26-2 :新百合ヶ丘の家

用途: 場所: 設計: 構造: 規模:

 

「明るいコートハウスを作りたかった」というTさんの家作りのご紹介です。

Tさんのお宅のある新百合ヶ丘は、整然とした町並みの住宅街。Tさん宅の敷地は北側が道路に面しています。設計を担当した石井さんは、この北側道路という点に着目しました。普通北側というと、トイ
レ、台所、と不整合な面になりがちですが、明るい町並みの雰囲気をこわすことなく、健康的な表情を家に持たせるため、南側にバスを持ってきました。より暖かく開放的な南のバスの方が高齢の父君の
ためにも快適です。真っ白な外壁にはアルミの水切りパネルがアトランダムに設けられ、アミダ状の格子模様がリズムを生み出します。
それだけではなく2階中央部分に通路デッキを設け、道路側に対して閉鎖的にならないよう、南北方向に切れ目を入れることで光が差し込む効果をねらいました。南方向には数区画先にテニスコートが
あり、途中の家々も境界線にあたるため、テニスコートの緑まで目にすることができます。
そもそものきっかけは、Tさんがインターネットで『本気で家を建てる人のためのホームページ』を主宰する高野さんに仕事を依頼したことから。

Tさんは、大学の生物の先生です。「建物は環境に配慮したものを使うことが大切だ」ということについてはよくご存知です。やはり教育関係の仕事に長く携わり、現在も積極的に行動されている父
君との二人暮し。3、4案と紆余曲折を経て、鉄骨造で行くことに決定しました。高野さんは構造が専門なので、途中から石井さんにデザイン部分を依頼、「なるべくシンプルに」というTさんの希望をベースに、シャープでモダンな内装ができあがりました。
1階玄関のドアをあけると、すぐそこが大きなリビングダイニング。グランドレベルが75cmほど高くなっているので右側の階段を少し上がって、中へ入ります。「広い空間がいきなり目に飛び込んでくるよりも、下がった位置でエリア分けをするのも面白い」と石井さん。それでも視覚を一旦遮るために、透明なスクリーンカーテンを設けました。2枚重なるとモアレが出てきれいです。リビングの床は無垢のヒノキ。
オスモカラーを塗布し、においもありません。外の広幅のデッキはシダー。壁は最初漆喰をご希望でしたが、コストの関係で水溶性ペンキにしました。システムキッチンは特注で、業務用の火力の強いコ
ンロを設置。家電をインターネットで購入されることもあるTさん、ダイニングには「楽天」で購入されたという大きな業務用冷蔵庫がありました。
Tさんは建築雑誌も数多く読み、インターネットでメーカーのページにもアクセスするなど、研究熱心な方です。家具や雑貨だけでなく、建材や設備についても、新宿のOZONEを訪れたり、モデルルー
ムに行ったりして、直接現物を確認されるなど、自分で納得が行くまで設計者と相談します。設計の高野明美さん、石井大さんもTさんの希望に合ったものをと探してきます。例えば外壁は、Tさんの第一希望が
「『新建築』で見た、東北大学の施設に採用されたカーテンのように薄いスチールメッシュ」ということでしたが、コスト面などから変更になったため、最終案については石井さんが実際に模型を作ってTさんにも確認いただき、決定しました。インターネットでさまざまな情報が入手できる時代になりましたが、「やはり実際に見ると大違い」とTさん。確認することを忘れてはならないようです。

冷暖房についても、いろいろな設備を検討しました。ある輻射冷暖房の設備ではコスト面では折り合いがつかなかったものの、「輻射暖房はいい」と気に入ったTさんのために、高野さんは「森永エンジ
ニアリング」の「サーモパネル」を見つけてきました。これなら予算に見合います。冷房は、速効性のあるエアコンがTさんのニーズに合ったようです。
1階西側には、父君の和室があります。水屋、炉が設けられている茶室でもありますが、アルミチャンネルの長押、シナ合板の細い床柱と、モダンで画期的なデザインです。「床柱は本来、自然にそこに
ある、飾らないものを使うべきであると千利休は説いている。立派な銘木をどこからか持ってくるよりもその精神を引き継ぎたいと思った。」と石井さん。父君は若い人たちが作った新しいアイディアにの
ることをむしろ楽しまれているご様子でした。
2階はTさんの部屋と、通路をはさんで、離れがあります。離れには、3年前に他界された母君の日本画が飾られる予定です。

所在地:川崎市麻生区
構造:RC造
規模:地上2階
構造設計:高野明美(タカノ一級建築士事務所)
意匠設計:石井大(+・TASTEN)
竣工:2002年3月

2002年4月12日 at 8:12 PM