259-3 「『今』も『未来』も暮らしやすい設計」 金子太亮/空間研究所

2021年10月11日 at 8:17 PM

今月は「Solana Takanawadai」の設計者、金子太亮氏にお話を伺いました。
日本大学大学院理工学研究科海洋建築工学を修了後、篠原聡子氏の主宰する空間研究所に入所され、数々の建物の設計を行っています。

―「海洋建築」とはあまり聞き慣れないのですが、大学時代はどのようなことを学ばれたのでしょうか。
金子︓ウォーターフロントという響きがとても新鮮で、高校生の僕はなぜか、これからは『臨海部がアツい』と思って海洋建築工学科に入学しました。入ったときは大規模な埋め立てはほとんどなくて、お台場やみなとみらいの景観や手すりなどの研究をやっていました。学科では、建築計画から設計演習、海洋学、環境学など学びました。一年生の海洋実習では、帆船のヤードに登ってセルを畳む体験をしたり、海洋生物を観察したりしました。また、いろいろな研究室があって、メガフロートからアオサ、漁村や海水浴場の迷子の研究まで本当に幅の広い学科でした。僕は、唯一デザインが学べる坪山幸王研究室に入って、臨海部の超高層集合住宅について研究していました。海洋建築では、環境と建築の関わり方を広く学んだと思います。

―そうなんですね。学ばれた校舎も海辺が近いところだったのでしょうか。
金子︓僕は6年間船橋で過ごしました。なにかあると大体幕張まで夜ドライブして、浜辺で語らっていました。男子2人で( 笑)海って偉大だなぁって思いましたね。

ー大学院修了後は篠原先生の事務所に入所されたんですね。
金子︓修了してからおよそ14 年が経ちます。最初は偶然にも大学近くでバレエスタジオの設計をさせていただきました。

ー住宅街にあるバレエスタジオですね。外壁の打ち放しコンクリートがとても綺麗でした。鎌倉で設計を手掛けられた外観が印象的な建物もありますね。
金子︓「SASU・KE」です。RC 造に屋根が木造の建物です。RCの塊が前面にでないように、ファサードに木製ルーバーを使用しました。外観と内部からの眺めに配慮して3つの角度でランダムに設置しました。また、高低差のある敷地なので、敷地と街が分断されないように大階段で中庭をつなぎ連続性を持たせ、店舗利用もできる住戸を計画しました。

ー名前が特徴的ですね。
金子︓建物のある場所が鎌倉の「佐助」というところなんです。
それと、「家」を意味する「ケ」を付けて「SASU・KE」としました。名前で言うと「サンカク」という建物も面白いですよ。山梨県の山中にある建物なんですが、冬場は雪が結構積もるので屋根の角度を60度にして自重で雪が落ちるようにしたんです。そうしたら、三角形の断面空間になって「サンカク」にしました。

ーシェアハウスやシェアオフィスの設計・運営もされていますね。意識していることなどはあるのでしょうか。
金子︓2012 年にSHARE yaraicho が竣工した頃はシェアハウスという形式はなくて、下宿とか寄宿舎はありましたが、デザインされたものはなかったと思います。その後、シェアハウスが乱立されていくのですが、そこには運営に対する備えがなくていろいろな問題が起きましたよね。SHARE yaraicho では、運営の核となる人物( 共同設計者で入居者)が設計から関わり、空間のコンセプトから使われ方までイメージを共有していたことはよかったと思います。設計者は竣工したら終わりではなくて、建物の使われ方も施主と共有することが必要なのかなと感じています。

ー現在進行中のプロジェクトのお話を伺えますか。
金子︓登戸の再開発エリアで集合住宅の共用部分とファサードのデザイン監修や高円寺でも集合住宅のデザイン監修をおこなっています。こちらは、まちのコミュニティの核となるような新しい建物を目指しています。

ー楽しみですね。本日はありがとうございました。

 

金子 太亮 (かねこ だいすけ)
1982 年  埼玉県生まれ
2005 年 日本大学理工学部海洋建築学科卒業
2007 年 同大学大学院理工学研究科前期博士課程海洋建築工学専攻修了
修士設計で「加藤賞」受賞
空間研究所入所 現在 チーフアーキテクト
2017 年 『サンカク』で「山梨県建築文化賞」受賞
2018 年 『サンカク』で「第21 回木材活用コンクール」受賞
『集合住宅H2138』で「Good Design Award2018」受賞
2019 年 日本大学工学部海洋建築学科 非常勤講師