263-3 「 人生の方向転換」 後藤正史/後藤正史アトリエ

2022年2月14日 at 9:26 AM

今月は、「T 邸」の設計者、後藤正史氏にお話を伺いました。
専門学校時代に建築を学ばれ、卒業後は横浜市の設計事務所へ入所したのち毛綱毅曠建築事務所に入所。一般企業へ就職後、独立されて「後藤正史アトリエ」を設立されました。弊社とも20 年以上のお付き合いです。

ー専門学校時代に「建築」を学ばれたのですね。もともと興味をお持ちだったのですか。
後藤︓実はもともと商社希望で「貿易」がしたかったんです。大学受験も経済学部志望でした。子どものころから絵を描くのが好きで、学生時代所属していた美術部の先生からは「美大に行け」と言われたりもしたのですが、将来その道で十分な生活ができるイメージが湧かなかったんですよね。そんななか受験で上京し、友人の家に居候させてもらいながら大学受験をしている時に「美術手帳」という雑誌を購読していたのですが、ちょうどその時期に西武美術館で開催されていた「チャールズ・レニー・マッキントッシュ展」の特集ページが掲載されていたんです。その内容を読んで、「あ、建築家ってこういう仕事するんだ」って知ったと同時に面白そうだなと思ったのがきっかけです。でも今まで文系の教科しか勉強してこなかったですし、いきなり志望学科変えるのも受験的には難しいだろうというのであきらめていたんです。でも友人たちといろいろ話しをしていたら、専門学校なら建築の勉強ができるところがあるっていうのを知って。それで大学受験と並行して受験したんです。

ーそうなんですね。専門学校入学後は全く違う分野で戸惑ったりはしませんでしたか。
後藤︓そうですね。でももともと絵を描くのは好きでしたし、講師の先生方は設計事務所をやられている方が多かったので、丹下健三先生や黒川紀章先生などの事務所でアルバイトさせていただいたこともあり、結構すんなり馴染んでいくことができました。

ー専門学校卒業後は横浜市の設計事務所へ入所されたのですね。
後藤︓入所後は個人住宅の担当をさせていただいたのですが、大手プラント会社の協力設計事務所だったこともあり、数か月後に石油プラント計画のプロジェクトチームへ出向になりました。そこでは設計されたものを図面化する仕事をおこなっていたのですが、81・2 年に石油価格が世界的に大暴落したことをきっかけに事業縮小になりチームが解散になってしまったんです。そのタイミングで「そろそろ建築の仕事がしたいな」と。それで職をやめて、友人の設計事務所でアルバイトをしていた時に「行きたい設計事務所はないの︖」という話になりました。毛綱毅曠先生のコスモロジー心理学や哲学などを理念としてカタチにしているというところにすごい興味を持っていたので直接連絡を取り、翌年から働かせてもらうことになったんです。

ー毛綱先生は博物館や商業施設などのイメージが強いですが、住宅なども設計されていたのでしょうか。
後藤︓そうです。私が入った時はまだ博物館の前でしたし、小さい住宅や架空の住宅計画など結構おこなっていましたね。設計もそうですが、事務所の経理や財務関係の書類、手続きなど一連の業務もやらせてもらいました。おかげで独立する際、非常に助かりました。

ー毛綱毅曠建築事務所を退所後、様々なジャンルの企画をおこなう一般企業へ就職されているんですね。だいぶ方向性が違うように思いますが。
後藤︓87 年頃にバブルになって、その兆しの中でデベロッパーさんからお仕事をいただくことが多かったのですが、「こういうものにしてほしい」とすでに外枠の決まったモノに対してデザイン面での設計をお願いしたいというのが多くなったんです。設計事務所としてはやはり一から創り上げたいという想いがあるなかで企画的な部分を知って、基本から関わっていきたいと思ったので決断しました。独立も視野に入れてましたし、「設計」はできるようになったから次は「企画」かなと。

ーでは早い段階で「独立」を考えていらしたのですね。
後藤︓そうですね、事務所時代に独立してもすぐに仕事があるイメージも湧かなかったので、何かしらできる環境を自分で作らなきゃと。会社と会社の話をした時に自然と提案できるような話ができる必要があると感じたんですね。

ー「経験」は貴重な財産ですね。本日はありがとうございました。

 

後藤 正史(ごとう まさし)

1959 年 徳島県生まれ
1982 年 東京デザイナー学院 建築デザイン学科卒業
1984 年 株式会社毛綱毅曠建築事務所( ~ 1988)
1988 年 株式会社浜野商品研究所(~ 1989)
1989 年 後藤正史アトリエ設立

【受賞歴】
1992 年 ハウスインヨコハマ入賞(JIA 主催)
1995 年 グランドエルサン 鶴岡市景観賞受賞
( 建築設計︓伊東空間研究所との共同設計)
2001 年 印旛村立いには野小学校 文部科学大臣激励賞受賞
(基本設計︓千代田設計他と共同設計)