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263-1 和モダンを感じられる賃貸・店舗併用住宅

写真は、昨年9月に竣工いたしました賃貸・店舗併用の「T 邸」です。

建て主のT 様は、お子さまも独立された今、今後のご夫妻の生活を考えられたときに「より快適に、過ごしやすい住まいにしたい」という想いから、今回の計画がスタートしました。T 様夫妻にお話を伺いました。

「もともとこの地に10 年ほど住んでいました。以前の自宅もとても素敵でしたが、私たちの今後の人生を考えたとき、「もっと住みやすくて居心地のいい暮らしができるのではないかと思ったんです。また、店舗を構えたいという想いもありましたので、こういった機会は人生一度きりですし、夫婦のこだわりが詰まった住みやすい建物にしようと思いました」とT 様。

ご夫妻のこだわりを実現させるため、設計事務所選びにはとても時間をかけていろいろな先生とお話されたそうです。T 様と奥様、お互いにこだわりがある中、最終的にはそれらを上手く取り入れ、素敵なプランをご提案していただいた後藤正史アトリエの後藤氏に依頼することになりました。

「2人のこだわりを上手く取り入れていただき、『あ、これ素敵だね』と夫婦で思えたプランを最初にいただいたのが後藤先生だったんです。その後3、4か月ほどいろいろな先生とお話させていただいたので正式に依頼させていただくまでお時間は掛かってしまいましたが、その後のプラン変更なども親身に計画していただき、その結果とても素敵な住まいができて非常に感謝しています」とT 様。

渋谷区の高台に位置するその建物は、鹿児島の「白洲(シラス)そとん壁」を外壁に施し、黒のファサードとのコントラストが青空に映える立体的な造りになっています。夕景には照明が灯り、キャンドルに火を灯したかのような暖かなライトが植栽を映し出すその様子は、その立体感を更に際立たせています。

「外観は基本的には後藤先生にお任せでしたが、ファサードなどは『和』のテイストを入れていただきました。数年間海外で暮らしていたこともあり、内装はそのときに住んでいた『シノワズリ』のイメージを取り入れていただいています。2 階から3階へ上がる螺旋階段と床との調和・コントラストがとても綺麗に仕上がって、こだわってよかったなと思いました」と語る奥様はとても嬉しそうでした。

3階に位置するキッチンには大きな窓を設置し、高台から望める都心の景色と、近所にある大きな公園の緑を眺めながらお料理ができるそうです。四季折々の風景の移り変わりとともに、より快適に、この地に長く住まいたくなるような建物がまた一つ、ここに完成いたしました。

263-2 T邸

維持換気システムを取り入れたこだわり住まい

「T 邸」が建つこの場所は、「第一種低層住居専用地域」ということもあり、条件がとても厳しいなかではあったが、T 様のご要望である「天井が高くて、リビングとテラスが繋がっている開放感のある住まいにしたい」という想いに応えられるよう、少しでもゆとりのある空間にする工夫を随所に施した。

当初「賃貸併用住宅」というご要望もあり、貸室2部屋・店舗・専用住宅で計画していたが、スペースなどを考慮した結果、貸室1部屋・店舗・専用住宅という計画に落ち着いた。

専用住宅部分は少しでも空間を広く取るため、日影規制に掛からないよう、各所微調整をおこないながらギリギリまで広げていくことで、空間を最大限に確保しつつ、外観は立体的な仕上げに。

計画を進めていくなかで、「寝室から直接浴室・洗面所へ行けるほうがいいのではないか」とご要望をいただいたので、寝室と寝室の間にそれらを設け、引き戸で間仕切ることで、機能的かつストレスのないよう工夫した。

貸室は、計画位置上採光面積が取りづらい位置にあったが、トップライトを高く設置することで有効採光を確保し、閉塞感を緩和させ奥行を演出。またロフトは天井を高くすることで「ベッドルーム」として使っていただけるよう、意図している。

今回、建物の換気システムとして「びおソーラー」を採用。冬は太陽光の熱で温められた空気をファンで床下に送り、スリットから暖かい空気が室内へ送られ、夏は夜間の冷たい空気を建物内に送ることができる維持換気システムである。自然の熱源を利用しているので身体にも良く、また長期的に自宅を留守にしていても常に空気が換気されているので、建物にとっても非常に好ましい。

「住みやすさ」と「快適さ」を兼ね備えたこの建物は、この先長くT 様夫妻の生活をより良いものにしてくれるだろう。

(後藤正史アトリエ/後藤正史氏 談)

構造︓RC 造
規模︓地上3階
用途︓店舗併用住宅
設計︓後藤正史アトリエ/後藤正史
施工担当︓郷・大塚
竣工︓2021 年9月
撮影︓淺川敏

263-3 「 人生の方向転換」 後藤正史/後藤正史アトリエ

今月は、「T 邸」の設計者、後藤正史氏にお話を伺いました。
専門学校時代に建築を学ばれ、卒業後は横浜市の設計事務所へ入所したのち毛綱毅曠建築事務所に入所。一般企業へ就職後、独立されて「後藤正史アトリエ」を設立されました。弊社とも20 年以上のお付き合いです。

ー専門学校時代に「建築」を学ばれたのですね。もともと興味をお持ちだったのですか。
後藤︓実はもともと商社希望で「貿易」がしたかったんです。大学受験も経済学部志望でした。子どものころから絵を描くのが好きで、学生時代所属していた美術部の先生からは「美大に行け」と言われたりもしたのですが、将来その道で十分な生活ができるイメージが湧かなかったんですよね。そんななか受験で上京し、友人の家に居候させてもらいながら大学受験をしている時に「美術手帳」という雑誌を購読していたのですが、ちょうどその時期に西武美術館で開催されていた「チャールズ・レニー・マッキントッシュ展」の特集ページが掲載されていたんです。その内容を読んで、「あ、建築家ってこういう仕事するんだ」って知ったと同時に面白そうだなと思ったのがきっかけです。でも今まで文系の教科しか勉強してこなかったですし、いきなり志望学科変えるのも受験的には難しいだろうというのであきらめていたんです。でも友人たちといろいろ話しをしていたら、専門学校なら建築の勉強ができるところがあるっていうのを知って。それで大学受験と並行して受験したんです。

ーそうなんですね。専門学校入学後は全く違う分野で戸惑ったりはしませんでしたか。
後藤︓そうですね。でももともと絵を描くのは好きでしたし、講師の先生方は設計事務所をやられている方が多かったので、丹下健三先生や黒川紀章先生などの事務所でアルバイトさせていただいたこともあり、結構すんなり馴染んでいくことができました。

ー専門学校卒業後は横浜市の設計事務所へ入所されたのですね。
後藤︓入所後は個人住宅の担当をさせていただいたのですが、大手プラント会社の協力設計事務所だったこともあり、数か月後に石油プラント計画のプロジェクトチームへ出向になりました。そこでは設計されたものを図面化する仕事をおこなっていたのですが、81・2 年に石油価格が世界的に大暴落したことをきっかけに事業縮小になりチームが解散になってしまったんです。そのタイミングで「そろそろ建築の仕事がしたいな」と。それで職をやめて、友人の設計事務所でアルバイトをしていた時に「行きたい設計事務所はないの︖」という話になりました。毛綱毅曠先生のコスモロジー心理学や哲学などを理念としてカタチにしているというところにすごい興味を持っていたので直接連絡を取り、翌年から働かせてもらうことになったんです。

ー毛綱先生は博物館や商業施設などのイメージが強いですが、住宅なども設計されていたのでしょうか。
後藤︓そうです。私が入った時はまだ博物館の前でしたし、小さい住宅や架空の住宅計画など結構おこなっていましたね。設計もそうですが、事務所の経理や財務関係の書類、手続きなど一連の業務もやらせてもらいました。おかげで独立する際、非常に助かりました。

ー毛綱毅曠建築事務所を退所後、様々なジャンルの企画をおこなう一般企業へ就職されているんですね。だいぶ方向性が違うように思いますが。
後藤︓87 年頃にバブルになって、その兆しの中でデベロッパーさんからお仕事をいただくことが多かったのですが、「こういうものにしてほしい」とすでに外枠の決まったモノに対してデザイン面での設計をお願いしたいというのが多くなったんです。設計事務所としてはやはり一から創り上げたいという想いがあるなかで企画的な部分を知って、基本から関わっていきたいと思ったので決断しました。独立も視野に入れてましたし、「設計」はできるようになったから次は「企画」かなと。

ーでは早い段階で「独立」を考えていらしたのですね。
後藤︓そうですね、事務所時代に独立してもすぐに仕事があるイメージも湧かなかったので、何かしらできる環境を自分で作らなきゃと。会社と会社の話をした時に自然と提案できるような話ができる必要があると感じたんですね。

ー「経験」は貴重な財産ですね。本日はありがとうございました。

 

後藤 正史(ごとう まさし)

1959 年 徳島県生まれ
1982 年 東京デザイナー学院 建築デザイン学科卒業
1984 年 株式会社毛綱毅曠建築事務所( ~ 1988)
1988 年 株式会社浜野商品研究所(~ 1989)
1989 年 後藤正史アトリエ設立

【受賞歴】
1992 年 ハウスインヨコハマ入賞(JIA 主催)
1995 年 グランドエルサン 鶴岡市景観賞受賞
( 建築設計︓伊東空間研究所との共同設計)
2001 年 印旛村立いには野小学校 文部科学大臣激励賞受賞
(基本設計︓千代田設計他と共同設計)

263-4 フルハーネス型墜落制止用器具使用作業特別教育を実施いたしました 2021 年12 月14・16 日

常に危険と隣り合わせの建築現場。特に足場を使用した高所作業では墜落・転落死亡災害など後を絶えません。これは日本のみならず、世界的にも問題とされています。

高所作業では「安全帯」と言われる「墜落制止用器具」の使用が義務付けられていますが、2019 年2月1日の改正で「安全帯」という呼称が廃止され、胴ベルト型・フルハーネス型共に「墜落制止用器具」で統一となりました。また、作業高さに応じて胴ベルト型・フルハーネス型の使い分ける範囲も明確に定められ、フルハーネス型墜落制止用器具を用いておこなう作業に従事する労働者については、6時間の特別教育を受講することが義務付けられました。

建築会社である弊社も、東京安全研究所所長 林利成氏と商品メーカー担当者様をお招きし、特別教育を実施いたしました。特別教育には弊社社員はもちろん、協力業者様も参加し、建築現場の安全性や墜落制止用器具の使用方法、改正に伴う変更点や範囲など、安心・安全な現場管理ができるよう謹厳実直に学ばせていただきました。

 

【フルハーネス型使用義務 改正ポイント】

・「安全帯」の呼称を廃止し、「転落制止用器具」に統一。
・高さ2m 以上の場所で作業床設置が困難な箇所で作業する場合、フルハーネス型墜落制止用器具の使用
が義務付けられた。特に建設業では5m を超える箇所ではフルハーネス型墜落制止用器具を使用する
こととされた。
・一般的な建設作業における胴ベルト型の使用可能な高さの目安は5m 以下とされた。
・ランヤードを構造物に回してフックをベルトに掛けるU 字吊り専用タイプの胴ベルト型墜落制止用器具
の使用は禁止された。
・経過措置として、2019 年2 月1 日において製造している安全帯は、2022 年1 月1 日まで着用が認められ   る。

 

この度の改正のみならず、日々の現場管理において小さなことからお客様へ安心・安全をご提供できるよう現場管理をおこなってまいります。