241-2 善光ビル

用途: 竣工年月: 場所: 設計: 構造: 規模:

お寺の敷地内に建替えられた、シンプルモダンなテナントビル

 

表参道の大通りから東側の人通りの多い商店街に入り、1 本目の私道を南側に通り抜け、L字に曲がった先の奥まった旗竿状の敷地であり、都心の秘境である。東側には善光寺の境内があり、都市の喧騒も全く聞こえない閑静な環境がある一方で、西側には南欧の教会風の結婚式場が建てられ、東西の宗教が交錯する場所であった。2階建ての古いアパートを解体し、事務所ビルへ建て替えることとなった。
前面道路側の旗竿部分はアプローチとして残した。アプローチ空間をしっかり取ることで引きが取れ、ファサード全体が見えることで格調が高く感じられるからである。奥の広い部分に長方形の平面形状で4階建ての整形の建物を計画した。4階建てにすることで教会風建築を遮蔽し、「落ち着いた雰囲気を保ちつつも表参道らしいしゃれた外観」となるように配慮した。
平面構成は、南側に3分割可能な事務所空間を取り、北側に共用部を配置し、小規模テナントも募集可能とした。1階の東側には奥の共用部に通じるエントランスを設け、北側の緑が見通せる構成とした。
1階の賃貸スペースは店舗的な使用も可能なように、エントランス脇に独立した入口を設けた。
外観は、杉型枠のコンクリート打ち放しの腰壁部と、黒塗装の壁と開口部がストライプ状に積層されたシンプルなデザインとし、グレーと黒の配色がお寺の環境とも馴染み、なおかつモダンな表現が可能となった。壁の位置をランダムに配置することで、リズム感のあるファサードを構成できた。ブラインドの外側も黒くすることで開口部が黒光りすることも狙っている。
インテリアは、白い壁に対して天井は躯体を露出させ黒色で塗装した。露出のエアコンや配管ダクト類も黒色塗装で存在を消し、限られた空間の中で高さの感覚を無くすことを狙った。照明器具も蛍光灯ではなく、配線ダクトにスポットライト配置としてリビング感覚でまとめている。画一的なオフィスではない表参道らしさを出した。今や多くの事務をパソコンで行う時代である。机上照明が均一に明るい必要はなく、適光適所で明るさを調整できる方がよい。働く人が各自明るさを調整することで、空間に濃淡が出て落ち着いた感じとなり、仕事にも集中できるようになる。
設計時には、各階3分割可能な入居者募集を想定していたが、「表参道にアンテナショップを」と探していたオリジナルタオルのメーカーと、「できるなら一棟借りのテナントが望ましい」というオーナーの考えが一致し、1階はオリジナルタオルのショールーム、2-4階は事務所として利用されることになり、2月初旬にオープンした。
大通りから奥まった隠れ家的な環境が、却ってオンリーワン的なブランドコンセプトを愛する顧客との関係性を演出していくことだろう。
佐藤尚巳/佐藤尚巳建築研究所
所在地:港区構造:RC造
規模:地上4階
用途:事務所(一部ショールーム)
設計・監理:佐藤尚巳/佐藤尚巳建築研究所
施工担当:堤・幾原
竣工:2019年12月
撮影:尾形和美
2020年4月11日 at 8:16 PM