184-1 恵比寿

2015年7月14日 at 4:27 PM

 

今月の写真は、恵比寿に建ち上がった、おしゃれな共同住宅です。恵比寿は、代官山や青山と並ぶ女性に人気のスポット。隠れ家的なレストランや雑貨店がそこここに点在しています。もともと駅周辺から少し離れると山の手の閑静な住宅街が広がっており、「住みたい街」では常に上位にランクされているところです。

地名の由来は実は駅名から、というか、ビールのエビスが先。1889年(明治22年)発売されたヱビスビールは、1900年パリの万国博覧会で金賞を受賞。大人気となり、1901年、製造販売していた日本麦酒酒造会社(現在のサッポロビール)のビール出荷用の貨物駅が山手線上に開設され、ビールの商標にちなみ、駅名を「ゑびす」と命名しました。「下渋谷」だった周辺の地名も1928年「恵比寿通」と名付けられ、その後いくつかの町がまとまって「恵比寿」となりました。つまり、ビール名が地名になった、広告的にはこれ以上はないというくらい、力のある名前だったのです。

さて、そのビールのラベルにもありますが、「えびす」は七福神の一柱。狩衣を着て、右手に釣竿、左脇に大きな鯛を抱え、にこやかに笑っている像が恵比寿駅にも鎮座しています。レトロ感あふれ、しかも商売繁盛を呼び込む福の神は、新しい時代に多くの人に飲んでほしいというビール醸造会社の願いを表したネーミングでした。戦時中、いったん途絶えた製造が28年後に復活し、再び人気を取り戻しています。ビール工場の跡地は、再開発され「恵比寿ガーデンプレイス」という都市型空間に生まれ変わりました。

しかし調べてみると、「えびす」という字はたくさんの表記(夷、戎、胡、恵比須、蛭子、恵比寿など)があり、またいろんな神様として信仰されてきた経緯があるのですね。夷といえば、中央政府からみた東国の敵、異邦の民であり、戎も中国の西北の遊牧民族をさす蔑称です。
一方、例えば、イザナギ、イザナミの命が生んだ最初の子は蛭子命(ひるこのみこと=漫画家でこの字でえびすと読ませる人がいますね)という名前が表すように歩けなかった子だったため、海に流したという記載が記紀にあります。流された蛭子命はどこかに漂着したという伝承が生まれ、海から流れ着くものを意味する「寄り神」として信仰されるようになったということです。
海から流れ着くものには、時には鯨など豊漁をもたらすものもあり、クジラやジンベエザメそのものを「えびす」という地域もあり、幸運をもたらす漁業神として信仰されるようになりました。その代表が西宮神社で、関西の方は「えべっさん」としてすぐに思い浮かぶでしょう。漁業神として祀っていた神を西宮に移し、その後は、市場町として栄えた西宮で、「商売繁盛の神」「福の神」としても祀られるようになりました。
17世紀になると、神社の周囲に住む人形操りの芸能集団「傀儡師」が全国を巡回してえびす信仰を全国に広めたということです。

本来の姿は、ときたま現れる外来からの幸運、だからこそありがたい「福の神」なのでしょう。新しい入居者の方には、恵比寿で幸運をつかんでいただきたいものですね。あるいは幸運を運んできてくださる方が入居してくださるかもしれません。