177-4 スクラッチ・タイル―震災復興の象徴

2014年12月28日 at 2:10 AM

 

今回、フロントラインで紹介させていただいた、「奥野ビル」を特徴付けているのが、スクラッチ・タイルと呼ばれる、外壁タイルです。 明治時代に洋風建築が導入されて、東京では耐火構造としての赤レンガ造りの建物が建ち始めました。東京駅などが代表的なものですが、関東大震災を受けて、鉄骨の入っていなかった赤レンガ造りのものが壊れたこともあり、無事だった、帝国ホテル(建築家、F・Lライトの設計)のスクラッチ・タイルが注目されました。耐震耐火性能に優れたスクラッチ・タイルが、官庁や大学、そして、復興住宅の建築を目的として組織された「同潤会アパート」に利用されていったのです。
スクラッチ・タイルとは、タイルの表面を櫛( くし)引きして平行の溝をつくり、それを焼成した粘土タイルで、焼き物の色や、櫛引の手作業的な感じが、建物に表情を与え、昭和初期に多く使用されました。が、戦争や、その後の経済成長の中で、次第に使われなくなりました。
同潤会のアパートメントは、多くが建て替え時期を迎えて、取り壊されてしまいましたが、ほかにも今でも残っている建物がたくさんあります。
今月ご紹介した、「奥野ビル」のほか、東京大学、学士会館、大隈講堂などの学校施設のほか、横浜にも多数みられます。
震災の復興建築としての個性をもたらした素材、案外身近な建物にも利用されているかもしれません。東日本大震災の後、復興建築として象徴されるような建物が、私たちの時代でも作っていければ、と感じました。