251-1  弥生(町)に暮らす

2021年2月14日 at 10:27 AM

 

「Sunny Letter 弥生」 撮影:アック東京

写真は文京区弥生に建ちあがった親子3世代の賃貸併用住宅です。地下1階、地上5階の、重厚な打ち放しコンクリートの建物は、「SHINCLUB249号」でご紹介した「Barbizon 23 ANNEX」の設計者、リバックス建築環境計画の計良篤美氏の設計です。

建て主の阿部信治様は、明治時代から続く日本画の筆を制作する工房「清晨堂」の店主・筆職人で、多くの日本画のプロの方のための筆を作り続けてきました。近くの東京藝術大学だけでなく、多摩美術大学や武蔵野美術大学、女子美術大学などの非常勤講師も務められ、すぐ近くの池之端に暮らして35年が過ぎました。現在は次男様に工房を譲られています。

今回の取材をお願いすると、「この家の建て主は長男です。長男が一緒に住もうと言ったのでこの建物を作ることになりました。が、企画や調整は建築に詳しい親父に任せると彼が言ってくれて、私自身は建て主ではないんですが」と照れながらも快諾くださいました。

「長男の嫁も嫌がらず、お父さんも年を取って心配だから一緒に、と。孫たちにとっても、親だけでなく祖父母、従弟たちと小さいうちからいろんな人間関係の中で育つのは良いことだと思います」と阿部様。

この街を愛し建築にも大変興味があった阿部様は、実は既にすぐ近くに計良氏の設計で、21年前に「異人坂館」という重厚なコンクリート打ち放しのマンションを建てられています。

「この地域は森鴎外や夏目漱石の小説の舞台として、有名です。
『三四郎』なんか読むとよくわかるのだけど、登場人物が街を歩くときに、坂を上がったり、下がったりする描写があるでしょう。僕はその描写でどこの事を言っているのかわかります。学生の時に団子坂に下宿していましたが、当時はエアコンがなくて夏は暑くて、涼むために路地から路地まで歩き回りました。小説の中の事を感じながら歩くのが楽しくて。今でも起伏は昔のままですよ」

阿部様は、その後も不動産情報を常にチェックされていました。この弥生界隈に限定すると、2年で3つくらいしか出てこない物件情報。しかし出たらすぐに見に行って、計良氏に相談の電話をすることを繰り返されてきました。
今回の土地では、計良氏から「5階建ちますよ。真北測量してください」と折り返し電話が来たので、すぐに測量依頼。「真北測量」とは 建物を設計する際に、日照時間などを調査するために必要な測量です。周辺では3階しか建たないところ5階建つという事で、事業計画としても見通しが立ったのです。

こうして親子3代の家の計画はスタートしました。

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