224-2 Kaede(かえで)
周囲と調和し、多彩なプランを展開する賃貸併用住宅
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①北側全景。私道に面して、向かって左側がオーナー邸、右側が賃貸住戸部分。建物西側、私道の奥にもオーナーの賃貸住戸が建つ
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②東側全景。亜鉛メッキ鋼板の外壁、鋼製ルーバー、打ち放しコンクリートの外壁。敷地はレベル差があるので、1階室内と外のデッキのレベル差が連動している
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③オーナー邸1階エントランス。外のアプローチから続く石貼りは、トルコ産大理石のエクアトール
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④オーナー邸1階リビング。天井高確保のため直天井とし、他の1FLより500mm下げている。リビングに、デンマーク製のソファー「Haiku」、ダイニングにはハンス・ウェグナーの「PP701Chair」、照明は、ルイス・ポールセン社の「スィルク」を使用
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⑤賃貸側のエントランス。溶融亜鉛メッキ鋼板貼りに建物のサインが浮かび上がる
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⑥賃貸部分1階階段室。床の色使いで変化を付け、建物奥に庭の植栽が臨める
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⑦賃貸部分住戸G。吹き抜けのあるリビング
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⑧メゾネットには専用の屋上テラスがついている
以前建築した上鷺宮の「SAKURA」という集合住宅の建て主S様から、引き続きの設計依頼による建築である。近くにも11年前にご自宅+19戸の集合住宅「MOMIJI」を建てている。今回は、父上の住まわれていた木造住宅を孫にあたるお嬢さん夫妻の自宅との賃貸併用住宅に建て替えるという計画である。
敷地は閑静な住宅街の私道を取り囲む一連の建物の公道側角地に位置する。「SAKURA」は鉄骨造だったが、今回はRC壁式構造の建物で、杉本実型枠コンクリート打ち放しと、「SAKURA」と同じ溶融亜鉛メッキ鋼板、アルミルーバーを使用し、統一感をはかった。構造設計は、梅沢先生にお願いした。
建物の高さ制限が10mの地域で、4階建ての建築をつくるにはプランニングと断面計画に工夫が必要であった。北側に私道があったため天空率や日影図のチェックによりそれが可能となった。
オーナー邸は南東の角に1,2階メゾネットで配置した。アプローチは白いストライプの入った大理石を使用し、エントランス内部までその仕上げが入り込んでいる。リビング・ダイニング・キッチンは、1FLより500mm下げて、天井高を確保してのびやかな空間になることを目指した。
一方、賃貸8戸は独立したアプローチをとり、オーナー邸との違いを持たせ、溶融亜鉛メッキ鋼板で設えた。解放感ある階段と共用廊下にはそれぞれ違った色の床材を使用し、あまり禁欲的にならず楽しくつくっていくことも心掛けた。1階から2階は1DK5戸、3-4階には3戸の吹き抜けと屋上テラスのあるメゾネットタイプの住戸を設け、そこには家族のパーティやイベントを可能にする空間を備えた。
建物はいつもあまり神経質にならず、あっさりと作るのがいいと思っている。空間の豊かさの追求はもちろんであるが、使用材料など毎回どこかでチャレンジしている。自然の材料、石や木、コンクリートなど、素材そのものの持つ力と施工する人の手の跡が残るものを予算内で選択していきたいと思っている。
外部と内部の構成、連続と変化、その切り替わる狭間に建築空間を作る醍醐味があるとも考えている。
外部と内部の構成、連続と変化、その切り替わる狭間に建築空間を作る醍醐味があるとも考えている。
(田村芳夫氏 談)
所在地:中野区
構造:RC造
構造:RC造
規模:地上4階
用途:共同住宅
設計・監理:田村芳夫 秋吉英史/アトリエ・リ・ガテ都市建築計画
設計・監理:田村芳夫 秋吉英史/アトリエ・リ・ガテ都市建築計画
構造設計:梅沢良三 三野裕太/梅沢構造建築研究所
施工担当:瀧澤
施工担当:瀧澤
竣工:2018年8月
撮影:上田宏