23-2 新宿M邸 マンションリフォーム

用途: 竣工年月: 場所: 設計: 構造: 規模:

今月は家族が一緒に暮らしていくことについての工夫をリフォームで見せていただきました。
都心のビルのオーナーでいらっしゃるM様ご夫妻。ご主人は不動産業、奥様はブティックを経営されており、ご家族はほかにご主人の父上と小さなお子様が1人いらっしゃいます。ご自宅は都心の8階建てビルの6,7,8階の3フロア。築15年ほどでしたが、お母様がなくなり、奥様が家のことをなさっていく上で次第にストレスがたまることがはっきりしてきました。それは、かなりの面積にもかかわらず仕切り
が多く、それぞれの部屋への採光が不十分だったこと。そして収納が少ないため、なかなかものを片付けられないということでした。家の中が3フロアにもわたっているために、家族の所在がわからないのも主婦にとっては結構ストレスです。加えて仕事が終わってから、家事をしている間は小さなお子様は目の届くところにいてほしいものですが、じっとしていろというのも無理な話。そこで夫妻は、リフォームを決意され、雑誌でその作品を見て「この人なら自分たちの気持ちを理解してくれる」と確信できた設計家の桑原聡氏の元を訪れたのでした。

桑原氏は「家族がともに暮らす家」「一つ屋根に住む」ということをテーマに数々の住宅を設計されています。ご自身も職住接近、職住一体、共働きを実践してきたデザイナーです。特に、自宅で作業ができて、それほどワークスペースも必要としない仕事のご主人の気持ちはよく理解できたそうです。同じ年頃のお子さんがいらしたことも気が合いそうだと思った理由の一つでした。
ご夫妻の要求は、「仕切りがない部屋」「収納を多くする」「ベランダを通しての対面するマンションからの視線をさえぎる」というシンプルなことでした。

桑原氏は、図面を見て、もともと竣工の時に基本設計をした設計者が真ん中の7階の南側の開口部を全面窓にするなど、フロア全体をリビングにするイメージを持っていたことが、うかがえたと言います。「おそらく、打合せの段階で基本設計から間取りがどんどん変わっていたのだろう、それなら自分が本
来の形に戻してやろう」と考えたそうです。こういう設計の出会いにも、リフォームの醍醐味があるようです。
そして「仕切りを取っただけ」とはおっしゃいましたが、この住宅の一番のテーマは、なんといっても透明な「階段室」です。
ガラスで囲まれた階段室は、フロアの中心に位置し、視覚的にどこにいてもフロア全体をすべて見渡せると同時に、階段を利用している家族の姿も周りから確認できます。居住部分の8階と6階がプライベートスペースで、真ん中の7階が共有スペースですから、すべての家族が今どこにいるかということを、奥様は家事をやっている最中でもわかるのです。気配を察することができるだけで主婦は安心です。

今回ご高齢の父上はご自分のプライベートスペースは改修されませんでした。思い出の部分を残しておきたい気持ちは十二分に理解できます。建物はそのときの状態によって成長する―それがリフォームだと桑原氏は話してくれました。

ちなみに、リビングにある格子引き戸の建具の中は仏壇のコーナー。桑原氏はよく仏壇をリビングに置くそうですが、それは亡くなってからも家族といっしょにありたいという気持ち、いてほしいという気持ちを大切にしたいからです。ただし、このようなデザインのスペースにむき出しの仏壇があるのもそれはそれで強く感じられるものです。むしろ気配があるけれども主張はせず、来訪者にも違和感がないようなスペースにされました。

2歳になったばかりのお子様は、広くなったリビングを運動場のように駆け回り、お友達もたくさん訪れて楽しそうに遊んでいるそうです。奥様のこだわりに桑原氏の設計が応えた、斬新なリフォームになりました。
「とにかく、目が届くのがいいですね」と、すっきりと片付いたリビングで奥様はにこやかに話してくださいました。(トークから)

 

建築概要

1階から5階までテナント店舗・事務所、6階から8階までがオーナーの自邸である。このオーナーの自邸の改修工事。
トークでも述べたように仕切りをはずしてフロア全体が見渡せるようになったため、リビング南側の全面ガラスの窓のおかげで、日当たり良好。冬でも暖かく日中は暖房不要である。夜はことさらすべてを明るく照らし出すような照明を採用していないため、足元を照らしたり、天井から部分的にスポットをあてるなど、昼間とはまた別の趣になっている。
ベランダの足元の間接照明がイペ材のウッドデッキを引き立てる。フローリングは、8階がぶな、7階がチークフローリングで、ユーティリティ部分、玄関ホールなどは大理石である。壁はアンティコスタッコ塗り、窓にはやさしい素材感のブラインドを採用している。キッチンも収納が増えてゆとりが生まれ、ダイニングはカッシーナの家具が入る予定。

改修設計:桑原聡建築研究所

お引渡し:2001年12月29日

 

 

2002年1月12日 at 6:38 PM