266-2 そだちのシェアステーション・つぼみ

用途: 竣工年月: 場所: 構造: 規模:

「出来上がった時に少し古い」くらいでちょうどいい

このあたりは近くを流れる荒川水系柳瀬川支流の空堀川(からぼりがわ)の洪水時に水位が上がる地域である。ハザードマップを見ながら検討し、斜線の問題などをクリアした上で1 階のフロアレベルを600mm から800mm 上げることにした。前面道路からエントランスまではなだらかなスロープと階段を設け、その手前のウッドデッキは子どもたちの発想でさまざまな使い方ができるよう、一部を上げてステージのようにしたり、掘り込みを作った。

プランの打合せ当初、2階のショートステイで利用する子どもの個室が南にあるべきか、北にあるべきかを話し合い、設計者としては、はじめ南側に配置していたが、個室は北側でとご意見をいただいた。子どもたちを部屋にこもりきりにしない、リビングに子どもたちが常にいることが大切で、パブリックな部分を優先して快適にするよう南側に配置し採光などを考慮した。また、室内には意図的に大人の目が届かないと感じさせる場所をつくり、管理する側が把握し、適度に子どもが一人になれる場所をつくりだした。ともすれば平面図での打合せは危険なところ探しになってしまうので、大小さまざまな模型をつくり空間の全体像を議論し、検討した。

南側の大屋根は新古を超えて変わらない、神社や仏閣の屋根から着想しており、交流スぺースとデッキスペースとの関係をスタディしていくなかで今のかたちのやわらかい反りのあるワッフル構造となった。

内外壁に用いた古材は、経年変化と共に風合いを楽しむことができる。工業製品と違い製造中止などがないので、材種が異なったとしても部分的に張り替えることが可能であり、色味の違いも味になる。そうした意味では工業製品よりも長寿命といえる。出来上がったときに少し古く感じるくらいでちょうどいい。人も建物も、「時」とともに味が出る方が魅力的だろう。

子どもたちの手に触る部分はできるだけ無垢なものを使うことや、「時代が経っても変化を楽しめる建築」という提案を、理事長や施設長をはじめ、関係する皆さんの理解と協力のおかげで実現することができたことに心から感謝している。

(伊藤潤一建築都市設計事務所/伊藤潤一氏 談)

 

所在地︓清瀬市
構造︓木造 規模︓地上2 階
用途︓寄宿舎・児童福祉施設
設計・監理︓伊藤潤一+伊藤潤一建築都市
設計事務所
構造設計︓多田脩二構造設計事務所
設備設計︓テーテンス事務所
木架構(屋根)︓シェルター
施工︓鯨津・堀江・山本
竣工︓2022 年3 月 撮影︓アック東京

2022年5月13日 at 4:01 PM