202-4  建物再訪1. 「元代々木の家」 

2017年1月10日 at 4:08 PM

家は買うのではなくつくるもの

 

辰が発足して18年目。これまで施工させていただいた建物は300近くになりました。新築物件の一つ一つに「嫁に出す気持ちで、お引渡ししてきた」という社長森村の言葉通り、建築は一品生産。その後も長いメンテナンスを通じて、お客様とお付き合いしてまいります。そんなお客様と建物そのものの価値について語り合いたい、という企画をスタートさせることにしました。建築家の先生方が、お客様の暮らし方や与えられた敷地の環境に応じて設計し、その建物を施工する建設会社が責任をもって維持管理に関わってこそ、良質な建物は年月を経て価値を生み出し、長く愛される景観として生き続けます。
一方、それらが適正な価格で売買される健全な市場が、まだまだ日本には育っていません。建物をきちんと評価いただく市場の発展のため、施工会社ができることをお伝えしてまいりたいと存じます。

第1回は、「元代々木の家」。1999年、前身会社で、ご自宅の施行ご依頼くださった大野様は、前身会社でが主力取引銀行の破たんにより倒れた後も、引き続き辰での施工を希望、契約の変更にも応じてくださいました。当時、新会社として新たなスタートを切る我々に力を与えてくれました。
その家も竣工後、16年が経ち、ご家族も増えたことから、新たな家を建てられることを決意され、その際、なるべく竣工当時の状態に近い形にメンテナンスしてから売却しようと、辰のリニューアル部にメンテナンスをご依頼いただきました。大野さまに お話を伺いました。

―17年前、前身会社が請けていた工事を新会社へご契約いただいたときのお気持ちはどういうものでしたか。
大野:そもそも新築時に設計の先生に依頼はしましたが、辰さんの施行はあこがれでした。建築が好きで、青山・神宮前周辺をよく見て歩いていましたが、「いい建物だな」と思うと、施工会社が辰さんということが多々あった。予想よりも高かったのですが、自分が見た現場で感じた施工センスから、辰さんにお願いしたいと思いました。破たんしたときも、作るということでの問題ではなかったのでから、僕は全然かまいませんでした。
―当時、17の仕掛り工事のお客様には、ご迷惑をおかけしましたが、契約を変更いただくなどして、完成にこぎつけました。
しかし、発足したばかりの「ShinClub」にすべての竣工情報を掲載する機会は逸してしまいました。この度リニューアル部がメンテナンスを請け負わせていただき、良い機会となりました。
大野:今回、建物を購入いただき、引き継いでくださることになったTさんは、まだ僕が居住中に内覧に見えたのですが、環境や建物だけでなく、僕の暮らし方に共感してくださった。物も増えて、片付いてもいなかったのですが、「こういう方に購入いただいて、引き継いでもらえるとうれしいなぁ」と思いました。
コンクリートは時間の経過によってメンテは必要ですが、そこで安易な方法によって景観が勝手に変わってしまうようなやり方はダメだと思いました。杉板型枠の打ち放しコンクリートのテクスチャーを白く塗りつぶしてしまうようなことは違うと思うのです。周辺に暮らしている人たちの環境を、見慣れた風景を大きく変えてしまう。コストが心配でしたが、予算から最大限の成果を得られるような逆提案をいただいて、「やっぱり相談してよかったな」と思いましたね。
「ShinClub」も同じです。会社が続くことと同じように、ずっと同じスタイルで続けていることに価値があると思います。

僕はよく子供に「家は買うものではなく、つくるものだよ」と言っています。これからも、子供には「家はつくるんだ」ということ、誰に頼むかが大事だということを伝えていきたいと思っています。

―本日はありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

元代々木の家
構造:RC造
規模:地上3階
用途:専用住宅
設計:正屋デザインシステマ
竣工:2000年3月

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