171-1 コミュニティ・アーキテクト

2014年6月16日 at 3:05 PM

「M5」  撮影:ミリグラムスタジオ、                 「新東科学株式会社本社ビル」 撮影:淺川 敏

今月は、2 点の作品のご紹介です。左側の写真の店舗・賃貸併用住宅「M5」は東京の郊外の高級住宅地の代名詞とも言える世田谷区に竣工しました。
もともと緑豊かな地域ですが、この桜新町の駅に近い地域は、実は準工業地域となっているのです。準工業地域では、より高い建物の建設が可能です。大きなボリュームのものが建つ場合も考えられますし、相続によって必要以上の税を払わなければならない地主さんの敷地は、細分化されて売却される可能性も考えられます。特に都心の建売住宅などでは、二次市場が将来あるのか、というところまで敷地が小さくなる場合もあります。ひとたび条件が変れば、周辺の環境は一変します。

「土地を購入される際は、現状以上に将来的な周辺環境の変化を読み込む事がとても重要です。今の時点で理想的なプランが将来的にネガティブな要素に変わってしまうこともありますが、不確実なことを説明するのは簡単ではありません」と、設計者の内海智行氏は言います。せっかく建てた建物をその地域でどう使いこなしていくか、長い目で見た判断が必要です。

「建物を建てるオーナーは、地域のプロデューサーとしての意識を持つべきですね。『愛着効果』と呼んでいるのだけど、所有することが継続的な喜びとなるような建物にしてあげたい。オーナーの趣向だけではない周辺との協調性が長い時間をかけて育まれる・・・設計者はそのきっかけになればいい」と内海さん。

「建築家はおおざっぱに言えばデザイン・アーキテクト、ビジネス・アーキテクト、コミュニティ・アーキテクトの三つのタイプがあって、それぞれ仕事の領分と優先される意識やプロセスが微妙に違います。
デザイン・アーキテクトは、主に造形の意識が高く、いわゆる作品という形で建築を呈示してきたタイプです。ビジネス・アーキテクトは、インハウスであればなおさら経済的な利益が優先されるでしょうし、流通していくためには必要なことです。
最後のコミュニティ・アーキテクトと呼ばれる人たちは、まだ業態が広く認識されていませんが、複数の建て主の感情的な思いを引き受けて長い時間もかけて整理していく。昨今の建築家はそれぞれの役割をバランス良くミックスしていると思います。しかし、デザインはソリューションをプロバイドするビジネスですが、そんな中でのコミュニティ・アーキテクトとしての役割は益々重要になっている気がします」と分析されています。

長寿命の建物を建てる施工会社としては、より有効に活用いただける建物を作ることができれば言うことはありません。オーナーの思いや地域への影響を十二分に考えられた、二次使用、三次使用にも耐えるデザインの建物が街を形作るーそんなお手伝いができれば何よりです。

そして震災以来、地域コミュニティの重要性が方々で語られていますが、そもそも地域の意向といっても、その土地に古くから暮らしている人たちの意見を聞くということだけでなく、今後50年、100年生きていく若い世代、つまり地域の未来を考えたときに、その担い手を盛り立てていくことが大事です。コミュニティ・アーキテクトはまさにそのような役目があると思われますし、コンストラクター、つまり施工者もまた、その相方として、お役に立てることがたくさんあることでしょう。