34-2 Trevista(東麻布集合住宅)

用途: 竣工年月: 場所: 設計: 構造: 規模:

東麻布に新たな集合住宅が建ちあがります。
内外装とも打放しコンクリート。建物の裏側は斜面になっており、その豊かな植栽を生かすため、また各室より東京タワーが見えるように、あえて北側に開口部を大きく取っています。各階それぞれの景色が楽しめる、都心ならではの賃貸住宅となっています。

所在地:港区
構造:RC造
規模:地上6階
用途:共同住宅
設計・監理:谷内田章夫/ワークショップ
竣工:2003年1月

 

SC34号トーク「『普通』をよりよく」から

谷内田章夫氏

今月は、弊社が1月にお引渡しをする東麻布集合住宅の設計を担当された谷内田章夫

氏にお話を伺いました。谷内田氏は、いわゆる「デザイナーズマンション」と呼ばれる都心の新しい形の賃貸集合住宅の設計を数多く手がけられています。

―今、デザイナーズマンションというものが人気を博しています。画一的にしか市場に供給されてこなかった賃貸住宅市場にやっと住まい手の要求を満たすものが出てきたという感じですね。
谷内田:「デザイナーズマンション」という言葉は、いろいろな方が都合のよいように使われていて、定義があいまいで、誤解される場合が多く、しっくりきません。
建築のデザインで必要なことは、建築家の個性や主義主張を出すことではなく、住まい手の個性をいかに引き出すかということです。そういった意味で個性的であるべきだと考えています。
理念の押し付けや表現行為としてではなく、与えられた環境条件をいかに有効に生かして建築の中に取り入れ、住まい手の自由を獲得するかが大切であり、その方法を発見することが建築家の役割だと思っています。自分はその中の居住者として、この場所でこんなことできたらいいなという思いを膨らませながらデザインします。
また、オーナーや管理者の立場に立って、長い間商品として競争力に耐える資産価値のある建物を提供するということも大切です。しかも今の市場だけではなく、20年ぐらい後までを想定して考えていかなくてはいけません。少し古くなっても、資産価値のある、リフォームしても住みたいという魅力のある建物です。そういった意味では、施工会社の技術力も相応に必要となってくると思います。

―公団もSOHO住宅など消費者のニーズにあった多様性のある住宅の供給に乗り出し、各地でいろいろなプロジェクトが展開されています。
谷内田:公共建築については、バブル経済以降日本の建築も豊かになってきて、その後ハコモノ行政もあったりして、それなりに以前より質の高いものが、(結果としてどうなったかは別の話ですが)登場しました。
しかし、住まいについてはなおざりでした。私はもっと身近な領域においてデザインの質が高くならなくてはいけないと思いました。戸建て住宅だけではなく、民間アパートという、ある意味で泥臭く地味なところにおいても、もうちょっと質の高いものになってもいいと思っていました。
ところがディベロッパーやハウスメーカーなどは、マーケットに対して横並びの商品しか供給してこなかったのが現状でした。公団や公共住宅も含め、都心居住で重要なはずの集合住宅が画一的で選択の幅が狭いと感じました。それで、建築家のデザインをもう少し一般の人たちに理解してもらいたい、気軽にとりいれてほしいと思い、実際のニーズに対応できるものを考え、提供してきたつもりです。

―そういう中で似たような建物が出てきましたね。
谷内田:分譲マンションでも、メゾネットやフリープランなどが出てきた動きを見て、少しずつ私たちがやってきたことに市場でも何らかの反応があったのではないかという気がします。

―ある意味では、他とは違うということよりも、建築全体に刺激を与える方がより重要であるということですね。
谷内田:大げさに言えば、「住まい」というのは 1 つの文化を集約したものです。それは絶えず新しくて良いものを目指すべきで、そうでなければよくならないわけです。お互いに刺激しながら、いろんなアイディアを出しあってよい循環となったほうがよいと考えます。だから自分ですることはすべてオープンにしてかまわないと思います。「これは自分のスタイルだからまねするな」ということでなく、全体としてよくしていく限りにおいて、模倣でも何でもしていただければそれでいいと思います。
ただ、部分的な形だけをとりあげ、それも「個性的」な建物であるかのようにされるとがっかりしますけど。同時に全体としてレベルアップに寄与することが伴えばいいと思います。

―施工会社も、これまでは「こういうやり方でこうすればいい」という方法にのっとってやってきた面もあるかと思いますが、より新しいデザインで、より合理的なものをどんどん使うようになれば、毎回
違う「新しいことをやる、新しい試みをするのが当たり前」というスタンスが普通になってくるのかもしれないと感じられます。
谷内田:そういう意味では設計事務所の情報交換だけでなく、施工会社とも緊密な情報交換を行っていけば、毎回現場が良くなるし、出来上がってくるもののレベルが上がってくると思いますね。
工程面、安全面なども研究しながらお互いに刺激していくべきですね。

―個性的な現場をいくつも経験されているからこそ言えることですね。
谷内田:一見単純そうで面倒くさい図面につきあってくださる数少ない施工会社さん、というか根性のあるいくつかの施工会社さんと今までつきあってきて本当に良かったなと思います。それからクライアントや設計者とこのような形でコミュニケーションを取ろうという姿勢は非常にいいことだと思います。やっぱりコミュニケーションをいかに円滑にやっていくかが、気持ちよく仕事をしていくことになるのではないかと思います。

―ありがとうございました。

 

2003年2月13日 at 2:52 PM