248-1 大きな家

2020年11月13日 at 11:43 AM

「はつせ三田」 撮影:稲継泰介

写真は、昨年末竣工した「はつせ三田」です。地上7階、地下1階で、外観は開口部がアットランダムに開かれ、他のマンションのように、どのくらいの階高の部屋がいくつ中に収められているのかよくわかりません。想像すると楽しくなります。建物の内部には、心地よい風が吹き抜けていくように見えます。

コロナ禍を経て、働き方に対する見方が大きく変わってくる中で、集合住宅の在り方も変化しています。リモートワークに配慮して、家族間でも一定の距離感が求められ、SOHOは当たり前のようになり、各住戸はいろいろな用途を備えてフレキシブルな使い方ができる場所が必要になりました。共用部分やその外側の地域につながる部分についても、長い時間の変化に耐えられ、地域にとっても有用な存在になる要素を備えていると、どんなに好意的に受け止められることでしょう。

この建物を設計した、井原正揮氏と井原佳代氏は、オーナー一家のために、多彩なプランを用意し、賃貸部分と合わせながら、家族構成、年月の変遷に耐えて、家族が住戸内の転居も可能なように「大きな家」を作りました。メゾネット、トリプレットもある建物は、中央の吹き抜けの階段室で各住戸をつないで、外からのセキュリティを守りながら、内側では専用部のインナーテラスを使った光や空気の抜ける空間を作り上げています。
コロナを迎える前の計画でしたが、図らずもそのコンセプトは、今、働く若い世代が、まさに求めている住まいに合致したものとなっています。

桜田通りの鰻のお店を入ったところ、周辺には高級マンションが建ち並びます。さすがにこの白金・三田地域の賃貸料は高額になってしまいますが、取材に訪れた時に小さなお子様連れの親子にたくさんすれ違いました。近くに豊岡町児童館もあるからでしょうか。共働きで頑張っておられることでしょう。

仕事も子育ても行うには、都心は大変かもしれませんが、この地域で暮らすということであるならば、人と人のつながりを抜きにしては考えられません。私たちは、プライベート重視から、少し外に出て人と何かを共有できるスペースがあることで「STAY HOME」していた人々が心のよりどころを取り戻しているシーンをSNSで何度も見ることができました。家から1歩も出るなと言われた時に、マンションの中庭で体操をするインストラクターとともにベランダで身体を動かしていたお年寄りたち。コロナと戦う医療関係者を屋上からバイオリンの演奏でたたえたアーティスト。人との絆を大事にする開かれた空間が、この建物にも見えます。「一住戸=一家族」ではない柔軟な繋がり。アウトドアキッチンがあり、1階にはカフェも入るということで、街に新たな明るさを与えてくれることでしょう。