191-1 新陳代謝

2016年2月12日 at 3:41 PM

「YON-KAビル」 撮影:西川公朗

 写真は、北青山に昨年完成した、スパサロンの入ったテナントビルです。
「いつまでも若々しく、美しくありたい」というのは、多くの女性の願いです。その願いに応えて、ここ青山にも多くのサロンがありますが、パリのサロンを母体とし、グローバル展開するこのスパサロンには、大切なお客様をお迎えするお店のイメージを壊すことのない、洗練され、かつ優しい内装デザインの店が収まることのできる建物が必要でした。コンクリート打ち放しのビルが、オープンになりすぎず、しかし明るいファサードでお客様を招きいれています。
 この表参道と国道246号線の間の青山一帯は、もともと静かな住宅街でしたが、その合間に小さな店舗が散在するようになり、さらに表通りに次々と建てられた洗練されたブランドビルの波を受けて、内側の小さな通りでも古くなった建物が新しく耐久性、デザイン性に優れた建物に建て替わってきています。特に表通りに繋がるところには、いくつかの建物がまとまって大きなものに建て替わってきている場所もあります。
それは、まるで身体の新陳代謝が行われているような感覚です。これまで弊社が完成させたいくつかの建物も、小規模ではあってもそれまでの場所が持つ雰囲気を一新させ、通りを新たに効果的に生まれ変わらせ、街並みに心地よさや賑わいを生み出してきました。その場に立ち会うことで、私たちはワクワクし、作り上げた充実感をお客様や関係者と共有できて、そのことが建築に携わる者の仕事の意味だと改めて思います。
都心のように、その土地に対するニーズが高いと、新陳代謝も順調に行われますが、郊外になるにつれコストパフォーマンスが厳しくなり、当初の目的通りに着地点を見出せなくなって、代謝も滞ってしまいます。
 「TOPIC」のコーナーで講演会のご紹介をした青木淳氏は、弊社で今、施工させていただいている日本橋の店舗の設計者でいらっしゃいますが、新潟県の十日町市に分室を設け、そこに常駐する若いスタッフが十日町市の中心市街地の活性化計画に力を発揮しています。中心市街地は、多くの日本の地方都市と同じように以前より活気を失って、店舗も人の賑わいも減ってしまっていたのですが、地元の建築家たちや、「ブンシツ」という活動自体が地域の人たちの力になって、いくつかの試みが行われています。生半可ではない活動を通して、「問題はハードを作ることよりも、人の『気持ち』を作り、継承していくことの大切さだ」とスタッフの方たちは述べています。
都会の空き家の問題が大きくなっていますが、そもそも空き家にする前にできること、つまり家族間の良好なコミュニケーションや、建物の基本的な手入れ・管理を今一度考えたいものです。建築家の方々や、建設会社がお役に立てる場面がまだまだあると思われます。新陳代謝は日々の人間の身体の更新であり、未来への遺伝子を残すことが目的なのですから、建物もまた、老化が全てを覆いつくす前にその気持ちを上手に伝えていきたいものです。