257-3 「 設計マネジメントと施工」 八尾廣/八尾廣研究室 & 遠藤克彦/遠藤克彦建築研究所

2021年8月11日 at 12:10 PM

(p1 から続く)今月は、「長者丸VIEWTERRACE」のお二人の設計者にお話を伺います。

—八尾様のこれまでのお仕事についてお聞かせください。

八尾︓東京大学大学院で原広司先生に学び、修士修了後、先生のアトリエ・ファイ建築研究所に入所しました。その時すでに梅田スカイビルの現場と京都駅ビルの実施設計が進んでいました。当時所員は20 名近くいました。それに加え、JRからの出向社員やCAD 作図部隊、遠藤さんをはじめとする大学院生もいて、代官山の事務所は大変活気に満ちていました。
当時の設計図はまだほとんど手描きで、京都駅の実施設計はA1 サイズ840 枚にものぼる設計図書を先輩方全員で描いていました。
事務所には長さ5m の京都駅の100 分の1の模型が対角線上に置かれ、部屋が二分されるほどでした。
私たち新人は、京都駅も手伝いましたが、その後住宅をはじめ、宮城県の図書館、広島県立基町高校といった公共の仕事やスペインのバレアレス諸島に新しくできる先端学園都市のコンペなどを次々に担当しました。事務所にも寝泊まりして一生懸命働きましたが、原先生からは建築に関することばかりでなく、建築家として生きるということの全てを学びました。

その後、岸田省吾先生に声がけいただき、そこで働く一方で、独立したいという思いもふつふつと湧いてきた時代だったので、勤めながら自分でもコンペに応募していました。そんな中、友人の角倉剛と大野高志とともに応募した小松市の宮本美術館の1 次審査通過の3 社に選ばれました。2 次審査では大手設計事務所2 社と戦うこととなり、またとないチャンスに気合を入れて取り組みました。その甲斐あって最優秀に選ばれ、独立することができました。宮本美術館を完成させたのち、3 人で4 年間事務所続け、その後方向性の違いが見えてきたのでそれぞれ独立しました。その後、自分も原先生のように研究と制作を並行しながら建築を探究したいという想いが強くなり、2008 年より東京工芸大学で教育・研究にも軸足を置くようになりました。

―遠藤さんは、どんな形でお仕事を進められてきたのですか。

遠藤︓僕はよその事務所に就職したことないんです。修士から博士に進んでも、ほとんどアトリエ・ファイの事務所にいて、博士2年の時、「東京大学生産技術研究所」の基本計画にアルバイトとして携わり、「柏キャンパス」の図面を描いていた頃に卒業を迎えました。今は亡き小嶋一浩さんに、独立の相談に行きましたところ、「今」だと。そこで1 年間博士のまま27 歳のときに独立しました。
が、なかなか仕事が来ません。退路を絶って学校はやめ30 歳くらいまで食えなくて、コンペに計画を出し続けました。あるとき軽井沢の別荘が『新建築住宅特集』で表紙になって、それから注文が増え、少し良くなりましたね。

しかし「別荘」という建物は、ある意味で非常にコンサバティブな建築。社会に接続しないことを「良し」として求められることもあり、だんだん影響力を失っていく気がして、模索することもあった。一方でスケールを超えて成立する、強度のあるものをやっていくしかない。去年までで数えると95 件くらいコンペに応募しました。2016 年、「長者丸」の建設中に「大阪中之島美術館」のプロポーザルが通過し、今に至ります。特殊な構造で施工の難易度は高い。「長者丸」も同じ佐藤淳氏の構造設計で難易度が高い工事でした。ホウガンという解析システム、これが優秀なんですが、指定検査機関が判断できない。世界の潮流で言えば、設計から施工までのBIM を含めたマネジメントが主流になりつつある今、こうすれば作れるという設計に、施工が応えられないのは問題です。ザハ・ハディドの施工で有名な「ゲーリー・テクノロジーズ」は、世界中の3次曲面の施工を請け負っている。でも日本にはまだそういう施工会社はまだない。僕は施工業界のチャンスだと思います。
八尾︓うちもCAD 教育にはかなり力を入れていますが、最近はまず3D でモデリングしてから考える学生も出てきています。
遠藤︓我々と施工者さんとはこういう風にすればできる、という共通認識ができていますが、そういう常識を飛び越える新しいことが出てくるときに常識が邪魔になることがある。僕は最近すごくそう思うんです。特に、素材の可能性が広がらない。施工図の確認も3D でやるべき。設計と施工はシームレスになるべきです。

―本日はありがとうございました。

 

八尾 廣 (やつお ひろし)

1966 年 大阪市生まれ
1990 年 東京大学工学部建築学科卒業
1992 年 東京大学工学系研究科建築学専攻修士課程修了
アトリエ・ファイ建築研究所入所
1997 年 岸田建築設計事務所入所
1999 年 小松市立宮本三郎美術館 建設提案競技 最優秀賞
THT アーキテクツ 設立
2003 年 非常勤講師/東京電機大学、明治大学、東京工芸大学
2005 年 八尾廣建築計画事務所設立
2008 年 東京工芸大学工学部建築学科准教授
2017 年 NPO 法人GER 設立・副理事長
2018 年~東京工芸大学工学部建築学科教授

 

遠藤 克彦(えんどう かつひこ)

1970 年 横浜市生まれ
1992 年 武蔵工業大学(現 東京都市大学)工学部建築学科卒業
1995 年 東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻修士課程修了
(東京大学生産技術研究所 原広司研究室在籍) 同大学院博士課程進学
1997 年 遠藤建築研究所設立
2007 年 株式会社 遠藤克彦建築研究所に組織改編
2017 年 大阪オフィス開設
2021 年~茨城大学 大学院理工学研究科 都市システム工学専攻 准教授