161-1 未来のユーザーのために

2013年8月6日 at 3:32 PM

M3

撮影:ミリグラムスタジオ

 上の写真は、今月ご紹介する元代々木の集合住宅です。設計の内海智行氏が提唱する、可変性と拡張性を持った住宅「Mシリーズ」の新作です。建物の界壁を抜くことのできるRC壁構造で、コンバージョンを視野に入れたプランとなっています。引き継いだ資産を同じ内容で維持し続けるということは、次世代に負担になることも起こりえます。建てる世代が自分の思いだけに限定するのでなく、次世代のオーナーが対面するかもしれない不確実なニーズをなるべく反映できるようなものにしておく、そんな工夫も必要です。

建物は1度建てたら、かなり長い間その場に存在し続ける社会的資源です。日本の住宅の寿命は平均して約20年ほどですが、欧米では70~80年と言われています。スクラップアンドビルドの文化を象徴してきたわけですが、それでもさすがに、都心部では住宅の新築着工数はここ数年減少してきました。中古住宅市場は10年前の1.3倍です。欧米に比べればまだまだ少ないそうですが、住宅に関しては十分ストックがあり、新築物件は今後そんなに増えることはないといわれています。
では戸建でもマンションでも中古となった住宅はどういうことになるのでしょうか。
現在日本では、住宅の価値を決定づけているのが固定資産税です。築年数が増えるにつれて固定資産税評価額が下がり、これが25年もすると0になってしまう。本当は、土地の評価で建物に対する評価ではないのにこれが全体の評価となって一人歩きしています。つまり、建物そのものを評価する統一された仕組みがないのです。
アメリカでは住宅の評価は、「取引事例評価法」という法律でしっかり守られており、中古物件は多く流通しています。戦火も受けず、歴史的に何度も建築ブームを経てきたアメリカには、品質の高い建物がたくさんあります。またそれらは築年数が古いにもかかわらず、よく手入れされています。人々は目的と予算に応じて、潤沢な中古住宅の中から買換えを行うのが普通です。その中古住宅の審査には、不動産業者などのほかに、アプレイザー(価格審査家)やホームインスペクターと呼ばれる専門の建物診断士が査定を行うそうです。彼らの判断をもとに住宅は売買されているので、人々は自分の住まいには非常に気を使い、手入れを怠らないのです。
しかし最近日本でも、金融機関の担保評価はあいかわらず一律的ですが、中古住宅の人気が出てきて、取得した物件を自分好みにリフォームするという若い層が増えています。中古マンションなどは物件の多さで比較しやすいことも手伝って、価格は上昇しているようです。
物件情報の正確な開示の促進も売買、特に買主にとっては重要です。今月「フロントライン」で登場いただいた大家さんの中古アパート購入の話は、多くの問題を提起しています。政府も中古住宅の流通拡大をさらに進めるために、リフォームトータルプランの策定を実施、「2020年までに市場規模を倍増させる」そうです。
不動産会社の中には、中古物件を購入する顧客に対して、リフォームを相談できる部門も設け、購入ローンとリフォームローンを一括で受ける新たな「ワンストップ」サービスを始めるところも出てきました。

弊社を訪れてくださるお客様は、すでに最初に高品質の家を建て、手入れを怠らずに建物の品質を維持しようとする意識の高い方がほとんどです。そのようなご要望に応える施工会社として、社会貢献させていただいていると自負しています。建物そのものへの評価制度の充実により、さらに日本全体で次世代へ受け継がれる良質な建物が増えていくことを願っています。