47-3 神宮前5179計画(ベルコート神宮前)

表参道ディオールの脇道をキャットストリートと平行に250メートル程進んだ右手に、黒い建物が建ちあがりました。店舗・賃貸住宅を併せ持つ個人住宅です。設計の桑原聡氏に話をうかがいました。

桑原:施主は神宮前に生まれ育った方です。敷地は施主が幼少時に過ごされた場所で、その後、「芙蓉荘」という名の木造アパートとして利用されていました。
4年程前から建て換えの計画があり、プレハブメーカーの設計施工での計画により、着工直前までこぎつけたのが2年前の3月でした。しかしそのままのプレハブ案で、はたしてテナント付けができるのかどうか不安になった施主が、古くからこの地で不動産仲介業を営む豊田土地建物に相談し、計画がスタートしました。

-「借地権上の契約条項により堅固な建物が建てられない」「北側に高さ3Mを超える大谷石の擁壁を背負っている」などの悪条件を逆手にとって、計画は進められました。
桑原:検討の結果、2.5M掘り下げた半地下部分を、借地権上は基礎とみなすことでRC造として成立させ、大開口と高天井をもつテナントスペースを確保しました。そしてその上部に軽量鉄骨で鳥篭状にフレームを組み、3.6Mの天井高を確保した最上階部分には、施主の息子さん夫婦の住宅、中間階部分には貸室2戸を納めました。軽量鉄骨造とはいえフレームは開放的に扱い、大開口や横連窓、屋上を横に切取る天窓まで自由に配置したように見せています。フレームは全て200ミリ弱の壁厚の中に仕込みました。当初3日の予定だった鉄骨建方が1週間を超す難工事になりました。もちろん現場責任者である中川さんの、予算との辛い戦いがあったことはいうまでもありません。感謝。
-屋上に上がると、都心ならではの景色が広がります。表参道のファッションビルがすぐ目の前に並び、休みの日にはキャットストリートを歩く若者が眼下に眺められます。
桑原:改めて敷地周辺を歩いてみますと、店鋪併用住宅が実に多いことに気付かされます。古くからの住宅が1階部分だけテナントスペースに改装されていたり、新築であればテナントスペースの上階にオーナー住宅があったり。しかし、そのどれもが気をつけて見ないとそれと解らない位、街に背を向けてひっそりとたたずんでいるように見えます。このプロジェクトではそうした姿にしたくはありませんでした。ですから思いっきり街の変化を見渡す窓を数多く取り入れています。施主の暮らしも、街の変化と共により高いところへステップアップしていくものと期待をこめて設計しています。
用事があって近くを通るときは必ずふらっと寄り道して行きます。そんな時に中の生活の雰囲気がほんの少しだけ透けて見えたり、テナントスペースの内装工事が進んでいるのを見下ろしたり、散歩の末にふと見つけた宝石箱を眺めるような気分になります。そんな気分を街行く人々に与え続けることができたらと願っています。

構造:鉄骨造、一部RC造
地下1階 地上2階
用途:共同住宅 物販店舗
設計:桑原聡建築研究所
撮影:ナカサアンドパートナーズ

 

2004年2月10日 at 4:21 PM