宅

「O邸」 撮影:ナカサアンドパートナーズ

「O邸」 撮影:ナカサアンドパートナーズ

 

今月ご紹介するのは、都内の閑静な住宅街に竣工したRC造+S造のハイブリット構造の邸宅です。建て主O様に小春日和の土曜日、ご自宅のリビングでお話を伺いました。

O様は、もともと西新宿のマンションにご家族4人でお住まいでしたが、会社経営者でいらっしゃることからご自宅にお客様を迎える機会も多く、ご家族が気兼ねなくくつろげる大きなリビングをご所望でした。ゲストがいらしても、お子様たちや奥様が自分たちのお友達とくつろげるスペースが欲しかったとのことです。

矩形に近い敷地は渋谷に近く、O様の希望に合ったものでした。このあたりでずっと探していたO様が、不動産会社だけでなく銀行にも相談した所、ちょうどいい物件が入ってきたということで、すぐにご連絡をいただきご縁があったものでした。その土地に建築したい建物が建てられるのか、銀行への融資枠も確認するために、偶然インターネットのサイトから、今回の設計を担当した「フリーダムアーキテクツデザイン」を見つけ、訪れました。

年間約400棟の注文住宅の設計を行うフリーダムでは、お客様に住まいを具体的にイメージいただくために、無料で設計プランのご提案をしています。銀行に向けた図面を1週間で描くよう依頼されたO様に対して、フリーダムはスピーディに提案を提出。融資枠が決定し、無事土地を購入されたO様。改めて設計者の検討を重ねられた結果、やはり最初に図面を引いてくれたフリーダムの案が一番ご自身の気持ちを忠実に受け止めてくれた、と正式に設計を契約されました。

「いろいろな事務所から提案いただいた中で、ロの字プランはフリーダムさんだけだったんですね。有名な先生だと個人の感性を押し付けられるかもしれなかったけれど、フリーダムさんはチームで考えてくれて、こちらの意向を組んでくれるところが私にはよかった」とO様。

杉板型枠を使ったコンクリートの閉じた外観でプライバシーを守りながら、中には大きなパティオを作って採光を確保、そのパティオを通して、家族の気配をどこからでも感じられます。
1階にゲストルームを、2階に大きな吹き抜けのリビング、ダイニングと中庭を設け、さらに3階は家族それぞれのプライベートスペースを、と階層を付けたプランになっています。

温熱環境では、知り合いの方に勧められた輻射冷暖房機のPSを導入、夏はクールに、冬はウォームにと体に優しい環境になっています。

マンションではなかなか得られなかった「緑」がほしかったという奥様の希望をかなえ、パティオには大きな木も入りました。さらにリビングとダイニングの壁面緑化がモダンなインテリアに表情を加えます。
1階のゲストルームに隣接するパティオには植栽がガラスを通して鏡に映りこみ、リゾートに来たかのような広がりをみせています。

「PSを入れたので数台入れたエアコンはあまり可動しなくてよさそうです。壁面緑化の管理は業者さんがポットの交換に来てくれますが、特に週に1回、水やりのとき光合成をするようないい匂いがしてとても癒されますね。自分でポットを交換するのも楽しいですよ」とO様。
「土地を買うのに1年間、設計で1年間、建てるのに1年間。時間はかかりましたが作りごたえのある3年間でした。今はタクシーで自宅前に降り立ったときに、建物をゆっくりと眺めているのが最高の気分。留学中の上の子がまだ家を見ていないんです。もうすぐ帰ってくるのですが、どんな表情を見せてくれるか楽しみですね」とお話くださいました。

237-2 O 邸

VRによるスピーディな提案で建て主の希望を実現

敷地は閑静な住宅街に位置し、少し高台の、ほとんど矩形に近い土地である。銀行融資用の図面を1週間で描いてほしいというご希望ではあったが、建て主O様は明快なコンセプトをお持ちであった。周囲からの視線を排除し、杉板型枠を使った打ち放しコンクリート、内部には大きなパティオを設ける。1階から3階に行くに従い、パブリック、セミプライベート、プライベートとし、大きなリビングを中心に家族がつながる伸びやかな空間、などである。

設計方針を決める上で大きな力となったのが、3D でプレゼンテーションを行っていた「BIM室」の提案であった。当時プレゼンテーションの力となりつつあったVR(仮想現実空間)も導入し、これが2017年7月リリースとなった、建物価格(設計監理費用含)が1億円以上の富裕層に向けた家づくりプロジェクト「社長の邸宅」シリーズにつながっている。

「社長の邸宅」では世界のVIPに愛用されているグローバルブラントとコラボして、家具をはじめ、音響設備、フィットネス機器など豊富なジャンルのアイテムを取り揃え、これら全ての製品モデルを3次元の住宅モデルに取り込むことも可能にしている。打合せ段階から実在する家具などを配置した空間の仕上がりをリアルにご確認いただくことができる。

今回は2階のリビングを吹き抜けにするか否かで、2つの違いをVRでご覧いただき、吹き抜けにしないと光が確保できないことを実感していただいた。また、パティオの壁にコンクリートの壁が被らないようにというご要望に対して、2,3階部分はRC造と鉄骨造のハイブリッド構造とした。

仕上げなど一部変更があったが、ほぼ当初の設計の通りに施工を進めることができ、オープンな内部空間に設備ルートをどう確保するか、などRC造の施工経験が豊富な辰との協働が有意義な機会となった。

(フリーダムアーキテクツデザイン株式会社関東5プランニング部
冨田和義氏+上田庸介氏 談)
所在地:都内
構造:RC造+S造
規模:地上3階
用途:専用住宅
設計・監理:冨田和義・上田庸介
/フリーダムアーキテクツデザイン
施工担当:郷
竣工:2019年7月
撮影:ナカサアンドパートナーズ

 

237-3 フリーダムアーキテクツデザイン

培ったノウハウをオープンにして業界の活性化を

今月は、O邸の設計を担当された「フリーダムアーキテクツデザイン」のご紹介です。神戸で創業され、今年、創立25年目を迎えます。17スタジオと3つのLabで、全国展開されて、注文住宅物件数は年間約400棟を数えます。プロモーションを担当されている方に、会社についてのお話を伺いました。

1995年、阪神淡路大震災が発生。当時、鐘撞(かねつく)正也社長は24歳。ITと建築の専門学校を卒業後、安藤忠雄のような建築家を夢見て設計事務所で働き始めたところでした。学生時代に仲良かった工務店2代目の友人たちから、プラン作成の仕事が舞い込み、神戸のために自分も何かしたいと鐘撞氏は1か月の間に50プランを描き、建築事務所フリーダムを設立します。しかしすぐに経営が順調にいくわけではなく、工務店や大手設計事務所の下請、確認申請を行いながら、会社を軌道に乗せるために、新聞折込、DM、見学会、と営業に創意工夫を重ねられていきました。2001年、名称を「フリーダム建築企画」としました。

2004年頃には、徐々に自社の設計提案が行えるようになり、物件が専門雑誌にも掲載されて関東でもニーズが出てきたことから、土曜日に上京してお客様と打ち合わせを行い、日曜に図面を描き、月曜に提出するというスピードでお客様の要望に応え、東京事務所を開設。1年で関西事務所を追い抜くほどの実績をあげました。

2007年に自由が丘スタジオ設立、2010年には初めての書籍「身の丈コストでデザイン住宅を建てる。」を幻冬舎から出版。
2011年には千葉事務所を開設、名古屋にも拡大しました。
2012年に横浜、新宿に、そして初めて東海エリアの岡崎に進出します。2冊目の著書「世界でたったひとつの間取りができるまで」を出版。

2013年、九州、福岡に開設。この年から「みんとち事業」=土地事業提案を始めました。世の中、土地を持っていない方が大多数で、それまで土地を所有されていないお客様とは不動産会社さんと組むことで仕事をしてきたわけですが、自力でマーケティングをし、土地事業を行うことで成約数は大幅に伸びました。大きなターニングポイントとなりました。

2014年、名称を「フリーダムアーキテクツデザイン」と変更、東京を本社としました。難波事務所ができて、大阪4拠点が完成しました。

そして「建築知識研究所」というサイトを(https://freedomlab.jp/)立ち上げました。情報をオープンにして建築業界の活性化に貢献したいという想いから始めました。例えば1棟建てたら新聞広告を出して見学会を開く。実績がたまってきたところで、そのサイトに「事例紹介」を入れ、そこに建設費の金額も入れる。当時の住宅業界では前例のないことでした。お客様に対し「注文住宅の敷居を下げた」といえるでしょう。

オープンにしたノウハウは(CADデータなど)お客様に対してだけではなく業界全体へのメッセージでもあります。注文住宅は一戸、一戸違うノウハウがあり、それは自社だけにクローズドさせがちです。でも社長には自分たちが培ったノウハウを業界全体に発信し、利用してもらうことで業界全体を活性化していきたいという願いがあるのです。

それは、リクルートにも影響しています。うちにはいわゆるハウスメーカーのような営業マンはおりません。ほとんどが設計者です。フリーダムでは設計者が直接お客様と打ち合わせをしてお客様の意見を聞く。ノートに書いてあってもお客様の言葉の温度差を直接的に感じ取る。設計者が活躍できる場を作っているのです。

「ノウハウはいくら公開しても構わない。技術を語ってどういう提案をするかがフリーダムの持ち味」と社長は言います。そういう自信があるのです。もともと図面を描いていた人がトップというのは重要な意味を持ちます。現場の設計をしている人の問題がわかるのです。

さらに、お客様が希望する家に対してのイメージが大事なので、具体的な画像をWEB上にご自身で置くことのできる「家チェキ」というシステムもご用意しました。
2016年にはリノベーション事業の「REDESIGN」を始めました。社長の3冊目の著書「夢を叶えるデザイン住宅の建て方」を出版しました。

2017年、いよいよVRを導入。この年は業界でも「VR元年」と言われています。2015年くらいから構想がありました。VRにつながるBIMは通常大型施設に使われていますが、戸建てにも利用できるかもしれないと、早期から導入を始めました。これまでBIMで起こした図面と実施断面図、平面図で若干ずれる、チェックに時間がかかるという課題がありましたが、Revidモデルで同じデータから平面図、立面図がつくれるようにと検証を重ねていきました。さらに確認申請をしている民間組織とVRで電子確認申請を行うフローの構築も行いました。

特に「社長の邸宅」クラスの富裕層の方は、情報感度が高く、コスト意識が高いので、VRに対しての感じ方、納得具合が違います。欧米では、モノづくりの現場でVRを使うことがすでに主流となっており、家具などのデータもすべて埋め込めることができるため、プランに対して選択したものの素材、面積だけでなく、総額を事前に出せるなど非常に効率がいいのです。この事前にわかるというワークフローが、実は家づくりのリスク回避にBIMがメリットとなる部分です。変更コストがいつの時点で後戻りできないのか、それぞれのパーツで先にわかることでお客様のリスク、設計事務所のリスク、施工会社のリスクを総合的に判断できる。ここを考えているかいないかが非常に大きいのです。

施工会社さんも業界としてBIMが普及してくるといいですね。まだ広がりはわずかですが、モデルケースを作ればノウハウをお伝えできると弊社も「アーキアンドテクノロジー」という施工会社を作りました。施工会社さんの視点でお伝えできる情報が徐々にたまってきて話ができるようになってきています。間違いなくいい方向になると確信しています。

フリーダムアーキテクツデザイン株式会社本社
中央区日本橋久松町10-6FT日本橋久松町ビル6F
電話:03-5651-1791
www.freedom.co.jp/

 

237-4 「CONSTRUCTION & BUILDING: 20 YEARS 建築屋辰 20年の歩み」を発行しました。

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2019年10月1日、創立20周年を無事迎え、これまで弊社が施工してきた建物の記録として「CONSTRUCTION & BUILDING:20 YEARS 建築屋辰 20年の歩み」を発行いたしました。
20年間に施工させていただいた建物を5年ごと4期に分けて掲載しています。これらは、この20年弊社ニュースレター「SHINCLUB」で竣工ごとにご紹介のお許しを得たものです。各物件の内容についてそれぞれ詳しくご紹介したいのは山々でしたが、限られた紙面のため、各期で1名の設計の先生にご寄稿いただくに留め、ほとんどすべての建物について外観写真と概要の記述のみにさせていただいております。
現在、社長の謝意とともに、建て主様、設計事務所様、関係先の皆様に順次お送りするか、担当者が持参しております。
お目に留まりましたら、どうぞ都心の個性的なデザインの建物の数々をお楽しみいただくと同時に、
巻末の、2018年12月をもって退いた森村和男前社長のこの20年を振り返った「感謝の言葉」をご一読いただきたく存じます。

発行:株式会社辰 A4判変型 128頁
発行日:2019年10月1日(非売品)
企画・編集:岩本健寿 松村典子
レイアウト:山田康祐(ヤマダジムショ)
企画協力:本條強(オフィスダイナマイト)
印刷:堀内印刷所