35-2 宝泉寺庫裏

用途: 竣工年月: 場所: 設計: 構造: 規模:

 

SC35号トーク「お寺」から

横浜市鶴見区の宝泉寺は、創建500年の歴史を持つ北条家ゆかりの格式のある禅寺です。今、弊社で客殿と事務所の増築工事を行っています。本堂には聖観世音菩薩像、境内には『新編武蔵風土記稿』に濡れ仏と記された釈迦銅像があり、池と石と緑が調和した禅風庭園が素晴らしい景観を呈しています。今月は、松阪副住職様にお寺について、お話を伺いました。

―立派なお庭で、横浜市の広報にも掲載されていますね。
松阪:ええ、庭はいつでも気持ちよくご利用いただけるように手入れをしています。ドラマのロケーションにも利用されたこともあります。

―東屋や葉牡丹の植え込みもきれいです。こちらの客殿と事務所の建物も、ガラスブロックを使った、モダンなデザインで、とてもオープンな雰囲気です。茶室もあるそうですね。
松阪:現在の客殿と庫裏の建築は、ご縁があって、10年ほど前にフィラデルフィア在住の川崎一美氏に設計をお願いしました。東京での設計協力はGC設計(木村浩氏)でした。斬新なアイディアをいくつも出してくださいました。中には透明な建物が裏の墓地の方まで伸びているデザインもあったのですが、墓地の移動には100年はかかると(笑)、あきらめていただきました。でも気持ちのよい建物を作っていただきま

した。
―とても由緒ある古いお寺ですが、現代的な面もあるのですね。
松阪:今度増築中の庫裏に事務機能を移転して、客殿はもっと皆様にお庭を楽しんでいただく、お寺で気持ちよくなっていただくスペースにしたいのです。
私は、お寺というのは、そもそも生きている人のためにあるものだと思っています。お葬式のときだけ、死んだ方を弔うためにだけあるものではなく、今生きている人の安寧の場所として、存在しなければならない。昔は、人々の心を癒すために機能していたわけですが、現代はその役割を果たすいろいろなものが別にあります。カウンセラーであったり、アロマテラピーなど健康産業であったりして、お寺には葬式のときにしか行かない、という人が多く、暗いイメージを持つ人も少なくないですね。でも本来、寺とはそういうものではなく、いつでも訪れた人の気持ちが落ち着くような場所にしたいと思いま
すね。説法、そして心休まるお庭を見て親しい人たちと安らぐ時間を持つ、そのためにいろんなことをしたいと考えています。

―確かに昔はお寺がもっと身近であったかもしれません。
松阪:今、世の中はとてもおかしなことがまかり通っている、考えられないことが日常おきています。人々の心が殺伐としていると感じます。そういう中で、寺が今後とも果たしていく役割は大きいと思います。

―増築する事務所の部分とは別に、ご自宅の居住スペースも今回改修工事をされていますね(他社施工)
松阪:客殿のパブリックな部分は現状を生かし、一方、自分たちの暮らしの部分は、とても自由な空間にしたいと考えて、古木や土を生かしたつくりにしています。

―外観は和風ですが、内部はステンドグラスのついたヨーロッパの古い扉を使ったり、壁に穴が開けてあったりして、遊び心に満ちていますね。
松阪:ええ、設計図面がなく、その場でいろいろとデザイナーの方が作っていきます。客殿の公の部分があるからこそ、こういった思い切ったこともできるのです。

―出来上がりが楽しみですね。本日はどうもありがとうございました。

2003年2月13日 at 4:43 PM