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264-1 時代の流れと地域によって求められるもの

写真は、昨年11 月に竣工いたしました「ESCENARIO ICHIGAYA︓エスセナーリオ市ヶ谷」です。

こちらは、多くの鉄道路線が乗り入れる「市ヶ谷」駅のほど近く、交通量の多い外堀通りより「左内坂」を登った高台に位置しています。当設計者であるワークショップ木下道郎氏とは、SHINCLUB1号でご紹介させていただきました「BALCON」をはじめ、弊社では数多くのお仕事をさせていただいております。
また、SHINCLUB246 号でご紹介の「エスセナーリオ南麻布」や「エスセナーリオ表参道」と同じ企画会社様・事業主様・設計者様ということもあり、再度ご依頼をいただけたことは弊社にとってこの上ない喜びです。

「モデリアさんからのご依頼のときはある程度の設計の方向性というモノがあるのですが、やはり時代の流れやその地域によって求められるものは少しずつ違うんですよね。それは共同住宅の計画をおこなう上でとても重要なことだと思います。なのでご依頼をいただいた時点で必ず自分で現地を見に行くんです。今の時代ネットで現地の写真などは確認できますが、それだと街の雰囲気や人々の多さ、車の交通量など細かいところまでは分かりません。建築条件も大事ですが、実際建物に住む人やその地域にとってどれだけ寄り添った計画ができるかをいつも意識しています」と設計の木下道郎氏。

斜線規制が厳しいなかでの計画であった「エスセナーリオ市ヶ谷」。
特徴的な屋根の形状をはじめ、そのために生まれた空間を活かすようにプラン別で14 パターンもの貸室が複雑な立体構成で設計されています。

「巷にありふれた間取りや、広さを間仕切っている部屋も良いと思いますが、あえてそれをしていません。万人が良いと思うようなモノではないですが、こういうモノを探している人たちに『おっ』と思われる空間。他にない『唯一無二』だから人は求めてくれるので建物として成り立っているのだと思います」と木下氏。

今回の計画で一番の難題だったのが、土地の形状上接道の反対側にあった大きな擁壁。しかも擁壁に面する「道路」に見えるところは都の「所有地」だったため、弊社としても容易な工事ではありませんでした。

「企画段階で現地を拝見しに行ったとき、あまりの崖の高さに驚きました。それに加え隣接する道路は都の『所有地』。その『所有地』側から工事することはできないので、これはとても難しい工事になるなと。幾つかの施工会社さんへご相談しましたが、現地を見た瞬間皆がそろって渋い顔をされるんですよ。でも辰さんだけはその大きなリスクと難題に挑戦してくれたんです。あの技術と情熱は誇りに思っていいと思います。本当に助かりました」と木下氏。

お客様・設計者様の「こだわり」や「想い」をカタチにしていく建築会社でありたい。「情熱・挑戦・進化」を理念に掲げ、これからも皆様に寄り添った建築屋を目指してまいります。

264-2 エスセナーリオ市ヶ谷

合理的で遊び心と色気のある空間

今回、斜線規制が厳しい条件のなか、建物内で最大限の空間を確保できるよう複雑な立体構造で計画をおこなったため、それにより生まれた空間のデメリットをいかに活かせるかがポイントとなった。また駅からも近く、「市ヶ谷」というエレガントな都心生活をイメージできる魅力的な立地の特徴を活かせるよう、住まいの中に「遊び心と色気」を盛り込んだ。

斜線規制の関係で生まれた斜め壁に対しては、壁面を白にし、そこにフットライトを設置することでライトの反射で空間の圧迫感を緩和させた。また、斜め天井は吹抜けにし、ライトを上部へ反射させることで天井の高さをさらに演出。最上階の貸室には階段途中に1部屋設け、作業部屋や書斎など特別な空間として使っていただけるように意図している。

エレベーターシャフトの都合上、一部床レベルが上がってしまうところがあったが、敢えてそこに畳を設置し小上がりのような空間に。通路計画のために出っ張ってしまった空間も閉鎖せず、住空間として活かした。

地階緩和のため、住まいにしにくい地下空間は1階とつなぎメゾネットタイプにした。エントランス脇にガラスブロックを設置することで、自然光を階段室に取り込み地下空間の閉塞感・暗晦感を緩和。「地下」を感じさせないよう工夫している。

バルコニーから絶景の望める最上階は、湯船につかりながらその景色を楽しんでもらえるよう浴室の窓の位置を低く設置。また浴槽脇に同じ高さの洗面台を設置しているが、通常利用はもちろんのこと、そこでシャンパンなど冷やしながら入浴タイムを楽しむのも良いだろう。

「エスセナーリオ市ヶ谷」を見たとある建築家はこう言ってくれた。
「『建築』は設計者に似る。きっちり建て主の利益を追求しながら、しっかり暮らす人のための遊び心と色気を織り込んであって楽しい出会い」

合理的な設計のなかに、そこに住む人のために「遊び心と色気」を忘れない。その想いを体現している「エスセナーリオ 市ヶ谷」はこれからも永く、この地で愛され続ける建物になるだろう。

(ワークショップ/木下道郎氏 談)

所在地︓東京都新宿区市谷左内町23
構造︓RC 造
規模︓地下1階・地上5階
用途︓共同住宅
企画︓㈱モデリア
事業主︓秀光建設㈱
設計・監理︓木下道郎/ワークショップ
施工担当︓山川・朴
竣工︓2021 年11 月
撮影︓バウハウスネオ

264-3 大明荘

辿りついた安らぎの空間

昨年12 月に竣工いたしました、専用住宅の「大明荘(たいめいそう)」です。

昭和初期よりこのエリアにお住まいであった建て主の大塚様が、これからの人生、ご家族でゆっくりと過ごせる快適な住まいを建てたいという想いから計画がスタートいたしました。

もともと当地には大塚様の事業の一環で利用されていた建物がありましたが、ご夫妻の新たな住まいにとマンション探しをされるも、どこも帯に短し襷に長しで見つからなかったこともあり、思い切ってこの土地に建て替えを決断されたそうです。これまで事業用の多くの建物を建てられたご経験のある大塚様が、今回21 棟目にして初めてご自身の住まいを建てられました。

「将来万が一車いすを使うことになったときのためにバリアフリーにしてほしい」とご要望され、その他は計画ご担当の板倉様、設計者の志保澤氏にお任せという形で設計されました。「大明荘」というお名前は奥様のお名前から付けられています。

建物はバリアフリーを意識し、収納以外の内装建具はウォークインクローゼットおよび1 室を除き、全て引き戸となっています。また、吊り戸にすることで足元の段差を解消。
車いすでの生活になってしまった場合を想定し、エントランスは緩やかなスロープ。壁面には手すりを設置しています。 洗面所には高さの調整出来る洗面台を設け、いつでも使いやすい仕様に。2階へはエレベーターを使用して行き来ができます。

リビングには木の温もりを感じる家具や絵画がしつらわれ、落ち着いたご夫妻の寛ぎのスペースとなりました。
ご夫妻で囲碁を始められて40 年。以前のお住まいからお持ちになられた囲碁盤は椅子に座りながら使えるよう、出入りの家具屋さんにキャスター付きのものを作っていただきました。

ご夫妻いわく、「囲碁を通じていろいろな方と知り合うことができ、輪が広がりました。建替え前の建物にヨーロッパ出身のプロの卵や、中国のご夫婦ともに九段のプロ棋士夫婦が住んでいたこともあります。囲碁の経験は長いですが、実は家内とは過去に一度して以来対局したことがないんですよ。
今までの住まいは延べ坪360 坪。5 か所の出入口が外部に面しています。毎日新居に通って、このこじんまりとした住まいはどうかなと初め思いましたが、ここが1 番安らぐんです。 『プライベートな空間の造り』のおかげで、緊張やストレスが解放されほっとします。マンションでなくて良かったなぁ、と感じています。これまで大きな建物に住んでおり経験のなかったご近所付き合いの始まりを楽しみにしています」とのことです。

これから安らぎと快適な生活を送っていただける建物がまた一つ、ここに完成いたしました。

(編集部まとめ)

構造︓RC 造
規模︓地上2階
用途︓専用住宅
設計・監理︓志保澤一級建築士事務所
竣工︓2021 年12 月
施工担当︓能田・鍋島
撮影︓アック東京

264-4 「LOKO GALLERY」がリニューアルオープンいたしました

SHINCLUB199 号でご紹介いたしました「LOKO GALLERY」がこの度リニューアルオープンいたしました。

依頼主で「LOKO GALLERY」のオーナー遠藤和夫様はおよそ5年ほど前、「新進気鋭の若いアーティストに活動の場を提供するとともに、美術を介した自由なコミュニケーションの場としたい」という想いからカフェを併設した地下1階・地上3階RC 造のギャラリーを建てられました。

新築時、地下1 階には作品の展示やトークショーなどがおこなえるスペースが配置され、1階に併設したカフェを楽しみながらアートも楽しんでいただけるようにと、連続した空間となっておりましたが、「より身近に、もっと気軽にアートを楽しんでいただけるように」と今回のリニューアル工事を考えられたそうです。
「アートを楽しみたい人・カフェを楽しみたい人が両方楽しめる空間」をコンセプトに新築時から携わる建築家の加藤かおる氏、デザイン会社のモーメント社とのコラボレーションで計画がスタートいたしました。

新たに生まれ変わった地下1階のギャラリースペースには、座席と調理がおこなえるカウンターキッチンが設置され、「アート」と「食」を同時に楽しんでもらい、ときには2つの文化がコラボしたイベントも開催できる場となっています。

「建物は吹抜けで地下1階から最上階まで、空間が繋がった設計になっているんです。その一つの空間を『ギャラリー』と『カフェ』とで融合した使いかたができないかと考えました。なので新たに座席を設置し、調理ができる設備を設けています。
もともと新築のときから『ギャラリーとカフェの融合した空間』という構想を持っていたので、水道などのライフラインは通していました。新たに完成した空間で「アート」と「食」の新しい文化を楽しんでもらえると嬉しいです」とオーナーの遠藤和夫様。

内装デザインは基本的に加藤氏とモーメント社にお任せだったそうですが、内装には珍しい「三和土(たたき)」と呼ばれる「土」を床材に使用し、素朴な土感表情と優しさを表現しています。

「この辺りの西渋谷台地には『猿楽古代住居跡』や『猿楽塚』など古代の遺跡が多くあり、土器などの生活様式からも『土』のイメージを持っていました。そこでモーメントさんから今回の『三和土(たたき)』をご提案いただき、施工場所も地下1 階だし良いよねって。ただやはり『土』なので、飲食をおこなう場で採用するのは耐久性など心配な点はありました。業者さんから代替品などもご提案いただきましたが、やはり色や風合いが全然違うんですよ。そこで古民家を再生している人に相談したり、ホテルや特殊な飲食店で施工を経験している会社さんに相談したりといろいろな方に助けていただき、結果無事に完成することができました」と遠藤様。

床の素朴な土感に合わせ、壁には「モラート」と呼ばれる特殊セメントモルタルを施し、マットな仕上げの中に微妙な光沢感を持つやわらかい陰影により生まれる奥行きのある表情が、床の素朴感を更に演出しています。

「今は『ギャラリーを主体としてカフェを融合させる』という形ですが、最終的には『融合』から『共存』でやっていければ良いなと思っています。業種が違うので難しいとは思いますが、そこから生まれる新たな文化をもっと気軽に楽しんでいただけたら嬉しいです」(遠藤様)

卓越したバリスタが淹れる良質なコーヒーと現代アートを楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

【LOKO GALLERY】

■〒150-0032
東京都 渋谷区 鶯谷町 12-6
TEL︓03 6455 1376
FAX︓03 6455 1378
営業時間︓水- 土 11:00-19:00
日 12:00-18:00
定休日︓月・火・祝

 

【zenta coffee】

営業時間︓火- 金 11:00-19:00
土- 日 9:00-18:00

定休日︓月

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