257-1 街に開かれる人の営み

2021年8月11日 at 12:10 PM

写真は、2017 年に竣工した「長者丸VIEW TERRACE」です。2020 年度グッドデザイン賞を受賞し、竣工から時間が経過しましたが、この度ご紹介する機会をいただきました。
設計は八尾廣氏と遠藤克彦氏。お二人は2016 年度グッドデザイン賞受賞の「15WINDOWS―池田山の集合住宅」( 他社施工)でもチームを組まれました。建築家・原広司氏の事務所「アトリエ・ファイ」で学ばれた仲とのことです。

八尾︓池田山の建て主は大学ボート部の先輩です。集合住宅用の土地が見つかり、設計が始まったのですが、その時はすでに大学に勤めていましたので、ちょうど敷地の近所に事務所を構えていた遠藤さんに声をかけました。
遠藤︓池田山は大きな邸宅が並ぶ高級住宅地。セキュリティ意識が高い層は閉鎖的な建物を好まれることが多いのですが、むしろ入居者の生活が街の中に染み出るようなオープンなものを考えようということになりました。
八尾︓シンプルな構成で、RC 造の外断熱、チャコールグレイの落ち着いた佇まい、ステンレスで枠取られた15 の窓から入居者の生活が滲み出すようなファサードデザインが評価され、グッドデザイン賞を受賞しました。「長者丸」の建て主が池田山をご覧になり、同様の構成集合住宅を建てたいということで依頼されました。
遠藤︓長者丸も都心なのに静かで、少し高台になっていて風も通る。
そんな景色のいい環境を活かしながら、かなり大きな賃貸住戸を4 戸、上層階に建て主の自邸も入れて天井高も確保しなくてはならないという与件でスタートしました。

八尾︓日本のモダニズム住宅の先駆けである「土浦亀城邸」が、敷地の近隣にあるんです。
遠藤︓周辺のほとんどの家のように、塀で囲ってしまうと街並みが閉じてしまう。せっかくいい場所なのに、周りを楽しめないのはつまらないでしょう。
八尾︓傾斜地である敷地の特性から、結果的に土浦亀城邸と同様のスキップフロア構成をとり、開放的でありながら、セキュリティに配慮した住宅が完成し、入居者もすぐ決まりました。池田山の住宅では、入居者の方たちが窓辺にいろんなものを置いたりして、外部の視線を自らコントロールして生活を楽しんでおられます。「長者丸」でも同様に個性的な暮しを楽しんでもらえたらと思っています。
遠藤︓グッドデザイン賞の受賞理由として、地域へ閉じすぎない住まい方で、新しいタイポロジーを提案したという点が評価されました。私は、集合住宅は逆スラブを採用するのが良いと思っています。
室内の配管を下階に持ち込まないのが集合住宅の基本。そのためこの高さ制限の中、できるだけ薄い床にして、2.5m の天井高を確保することが苦労したところです。
八尾︓その点では構造の佐藤淳さんの力も大きいですね。
遠藤︓構造ダイヤグラムを見ていただきたい。スラブは縦横にワッフルスラブにし、場所によって鉄筋の密度が違うので施工は大変だったと思います。
(p2 に建築概要を、p3 にインタビューの続きを掲載しました)