204-1 街をつくるオ―ナー

2017年3月16日 at 10:36 PM

 

lani_00

「lani ebisu(ラニ・エビス)」撮影:海老原一己/GlassEye Inc.

 

 写真は、この度恵比寿に建ち上がった共同住宅です。恵比寿は、2016年、某住宅総合雑誌の「住みたい街」NO.1に輝いた、人気エリア。外食やショッピングに便利であり、なんといっても交通アクセスの良さが抜群で、賃貸相場も都内ではかなり上位です。建物のオーナーは不動産を他にもお持ちで、不動産情報に詳しく、設計の腰越耕太氏は、コンサルタントとともに、収支と建築コストを算定し、ボリュームを確保できるようプランを提出されました。南側は低層住宅街となっており、最上階からの眺めは素晴らしく、オーナーも大変満足されているとのことです。
 その賃貸部分は住宅としてはもちろん、事務所・店舗使用も見込めるだろうと、キッチンと風呂を思い切ってそぎ落とすことにしました。住まう場所として魅力的な恵比寿ですが、事務所や、ネイルサロンなどの小さな店舗も周辺にはたくさんあります。結果的に、竣工まもなくすべて入居者が決まり、事務所としての利用を予定している方が約半数でした。狙いは的中したのです。
 一方、腰越氏は現在、別の共同住宅の設計も行っていますが、同じ単身者向けでも、こちらは逆に住宅としての機能を充実させているとのこと。計画地である大田区で、ターゲットは、空港でお仕事をされている方々です。キャリーケースがおけるトランクルームを設けたり、キッチンは自分で調理がしやすい、充実したものにしています。長旅から帰ると、自分で普通の料理を作って食べたくなるもの。旅の疲れを癒せるよう、浴室や洗面も充実させています。
「共同住宅も必ずこれで行かなくてはならない、というルールがあるわけではない」と腰越氏は言います。そのエリアをきちんと分析し、明確なターゲットを設定することが、他との差別化を図る上でも重要です。
 2015年、恵比寿駅近くに自宅兼事務所を建設された腰越氏ですが、建蔽率60%、容積率200%の三角形の土地に、正方形の建物を建蔽率30%で建て、敷地の3か所に小さな庭を残しました。恵比寿の周辺は小さな土地も多く、建蔽率いっぱいにして建てるのが一般的ですが、少しでも息苦しさを回避したかったそうです。「ぎりぎりに建てると、かえって死に地が生まれるんですよ」と、少しでも地面があることの意味を教えてくれました。
 「単にボリュームの収支だけでワンルームマンションを建てて終わりでは、5年もすれば空き室ばかりになってしまう」と危惧されているのは、P4の「建物再訪」で話を聞かせていただいた、練馬の集合住宅のオーナー芹沢尚弘氏。ご自身は、周辺の不動産をいくつかお持ちの3代目として、練馬駅周辺の環境を良好にするために、所有する共同住宅や貸家の将来性を考えています。入居者だけでなく周辺の住民の方々にも役に立つ建物のあり様を模索し、建物のメンテナンス、求められている建築をつくりたいとおっしゃいます。練馬駅周辺でも、「ワンルームは建てたものの、5,6年経って入居者が埋まらなくなってきている賃貸マンションもみられる」とそれらのオーナーの勉強不足を指摘されています。
 小さな建物でもその存在感が周辺に良い影響を与えてくれる、そんな建物を生み出すオーナーの力強いパートナーとして、建築家の方々と施工会社は、ますます信頼関係を築いていかなくてはならない、と感じます。