246-2 ESCENARIO MINAMI-AZABU (エスセナーリオ南麻布)

用途: 竣工年月: 場所: 設計: 構造: 規模:

都市生活者のための上質な空間

人とできるだけ近づかないことを「日常」とする世の中が訪れるとは、思ってもみなかった。いつもなら、聞き上手の編集さんのインタビューを楽しんでいるはずなのに、こうして拙文を書いているのは、その「日常」のおかげだ。

「人が集まる」「集まって住む」も「個体間距離」も、どちらも私には馴染みのキーワードだし、建築家はマクロミクロ、過去未来、ローカルグローバル、視座を変えてみることも得意技だ。

そういえば辰さんとのおつきあいも、東中野の『BALCON』以来もう20年になる。『二軒家アパートメンツ』もお世話になった。
無駄のない合理的なプログラムで、レンタブル比を極限まで高める。集合住宅の場合は、特に余計な装飾は削ぎ落としてコストを下げる。そういった姿勢に阿吽で応えてくれるから続いてきたお付き合いなのだと思う。
節目節目で予算調整の難局も救ってもらってきた。環境、社会構造、歴史、経済原則といったコンテクストのなかで、より豊かな暮らしを探究する。それが永続きする居住空間の本質なのではないだろうか。

社会の大きな変化を受容できる懐の深い建築。『エスセナーリオ南麻布』の界隈は資本主義経済の足跡で埋め尽くされている。安藤さん設計の豪邸はそのひとつ。江戸御府内最古の店蔵もあれば、大学の先輩飯田義彦さん初期の住宅もある。

豊かな界隈の中で、生活感が透けて見えない質素な外観の中に13戸の多様な生活の器が組み合わされている。ペントハウスパラダイスからの眺めを規定するランドマークは特別だ。
竣工直後にコロナ禍に出会い、入居者モデルに大きな転換があったそうだ。社会は変わり続けているのだ。近くにいて気がつかないより、ほどほどに離れて深く知るのもまたよし。パラダイムのシフトがこんなにも簡単であることも体験した。いい方向に転換できるなら、これほど勇気づけられることはない、のだが。

木下道郎/ワークショップ (寄稿)

 

所在地: 東京都港区南麻布3-4-5
構造:RC造
規模:地上3階、地下2階
用途:共同住宅
企画:㈱モデリア
事業主:秀光建設㈱
設計・監理:木下道郎/ワークショップ
施工担当:山川・田中
竣工:2020年3月
撮影:バウハウスネオ

 

2020年9月11日 at 9:38 AM