81-2 KATA House (宇名根の家)
周囲の環境を取り込んだ、こだわりのRC住宅
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建物全景。 白い遮熱塗料シスターコートの外壁が角度で色の違いを見せる
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1 階から中1階を臨む。 1 階はキッチン ・ ダイニング。 キッチンのカウンタートップはコンクリート打ち放し。 長さ 4m、 高さはご夫妻とも長身のため 94cm
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2 階西側個室。 畳屋の木造家屋と木々が広い窓から望める
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北東側屋上テラス。 こちらからは少し離れた場所の高い木々が見える
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2 階南側個室と間仕切り家具。入れ子状の家具は両側から利用できるもの。 ご夫妻とも大量の本を所有されており、 本だけでなく絵や雑貨などいろいろなものが置けるので便利だ
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2 階東側個室より階段室方向を臨む
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地下1階エントランス。 地下 1 階は玄関とアトリエを兼ねる
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1階キッチン・ダイニング。床は人研ぎテラゾーのような仕上がりのコンクリート
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内装では、建て主のタルディッツ氏が副校長を務め、加茂氏も教鞭をとっている「ICSカレッジオブアーツ」の先生と学生に、家具の製作を依頼しています。 撮影日にも地下1階のアトリエ部分や、キッチンの家具などを、インテリアマイスタートレーニー科の田村栄敏先生(写真右)の指導の下、学生さんが取り付けていました
まず、北西側に隣接する畳店の木造家屋と大きなケヤキの存在に魅せられた。建物の前の道路もまだ舗装されておらず、自分の家に庭を設けるより、周囲
の自然をふんだんに取り込み、限られた敷地を最大限に生かす建物を作ることが最良に思われた。
区の条例により、隣地境界から1.5m、道路から2mセットバックしなくてはならない。また道路の角切りがある分、四角形のプランにこだわらず、境界に沿った形にすることで、空間を建物の内部に自在に配置することとした。
八角形になった建物は、1辺おきに開口部を設けている。それぞれの方向に異なる自然の景色を楽しむことが出来、光が建物内部にいろいろな形で入り込
む。なんといっても、リビングの大きな窓から見えるケヤキが、四季折々の変化を見せてくれるだろう。
外壁は、白い遮熱塗料の壁が、1日の光の中で微妙な色彩の変化を見せる。
風致地区の境界にはなるべく生垣をつくるという条例に従い、鉄筋を境界上に立て、2年ほどかけて植栽をはわせて緑のフェンスを形成する。我々も周囲にささやかでもお返しをすることができればと思う。
地下1階のアトリエと玄関は、家で仕事をするためのスペースである。1階はダイニング、中1階はリビング、2階は各人の寝室という3つのゾーンを基本の構成としているが、家族がその時々で各人の居場所を見つけ、心地よくすごしてくれればいい。個室も間仕切り家具を置いているだけのゆるい関係である。家具は入れ子になった本棚を兼ね、コンクリート打ち放しの内装に柔らかさを加えている。
温熱環境については、地下1階、1階は土壌蓄熱暖房「サーマスラブ」を採用したので、比較的暖かい。おかげで下層階は入居後日が浅くても過ごしやすい。上層の階には、エアコンもヒーターも入れていない。家具の設置なども含めて、まだ現在進行形の家である。竣工時に全て完成している必要はない。徐々に作り上げていく楽しみもある。
所在地:世田谷区
構造:RC造
規模:地上2階 地下1階
用途:専用住宅
設計:加茂紀和子、マニュエル・タルディッツ、原下哲哉
担当:寺井
竣工:2006年12月
撮影:編集部