37-1 Villa Porta Bella

竣工年月: 場所: 設計: 構造: 規模:

「住まいを建て替えたい」という夢は誰もが持っています。しかし、住まいはお金を生みません。先月号でご紹介したKさんは、買い替えや借り入れなどあらゆる方法を模索し、ようやく賃貸マンションの一部を自宅にして賃料収入でローンを返済するという計画にたどりつきました。ところが、自宅の面積が大きくなり、どうしても収支が合いません。建築家やメーカーからも「これだ!」というプランは出てきませんでした。
弊社がKさんに出会ったのは、そんなときでした。「まず成り立つ案から作りましょう」ということで、自宅を削り、銀行が納得するプランを作り上げました。それから賃貸面を維持し、コストをあげないで、Kさんの要望をかなえる工夫をしていきました。仕上げを止めて、地下を作り、節約と贅沢を整理しました。
Kさんは、日展の日本画家です。制作を行うアトリエ、200号近いサイズの絵の数々を収納するスペースをまず確保する必要がありました。また見晴らしのよい上層階に自邸をと考えられたそうですが、「むしろ1階をアトリエにする方が体力的に今後は楽ではないか」という案に納得されました。地下室への絵の搬入も階段にスリット状の隙間を作ったため、スムーズに出し入れが出来るようになりました。
ご主人はコンクリート打ち放しを希望されていましたが、やはり美大出身の奥様は、「そのままではつまらない、どこかに、普通のマンションとは違うデザインを持ってきたい」と考えられ、門扉にこだわることにしました。門扉など金物は、注文すると、かなりの金額になります。そこで後輩に紹介されたのが、先月号でご紹介した若い鍛冶屋の豊口陽さんでした。「材料代だけもらえばいいですよ」というノリの豊口さんでしたが、全体のスケッチも気に入った奥様は、門扉だけでなく、ネームプレート、手摺のオブジェ、照明、郵便ポストも彼に作品を作ってもらうことにしました。そのために外壁の石にはこだわり、割肌の割石にしました。でも、駐車スペースは節約し、石畳用のタイルを貼りました。
この家は、お嬢様世帯との2世帯住宅でもあります。1階を2所帯にわけ、南庭を通して外から行き来することにしました。内壁に穴を開けることまではしたくなかったそうです。庭に面した、ダイニング・キッチンには、有名メーカーのシステムキッチンも検討しましたが、作り付けのものを家具屋さんに注文し、出来栄えにも満足されています。特に、床は掃除がしやすいように、ビニール製のクッションフロアにしました。絵の制作作業もあり、お孫さんもまだ小さいため、神経質になることがないような素材に決めました。「大勢の人が集まる場所にしたい」という社交的な奥様は、ここに長いテーブルを据える予定です。
ダイニングの脇の和室は、少し高くなっており、掘りごたつが設けられています。床は畳ではなく、スモークコルクを貼り、しまいこんでいた和ダンスがここには納められます。この和室の障子も、本物ではありません。和紙ではなく、メンテナンス不要のアクリル製にし、押入れにも同じものを使いました。和室の脇の階段を下りると、絵の収納室とは別にもうひとつ地下室があります。ここは、大勢の来客を迎えたときの、多目的ルームとなります。オーディオ・テレビが備えられることになるそうです。
こうして、価格の高い本物と普及品を上手に選ぶ足し算と引き算を繰り返しながら、趣味やスタイルを重視した、楽しい家作りが出来ました。(豊口さんの作品づくりの様子を、別のシートに作成しました。ご覧ください。)

所在地:杉並区
構造:RC造
規模:地下1階、地上3階
用途:共同住宅
設計・監理:辰一級建築士事務所
竣工:2003年4月

2003年5月30日 at 2:13 PM